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発達障害がある方のメンタルケア(3)ストレス反応を減らすには

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

前回、前々回の
発達障害がある方のメンタルケア(1)ストレッサーを減らすには
発達障害がある方のメンタルケア(2)ストレスの捉え方を変えるには
の続きになる。

メンタルヘルスとストレスの構造

今回はストレス反応について考えてみたい。ストレス反応は、体や心に現れる反応のことを指す。
上記のような反応が現れているのであれば、ストレスが溜まりすぎている可能性がある。
また、ストレス反応が更に溜まると、うつ病や適応障害などの精神疾患につながる可能性もある。
そのため、ストレス反応を低減していく方法を身につけていく必要がある。

ストレス反応を減らすためのポイント

ストレス反応を減らすための最大のポイントは、健康的な生活を送ることだ。「睡眠」「食事」「運動」がまず重要だ。
同じストレッサーがあっても、健康的な生活を送ることができていたら、ストレス反応はかなり減る。

私はフリーランスということもあり、繁忙期と閑散期の差が激しい。
閑散期は1週間仕事がないこともあり、経済的な目処がついている時は十分な睡眠をとり、食事や健康にも気をつける。こんな時はストレス反応が起きにくい。
しかし、繁忙期になると、睡眠時間を極端に削らないといけないことがあり、そんな時は周囲から見ると相当イライラしているそうだ。
このように、生活リズムが崩れることは、ストレス反応を増大させる。

発達障害のある方は、ただでさえストレッサーが多いのであるが、この健康的な生活を送ることも苦手としているので、ストレス反応が増大しやすいのだ。

例えば、ADHDの特性の一つとして、衝動性が挙げられる。
衝動性が高いと、ついつい食べ過ぎたり、寝る時間になってもゲームなどに熱中して睡眠不足になったりし、不健康な健康になりやすいのだ。
また、ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)のある方は、睡眠障害である割合が高いという報告もある。

発達障害のある方がストレス反応を低減するには

では、発達障害のある方はどのように健康的な生活を送ればいいのか。特性や生活環境によって大きく状況が変わるのでなんとも言えない。
ただ、ストレスが溜まりやすい時ほど、健康的な生活を送ることが大切だということは是非知って欲しい。

また、ストレス反応を低減させるためには、ストレス発散法を知っておくことも重要だ。
自分が楽しいと思うことをすると、ストレスが解消したと感じる経験は誰もが持っているだろう。

まずは、ストレス発散のために自分がやっていることをリストアップしてみよう。そのリストアップしたことは、すでに行なっているストレス発散法だ。もしストレスを感じたら意識して実行してみよう。

また、ストレス発散法の種類も気をつけよう。これは私の経験だが、発達障害のある方は、ストレス発散法が偏る傾向にある。
例えば、ゲームをするだけ、動画を見るだけなどと、特定の方法に偏る。
私も以前は食べることだけしかストレス発散法がなかった。その結果、太ってしまった。
ストレス発散法が偏ると、効果が限定され、また私のように別の悪影響を生み出すこともある。

複数の種類のストレス発散法を身につけておくことで、多様なストレスに立ち向かえるようにしよう。私は、現在は食べることに加え、一人カラオケ、山登り、温泉などといったこともストレス発散に活用している。多様なストレス発散法を身につけ、ストレスを感じた時も自分でストレスを解消できるようにしておこう。

ストレス発散

発達障害のある方のメンタルケアで大切なこと

3回に渡って、発達障害のある方のメンタルケアについて考えてきた。ストレッサーを減らすこと、認知を変えること、ストレス反応を低減させることなど、できることは沢山ある。

ストレスの多い環境にあることを自覚したら、様々な方法を試してみよう。ちょっとしたことで、ストレスが随分減ることがよくあることだ。

そして、ここまであまり書かなかったが、ストレッサー、認知・評価、ストレス反応の全ての面に効果的な方法が一つある。それは人に相談することだ。
職場の方に相談することでストレッサーを除去できるかもしれない、カウンセラーに相談することで認知が変わるかもしれない、家族や友人に相談することでストレス解消になるかもしれない。
あなたが相談できる人は誰だろうか?この相談できる人を作っておくことは、ストレスを解消するためには非常に大切だ。あなたの幸せを願っている人、あなたのために話を聞いてくれる人は誰か考えておこう。

いかに努力してもストレスが多くなり、体や心に変調をきたすことはある。発達障害のある方は、ストレッサー、認知・評価、ストレス反応のすべての面で、不調を起こしやすい要素がある。

だからこそ、メンタルケアをする方法を正しく知っておこう。
発達障害がある方のメンタルケア(1)ストレッサーを減らすには」で最初に述べたが、私は2度メンタルヘルス不調になっている。
1度目はメンタルヘルスに対する知識がなかった。そして、危険な状態にまで陥った、回復に長い時間がかかった。

2度目はメンタルヘルスに対する知識があった。2度目の方が長期間攻撃を受け、執拗ではあった。しかし、メンタルヘルスに対する知識があったので、危険な状態には陥らなかった。回復も比較的早くできた。

発達障害のある方すべてに、メンタルケアの手法が行き渡ればいいなと思っている。発達障害のある方が、心身ともに健康になるために、少しでも参考になったのであれば何より幸いだ。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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