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発達障害のある大学生のインターンシップ

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

大学生にとってインターンシップの重要性はますます増している。
インターンシップに参加し、”社会で働くとはどのようなことか”を体感することで大きく成長する大学生は多い。
そこで今回は、発達障害のある大学生がインターンシップに参加することを考えてみたい。

まず結論として、発達障害のある大学生はインターンシップに参加した方がいいと私は思う。
それには2つの大きな意義がある。

大学生がインターンシップに参加する意義

インターンシップでの学びは成長に繋がる

発達障害の有無に関わらず、インターンシップで学べることは多い。
”社会で働くとはどのようなことか”を体感することで自分のキャリア形成の大きなヒントが得られる。

自分の特性と向き合う機会になる

インターンシップで実際に業務に携わると、自分の特性を嫌でも直視せざるを得なくなる。
大学でも自分の特性に向き合うことがあるかもしれないが、仕事をするとより自分の特性と向き合わざるを得なくなる。
自分のできない部分を見ることは辛い体験ではあるが、自分の特性と向き合うことは就職先を考える上で大きなヒントを与えてくれる。

 

この2つの理由から、発達障害のある方もインターンシップに行った方がいい。
ただ、インターンシップに取り組む上でリスクもある。

インターンシップでのリスク

インターンシップ中に自信を失うリスク

インターンシップに行って失敗をすると、やはり落ち込んでしまう。本当はその失敗体験は自分の特性を知る上で貴重な参考資料なのだが、落ち込んでしまうばかりになる大学生もいる。
また、同じインターンシップに行っている大学生と自分を比べてしまい、落ち込むケースも見られる。

インターンシップ前後に自信を失うリスク

大学講義の一環としてインターンシップに行く場合、前後に事前・事後学習がセットになっていることが多い。またナビサイト経由のインターンシップに応募する場合は選考があることが多い。
事前・事後学習におけるマナー講習やグループワークや、選考時の面接でうまくいかず自信をなくす方も見られる。

このようなリスクから、インターンシップで落ち込む方も一定数いる。ただ、もう一度言うと、うまく行かなかった経験も、うまく行った経験も、全てが自分を成長させるための学びにつながる。

インターンシップは学びの場なので、成功も失敗も受け入れた上で次に進もう。特に発達障害のある方は、早めに自分の仕事スタイルを確立することが重要だ。そのヒントをインターンシップで探そう。そのヒントは就職活動で、社会人になってから大きく役に立つだろう。

支援側での対応

ここまでは発達障害のある大学生本人に向けた記事だった。
では、大学の支援者側は発達障害のある大学生のインターンシップにどう対応すれば良いのだろうか。
発達障害のある方がインターンシップを行う場合、どのルートでインターンシップを行なっているかによって支援者の対応が変わる。しかし、共通していることが2つある。
■学生のフォロー
■気づき・学びの振り返り(リフレクション)

の2点だ。

学生のフォロー

先にも書いたが、発達障害のある大学生はインターンシップで落ち込みを経験することが多い。インターンシップで仕事において発達障害特性と合わないシーンを経験することが多いようだ。
適度な落ち込みであれば自ら回復することもできる。しかし、発達障害のある大学生がインターンシップで大きく落ち込み、自信喪失状態に陥ったケースに私も見たことがある。
そこで、支援者が受容と共感の態度で関わり続けることが重要になる。
ナビサイトでのインターシップなど支援者側が関わることが難しい場合もあるので、相談されるかどうかは日頃からの関係が大きく影響するだろう。

気づき・学びの振り返り(リフレクション)

どんなことに取り組み、何を感じたのか、何が上手くいって、何が上手くいかなかったのか、自分の特性は仕事にどう影響するのか、などを振り返り学びに変えていくことは、インターンシップを今後の成長に繋げていくために必要だ。
大学生が自主開拓をしたインターンシップでは振り返りを適切に行うケースが少ないので、支援者は可能であれば何らかの機会を設けることが有効だ。
単位を伴うインターンシップでは事後学習として、何らかの振り返りを行う。しかし、特性に関する振り返りができていない場合が多い。また、学びをまとめた紙を紛失し、就職活動で活用しようと思っても詳細を忘れているケースも少なくない。
そのため、時間をかけて特性が仕事にどう影響したか、何ができて、何ができなかったのか、を振り返る機会を設け、それを何らかの形で保管しておくことが有効になる。

どのようなケースであれ、支援者としては個別のケースに合わせて対応することが重要になる。支援者側にとってインターンシップの支援は手間がかかるかもしれない。
しかし、学生の成長にとって大きな意味があるので、ぜひフォローしていただければと思う。

繰り返しになるが発達障害のある方にとって、インターンシップでの成長は貴重なものだ。
そのインターンシップをうまく行くために、本人、支援者ともできることを確実に行おう。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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