発達障害のある方が職場に定着するために必要なこと(2)~企業目線から~

発達障害のある方が職場に定着するために必要なこと(1)~当事者視点から~」の続きである。
今回は企業目線から、発達障害のある方に職場に定着してもらうためには何が必要なのかを考えたい。

発達障害のある方が職場定着するためには?

企業側ができることややっていただくと良いと思われることは多くあるが、前回に引き続き、居場所を作るという視点で考えてみたい。

特性に合わせた物理的な環境を作る

感覚過敏などがある方については、その特性に配慮した方が良いことは言うまでもない。
加えて、トイレや給湯室などに逃げ込むことを許すことが、案外重要であるように思う。
過去、私は就業中頻繁にトイレに行くと白い目で見られる環境で働いたことがある。そのことは、私にとっては精神的に辛い状況で物理的に逃げ出せないことを意味した。心を落ち着ける場所がないということで、精神状態がさらに悪化してしまった経験がある。頻繁に席を外すことがいいことであるとは言わないが、精神的にしんどい時などに物理的に逃げられる選択肢を残しておくことは大切であると思う。

精神的な居場所を作る

これは簡単ではないと思う。居場所になることが得意な方もいれば、苦手な方もいるからだ。上司が精神的な居場所になることができれば、一番楽なのかもしれない。
しかし、業務を指示したり、場合によってはネガティブなフィードバックをしないといけなかったりする指揮命令系統の性質上、上司に居場所を期待するのは酷であるように感じる。
だからといって、自然発生的に精神的な居場所ができることを期待しているだけでは対策とは言い難いだろう。

私が知っている中で、精神的な居場所を作るための企業の取り組みとしていいなと思った対策は、メンター制度の活用だ。
これは聞いた話なのだが、ある発達障害のある方について、上司、人事部が対応に困っていたらしい(診断を受けていたかなどは分からない)。本人も一生懸命に取り組んでいるが、仕事がうまくいっていないことを自覚していた。
そこで、本人、上司、人事担当者が話し合った結果、その発達障害がある方の新入社員時代にメンターだった先輩が、再びメンターとして定期的に就業時間内に面談をすることになったそうだ。
その発達障害のある方は、先輩を慕い続けていたので、定期的に面談を受けることで、業務も精神面も少し安定したそうだ。

 

このように何らかの形で精神的な居場所を作ることは可能だと思う。一方で、精神的な居場所となる方に発達障害に対する基礎知識は持っておいていただきたいなとは、当事者として強く思う。
発達障害のことを知らない方の親切なアドバイスは、悪気はないと分かってはいても、発達障害のある人にとっては時に残酷に聞こえることもある。

また、精神的な居場所となっている方に対するフォローも重要だ。
前回も書いたが、依存されても気にならない方もいる一方、依存されると疲弊しやすい方もいる。
精神的な居場所となっている方に対し、周囲がさらなるフォローを行うことも必要だろう。負荷を一人に集中させないことが大切だと思う。

『一番うまくできる仕事』『必要とされる環境』を作ることで定着につながる

業務上での居場所を作ることについてだが、発達障害のある方は凸凹があり、できる仕事とできない仕事の差が大きい。
上司の方は、発達障害のある部下の特性を踏まえ、仕事を切り出して依頼するなど、うまく業務を配分し、少しずつ成長させていくことが求められる。

そして、時間をかけて発達障害のある方が”一番うまくできる仕事”を作っていくのだ。
その方が誰よりもうまくでき、必要とされる環境を作ることができると、自己効力感と自己有用感を持つことができる。
これは自信につながり、仕事の喜びにつながる。ひいては定着につながる。

私は講師として、あるコンテンツについて他の講師にはできないレベルでコンテンツを作れるようになってからずいぶん楽になった。ようやく一人の社会人として活動できるようになったと感じた。それは社会に出てから7年経ったときのことだった。

上司の方や部署の方からすると、能力の凸凹を考えて長い目で成長を促すことは、手間がかかることに見えるかもしれない。しかし、これは発達障害のある方をただ定着させるためだけに行うのではない。
発達障害のある方は、うまくハマれば爆発的な力を発揮することがある。その爆発的な力は部署の成果を上げることに大いに寄与することがあるだろう。

発達障害のある方に定着してもらうための取り組みは、確かに様々な課題にぶつかることもあるだろう。単に障害者雇用率の問題として捉えたり、上から回されたと捉えたりするだけではもったいない。
精神的な居場所や業務の居場所を提供することで、発達障害のある方が定着でき、爆発的な力を発揮できるようにするための支援をぜひ行っていただきたいと思う。

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かめたーとる

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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