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発達障害のある方へ

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

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前回のブログの続きです。

発達障害のある方が忘れてはいけないこととは?

前回のブログ「発達障害のない方へ(1)(2)」で、発達障害のない方に、私は「理解」をして欲しいというお願いをしました。

しかし、これは発達障害の当事者が何もせず、ただ環境調整を求めておけばいいということではありません。

むしろ、前提は当事者自身ができることを努力することです。
できることを努力して初めて、周りの方にしていただいた環境調整が活きるでしょう。
(ほとんどの当事者にとって、言うまでもないことだと思います)

そんな中で、当事者が忘れてはいけないこと。
それは「感謝」だと思います。

「感謝」を忘れずに周囲と接していれば、関係や環境はよくなっていく

我々発達障害の当事者は、周囲の方からより多くの配慮をしていただいていると思います。
そのことに対する感謝をし続けることが大切です。

それに、感謝することで人間関係が良くなります。
研究などでも「感謝」を多くする人がポジティブな経験を多くしていることを示しています。※1

発達障害の当事者には、特に感謝が必要だと思うのです。

私は感謝できてきたか。
私は感謝できていなかったと思います。
むしろ、周りに配慮を求めるばかりで、その配慮にも感謝できていなかったと思います。
そして人間関係で何度も苦しい思いをしてきました。

なので、自省を込めて書きたいと思います。

当事者にとって感謝ができなくなるのは、余裕がないからだと思います。

精一杯がんばる。
→どこかで失敗する。
→怒られる。
→改善しようとする。
→また失敗する。
→もっと怒られる。(この辺りまでは感謝できていると思うのです)
   ・
   ・
(しばらく繰り返し)
   ・
   ・
→疲れ切る。
→仕事をうまくやるより、怒られない方法を考える。
→それでもまだ怒られる。

こうなると、自分のことで精一杯で、全く周りが見えてきません。
どうしてもうまくいかない自分への怒りを周囲に投影し、上司や同僚にも怒りを感じるかもしれません。

感謝するどころではありません。
そして感謝を忘れた態度は至るところに表れ、ますます状況が悪くなっていくでしょう。

どうすれば感謝し続けることができるのか。
感謝は意識の問題なので続けるのは簡単ではないです。
「感謝が大切」と思っても、忙しい毎日の中ですぐに忘れてしまいます。

私には、感謝し続けるために、いつも実践していることがあります。
それは「ありがとう」とつぶやくこと。
空いている時間。
歩いているとき。お風呂に入っているとき。誰もいないエレベーターの中。
「ありがとう」と言い続けています。
(これはあるプロコーチの方に教えていただいたテクニックです。)

「ありがとう」を言い初めてからしばらく経ったある日、私は周囲の方に対して、自然と感謝している自分に気づきました。
こちらの感謝が周囲にも伝わったのでしょうか。自然と人間関係が良くなっていきました。

嘘だと思って、お試しあれ。

「ありがとう」と思い続けるために

ところで、「ありがとう」という言葉の反対はなんでしょうか?

あるところで聞いたのですが「当たり前」だそうです。

「ありがとう」を漢字で書くと「有り難う」です。
有ることが難しいこと、つまり当たり前にはないことをしてもらっているから、感謝の気持ちが湧き起こるのです。

職場で発達障害のことを理解してもらえず苦しむことは多々あると思います。
私も苦しんできました。

ただ、発達障害のことをわかってもらえずとも、苦手な部分、不得意な部分を周囲の方に少しは配慮してもらっているのではないでしょうか。

それは本来の意味で「有り難い」ことだと思うのです。
「有り難い」ことを自分の意思で見つけ、感謝し続けて欲しいなと思います。
それは、周囲の方のためでもありますが、我々当事者のためでもあります。

「当たり前」と思えるか、「ありがたい」と思えるか。
それだけで、当事者にとって仕事のしやすさは大きく変わると思います。


※1
このブログを読んでいる方で興味のある方は、ロバート・A・エモンズ「Gの法則-感謝できる人は幸せになれる」(サンマーク出版)を読んでみてください。おすすめです。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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