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発達障害のある方が才能を活かすために支援者ができること

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

発達障害のある方が才能を活かすためには偶然が重要」の続きになります。
前回は当事者が自分で才能を発揮するための方法だが、今回は支援者が当事者の才能を伸ばす方法について考えてみたい。

支援者が発達障害のある方の才能を伸ばすには?

私は発達障害のある方に対して研修を行うことがあり、支援者の端くれの中の端くれのつもりだが、他者の才能を伸ばすって本当に難しい。

社会適応を促すための支援は比較的わかりやすい。マナーであれ、コミュニケーショントレーニングであれ、社会である程度合意をされた正解がある。その正解に近づけていくためにトレーニングを行えばいいのだ(もちろん、それも容易ではないのだが)。

しかし、発達障害がある方の才能を活かすとなると、更に難しい。そもそも、一人一人が持っている才能が違う。そして、支援者側が正解だと思ったことを無理強いさせることができない。才能の種に気がついたとしても、支援者が強制すると、嫌いになってしまうことさえある。

では、才能を活かすという観点で支援者ができることは何なのだろうか。

私は

[1]気づきの促し

[2]承認

[3]チャレンジの機会設定

の3つに分類できると思っている。

才能を活かすために支援者ができる3つのこと

[1]気づきの促し

気づきとは、意識下にあるものが顕在意識に上ることをいう。ざっくり言うと、心の奥にあったものを自分で知ることだ。
才能については、既に発揮されていても、それに気づいていない人は案外多い。自分からすると当たり前のことなので、他者から見ると特別なものだということが案外分かっていないのだ。

例えば、私は以前仕事でEXCELを使うことが多かった。
仕事上の必要に応じて関数を組んで使っていたが、ミスが多いので周囲からの評価は低かった。だから私はEXCELが苦手だとずっと思っていた。しかし、そのずっと後にEXCELを使わざるを得なくなった時、ミスをチェックしてくれる人がいた。
EXCELで関数を組んで効率化を図った時、周囲からかなりの賞賛を浴びて、その時、私がEXCELについて意外と才能があることに初めて気がついた。

このように、才能があっても本人は気がついていないことは多い。そのため、支援者は、「自分に才能がある」という気づきを促すことが重要になる。
直接伝えることも一つの手段だし、客観的に示すこともできるかもしれない。

[2]承認

前回に書いたが、才能を形にするには「持続性」が重要になる。ただ、持続は簡単ではない。当事者が何かに長期的に取り組むときに、全くフィードバックがないとそのまま段々とやらなくなることがある。
そこで承認が重要になる。取り組んでいること自体への承認、取り組みの結果の承認など、承認できることは多くある。承認を受けることによって、取り組みに対するモチベーションが上がり、取り組みの持続に繋がっていく。

大学のプロジェクト科目で、グループで企業の課題を解決する授業でのこと。
発達障害があり、コミュニケーションが苦手なある学生がいた。彼はグループワークが苦手なので、得意としている発表のスライド作成に力を入れることにした。
グループメンバーから継続的な応援・賞賛を得てやる気になり、最終的に素晴らしいできのスライドを作成してくれた。

[3]チャレンジの機会設定

才能は使われていく中で磨かれていく。
実際に才能を活用することで、自分の才能についての確信を高めることができるし、才能がある領域の能力も磨かれていく。
しかし、才能に気がついたとしても使うチャンスがない場合もある。
支援者は当事者の才能を使う機会を設定することで、才能を磨く支援をすることができる。

私が現在講師として生計を立てることができているのは、必要な機会をくれた方々がいたことが大きい。
まだまだ経験が浅い時期に、私にチャレンジの機会をくれたのだ。そのチャレンジの機会で成果を出し仕事が増えたこともあれば、成果を出せずなかったこともあった。しかし、チャレンジの機会を設定してくれた方々の存在が、今の私につながっている。

応援

この3つの関わり方は遠回りだと思われた方もいるかもしれない。確かにそうかもしれない。ただ、才能を発揮するためには、どうしても当事者の努力が必要になる。もどかしい思いをしながらも、支援側は見守り、応援していくことしかできないのではないかと思う。

しかし、その見守り、応援していくことこそが、当事者の人生を確実に変えていくのだ。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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