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チャレンジド

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

「チャレンジド」(challenged)という言葉をご存知でしょうか。

チャレンジドとは、アメリカ発の新しい言葉で「障害を持つ人」を指します。

社会福祉法人プロップ・ステーションのHP内にある説明によると、

Challenged(チャレンジド)というのは「障がいを持つ人」を表す新しい米語「the challenged (挑戦という使命や課題、挑戦するチャンスや資格を与えられた人)」を語源とし、障がいをマイナスとのみ捉えるのでなく、障がいを持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かして行こう、という想いを込め、プロップが1995年から提唱している呼称です。

(引用元)http://www.prop.or.jp/about/challenged.html

「障害」はマイナスの面のみを見た言葉ですが、「チャレンジド」はプラスの面も見ています。
とても素晴らしい言葉です。

発達障害のある私に誇りを与えてくれる言葉でもあります。

一方で、このチャレンジド、当事者としては重い言葉にも感じます。
「生まれつき挑戦しないといけないのか」
「挑戦することが使命なのか」
「挑戦する資格って自分が望んだものでもないし」

チャレンジドという言葉がまぶしすぎるあまりに、否定的な考え方につながってしまいます。

私の場合、
「挑戦せずに安心して暮らせればどれだけいいだろう」
と思ってしまうことがあります。

発達障害のある私に複雑な感情をもたらすチャレンジドという言葉。
この言葉を使うとき、私は一人の女性を思い出します。

そこにあったのはチャレンジドの「誇り」

彼女は聴覚障害を持っていました。
生後すぐ、病気にかかり聴覚を失ったそうです。
早くに聴覚を失ったことが原因で、発話も十分ではありません。

しかし、自分で団体を立ち上げ、障害を持つ方々の支援をされていました。
どんな場所にも積極的に参加される、とてもパワフルな方でした。

その彼女が、何百人もの前でプレゼンをしました。
パワーポイントを使わず。
発話に苦労しながら。
誇りを持って自分たちの取り組みを一生懸命に伝える。

彼女は間違いなくチャレンジしていました。

彼女の静かな情熱が広い会場全体を包んでいました。
彼女はとても美しかったです。
私の人生の中で、最も感動したプレゼンの一つです。

このプレゼンで、私はチャレンジドという言葉を知りました。

チャレンジドとして、勇気を持って踏み出すこと

当時、私は自分に発達障害があるとは知りませんでした。

何年か経って、発達障害と診断されたとき、私はまず「ほっ」としました。(このあたりは別ブログで)

そして、次に「自分もチャレンジドなんだ」とぼんやりと思いました。

その後、私は多くの辛い体験をすることになります。
ADHD由来でないものもたくさんありますが、
ADHD由来のものもたくさんあります。

ADHD由来のもののとき、
私の頭に「チャレンジド」という言葉がよぎります。
そして、「これはチャレンジなんだ」と思います。
この考え方がどれだけ私を楽にしてくれたか。

チャレンジドという言葉は、私にとって時に重くもあります。
しかし、とても勇気付けられる言葉でもあります。

私はチャレンジドとして生まれました。
チャレンジドとして生活し、チャレンジドとして死ぬことになるでしょう。

正直な話、このチャレンジせざる運命を、チャレンジドとして「チャンス」「資格」と受け取れるだけの境地に私はまだ立てていません。

しかし、チャレンジせざるを得ない運命を負ったからこそ、私にしかできないチャレンジがある。
そう思って生きていこうと思っています。

そして、当事者としてこのチャレンジドという概念を少しでも広めていくこと。
それが私のチャレンジになるのではないかと思うのです。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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