発達障害と社会の偏見(2)

前回の記事「発達障害と社会の偏見(1)」で見た通り、発達障害に対する偏見の背景には社会から理解されにくいことがある。
では、なぜ発達障害に対する理解は進まないのだろうか。

発達障害が理解されにくい原因

発達障害の理解のされにくさの根本原因は、障害が見えにくいことだ。これには二つの要素がある。

(1)見た目だけでは発達障害とは分からない
(2)発達障害の困りごとは一見誰にでもある
というものだ。

(1)見た目だけでは発達障害と分からない

私に発達障害があることを伝えると「見えない」とよく言われる。
発達障害があることを伝えて「分からない」と言われるのは別に気にならない。
しかし、「見えない」と言われるたびに、私の心には何か引っかかるものを感じている。

なぜ、心に引っかかるものを感じているのか。
それは、発達障害に「見えない」という発言の裏には「発達障害らしさ」というイメージがあるからだ。この「発達障害らしさ」というイメージは危うさを感じる。

先日、大学の講義でグループワークをしてもらっていると、ある学生が内向的な学生に向かって「お前はアスペか」と言っていた。
発言をした学生は、アスペルガー症候群(現在はASD・自閉症スペクトラム)に対する浅い理解から勝手なイメージを持ち、それを他者にレッテル張りしていたのだ。
発言をした学生にとって深い意味が無いのは明確だったが、危険な行為と判断し講義後呼び出し、説明をしておいた。
発達障害の認知の広がりによって、口に出さずとも、このようなレッテル張りは増えているのではないだろうか。

このブログでは何度も触れているが、発達障害のある方と一概に言っても、多様である。
私は発達障害のある方と会話する機会が多いが、接すれば接するほど、発達障害についての特定のイメージを持てないと感じている。
確かに、ADHDやASDといった症状名はあるものの、その同じ症状のグループの方さえ、多様性が大きい。

しかし、発達障害について、少し知識がある人ほど「発達障害らしさ」を持つ。これは不思議な現象だなと感じている。
ただこの「発達障害らしさ」というもの、かなりネガティイブなもののようだ。
このネガティブなイメージが発達障害に対する偏見に繋がっている。

(2)発達障害の困りごとは一見誰にでもある

発達障害の困りごとは一見誰にでもあるようなことが多い。

・ミスをする
・ついそわそわしてしまう
・相手というまく意思疎通できなかった
・字を読み間違いした

表面的な現象ひとつひとつは誰にでもある場合が多い。

例えば、私は異様に忘れ物が多い。
しかし、「忘れ物が多い」と他者に言うと「私も忘れ物が多いです。私もADHDかも。」と言われることがある。そう言う人に、私の忘れ物の頻度を言うと、だいたい引かれる。
私は傘を大体50%くらいの確率で忘れる。
雨が降るとコンビニでビニール傘を買うが、その傘はすぐに失くす。
また、USBも良く忘れる。
大学の非常勤講師控え室の共用パソコンからプリントするときに、パソコンに刺しっぱなしにすることが多い。
そのため、非常勤講師控室の方からは、USBの忘れ物が届くたびに、私に確認が入る(80%位の確率で私のUSBである)。
ちなみに、USBをよく忘れる私にとって、重要なデータの流失は非常に怖いので、USBのデータは使用後必ずデータを消去している。
そのため、USBを忘れても問題になったことは今まで一度もない(大きなミスをしないために、小さなミスは気にしない主義であるが、それは「ADHDのある大人が楽に生きるために」で)

今まで私の会った自称「忘れ物が多い」人(ADHDの診断のある方を除く)で、忘れ物が多い人はいなかった。忘れ物自体は誰にでもあるのだ。
そして、忘れ物をして困ったことも誰にでもあることだ。しかし、忘れ物による頻度が多すぎ、また忘れ物による困りごとの影響が大きすぎ、人間関係・学業・仕事に大きな影響を及ぼすまでになった人は少ないと思う。

このように、困りごとの表面は誰でもありえるのかもしれない。
しかし、頻度と影響をみないと、発達障害のある方が抱える困りごとの本質は理解できない。

このような2つの要素から、発達障害は理解されにくい。
発達障害のない方は、勝手な「発達障害者像」を作らないで欲しい。発達障害のある方も多様だ。
もし発達障害のある方の多様性を知りたいなら、「私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音」(著:姫野桂)という本をオススメする。多様な当事者像が描かれている。

発達障害のある方は、社会に偏見をあることを前提に、うまく振舞っていくしかない。
残念ながら、社会が発達障害を正確に理解するまで、まだまだ時間がかかりそうだから。

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かめたーとる

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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