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ASDのある方向け就職活動テクニック(面接編)

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

たまには本業に関することを書いてみる。
私の本業は大学でのキャリア系講義の講師、就職活動対策の講師である。

そこで、発達障害のある方に出会うことも珍しくない。
手帳を所持しているケース、本人が自覚しているが手帳はないケースもある。
一方で、本人が自覚していないが発達障害が疑われるケースも見られる。
どちらにせよ、就職活動では苦労することが多いように感じる。

ということで、発達障害のある方、特に困難を抱えやすいASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)の方向けの就職活動テクニックを書いてみたいと思う。
なお、今回は障害者雇用ではなく、一般雇用を想定している。

ASDの方が就職活動においてぶつかる壁の一つ「面接」。その理由とは

ASDの方が一般雇用の就職活動で特に苦しむのが「面接」である。
私も模擬面接の面接官役をよく行うが、ASDのある方は苦戦するケースが多い。

では、なぜASDの方が面接で苦労するのか。
就職活動の面接では、面接官と応募者が対話をする。その中で、面接官からの質問に対して、「的確に」答えることが求められる。ASDの方は、その的確な受け答えを苦手としているので、面接官からすると会話がかみ合わない印象を受ける。そのため、ASDのある方は面接の通過が困難になりがちだ。

では的確に答えるとは、どういうことか?それは、
(1)聞かれた質問に対して回答する
(2)その文脈に合った回答をする
(3)簡潔に答える

という3つの要素を満たす必要がある。

ASDの方の就職面接対策『3つの要素』

就職面接対策(1):聞かれた質問に対して回答する

まず、「聞かれた質問に対して回答する」については、面接官が聞いたことに対して正確に答えることだ。例えば「長所を教えてください」という質問に対して、「私が今まで頑張ってきたことは・・・」と答えると、面接官の質問内容と異なる。面接官からすると大きなマイナスイメージとなる。

聞かれた質問に対して回答するための具体的な対策方法は、質問事項をオウム返しすることだ。「長所を教えてください」と聞かれたときは、「私の長所は…」と聞かれている内容の中からキーワードを選び、それを文章の最初につけることで、質問内容と異なる回答をする可能性は少なくなる。

就職面接対策(2):その文脈に合った回答をする

「その文脈に合った回答をする」については、面接官の質問内容に対し答えるとき、面接官が聞きたい内容を伝えることが重要となる。例えば、自己PRでアルバイトについてのエピソードを話した後、面接官から「なんでアルバイトにおいて、そこまで努力したのですか?」と質問された場合、「それはお金のためです」と答える方がいる。確かに、なんで(Why)の答えにはなってはいる。しかし面接官は「なんでアルバイトをしたのか?」を聞いているのではなく「(時給が上がるわけでもないのに)なんでアルバイトで努力をしたのか」を聞いている。この、何を聞きたいのかを取り違えると、面接官が聞きたい内容を伝えることにはならない。

文脈に合った回答をするための具体的な対策方法は、面接官の質問の意図を考えることだ。
例えば、上記の「なんでアルバイトにおいて、そこまで努力したのですか?」という質問については、面接官は、努力をした背景を聞くことで応募者の仕事や就職に対する価値観を知ろうとしている。であれば、努力をした理由を答えることが、適切である。
実際の面接で、すべての質問に面接官の意図を考える時間はない。しかし、面接官の意図は何かな?と考える習慣があれば、それだけで面接本番で、適切な回答ができる可能性が高くなる。

就職面接対策(3):簡潔に答える

「簡潔に答える」については、質問の回答についてあまりに長く話すと、面接官側が飽きてしまう。そして、長い話の多くは行き当たりばったりなので、聞き手が理解することは難しい。一方で、面接官の質問に対して、一言しか答えない人もいる。これも、面接官からすると聞きたいことを聞けていないので印象は良くない。

簡潔に答えることを目指すのであれば、45秒~90秒程度で答えることが重要になる。この時間帯だと面接官も聴きやすい。ぴったり45秒~90秒に合わせる必要はない。ただ、一回の返答時間が45秒~90秒であると頭に入れておくだけで、話す時間が自動的にある程度のその範囲内に収まる。もし可能であれば、家でストップウォッチを片手に実際に時間を計ってみよう。適切な時間で話すだけで、会話の印象が大きく変わってくる。

就職活動においての面接は、多様な視点の評価軸があるので、これらの3つを行えば、受かるようになるというわけではない。ただ、ASDの方が引っかかりやすいポイントを改善することで、面接に通過して就職活動がうまく進む可能性が少しでも高まればと思います。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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