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発達障害がある方のメンタルケア(2)ストレスの捉え方を変えるには

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

前回の「発達障害がある方のメンタルケア(1)ストレッサーを減らすには」の続きになる。

メンタルヘルスとストレスの構造

今回は、ストレスの捉え方(認知・評価)について考えてみたい。

人によって異なるストレッサーをどう認知し、評価するか

そもそも、人によってストレスの捉え方は異なる。例えば、私はパーティーなどで知らない人が多い場が苦手だ。そういう場に行くと腹痛になることが多い。しかし、私の弟はパーティーが好きで、パーティーにおけるストレス反応が出ることは一切ない。むしろパーティーに出ると元気になる。
このように、人によってストレッサーをどう認知し、評価するかは全く異なる。今回はこの認知・評価について見てみたい。

これは私のイメージだが、発達障害のある方はストレッサーに対して過敏に反応するケースが少なくないように思う。過去、私も当事者の方に対して励ますつもりで言ったことについて激怒されたことがある。

これは、過去の傷ついた体験が大きく影響していると思われる。傷ついた体験が癒されていないので、その傷に触れるような行動に対して過敏に反応をしてしまうのだ。
発達障害のある方は過去に傷ついた体験を持っていることが多く、その体験が過敏反応を引き起こしているように思われる。

それは、私自身にも言える。
私は過去、発達障害特性由来で激しい叱責を受けてメンタル不調に陥った。その影響で、叱責の声に対しては激しい怒りを感じる。
私と関係ない叱責であったとしても、正当な理由で叱責していたとしても、叱責を行う方に対して強い怒りと憤りを感じる。これは、メンタルヘルス不調に陥る前はなかったものだ。

それだけならまだいいのであるが、フィードバックを受けることも苦手になってしまった。
講師の仕事でレベルアップをしようと思うと、受講者の・クライアントの・先輩講師のフィードバックをしっかり聞いて自分を成長させていくことが求められる。
特にネガティブなフィードバックは、自分を改善させるポイントが多いので、受け止めて次に活かさないといけない。
講師業を開始した時点では、ネガティブなフィードバックを受け止めて次に活かすことができた。ネガティブなフィードバックをしてくれた人にも感謝できた。
その後、2度目のメンタルヘルス不調を経験し、ネガティブなフィードバックを全く受け取れなくなってしまった時期がある。

ネガティブなフィードバックの中には受講者からの心無い声もある。
しかし、大半は私の成長のために役に立つ。しかし、ネガティブなフィードバックの全てが私の人間性を批判しているように思い、全てに落ち込んでしまっていたのだ。

さすがにこれはマズいと思い、カウンセリングを何度か受けた。その結果、ネガティブフィードバックを受け取ることができるようになった。

認知の歪みが大きなストレスになることがある

私のように、特定の行動に対して合理的でない考え方をし、過敏に反応することを「認知の歪み」があると言う。
発達障害のある方は、過去の経験から「認知の歪み」を持っていることが多いのだ。
認知の歪みがあると、何かの出来事に対して、無意識のうちに合理的ではない思考をしてしまう。

例えば、認知の歪みのパターンとして「全か無か思考」というものがある。
ほとんどができていても、少しでもミスがあれば完全な失敗とみなしてしまうことだ。
ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)のある知人は、過去の人間関係の失敗から、人間関係についての「全か無か思考」に陥ってしまったようだった。
誰かと話した後、会話内容を振り返って少しでもうまく行かないと思う点があると「私はまた嫌われてしまった」と考えてしまうのだ(これには「結論の飛躍」という認知の歪みも関係しているように感じる)。

このように、認知の歪みがあると悩まなくてもいいところで悩んだり、他者に対して過剰反応してしまうことがある。
大したことのないストレッサーが、大きなストレス反応になってしまうのだ。

ストレス

認知の歪を治すには?

この、認知の歪みを治すにはどうしたらいいのか。無意識の思考パターンなのなので簡単には改善しない。有効なのは「認知行動療法」だ。

認知行動療法は心理療法の一つで、認知を少しずつ変えていく。医療機関などで受けることができるので、興味のある方は探して欲しい。
また、いきなり実際の認知行動療法を受けることはハードルが高く感じるかもしれない。
そんな場合は、最初は認知行動療法を体験することのできる本やアプリに取り組んでみることも可能だ。

少し時間がかかるが、認知の歪みを修正すると思考の偏りがなくなり、同じ出来事に対してストレス反応が低下するのだ。

このストレス反応が、メンタルケアのもう一つのポイントであるが、それは次回に。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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