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インターネットと発達障害(1)~ネガティブな影響~

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

発達障害とインターネットの関係について書いてみたい。

インターネットの登場によって、我々の生活が一変したことは言うまでもない。
私がインターネットに初めて触れたのは中学生の時で、その後どんどんインターネットが普及していくのを目の当たりにしてきた。

そして、1996年生まれ以降の世代をネオ・デジタルネイティブと呼ぶそうで、今の若者達は物心がついた時からスマホで動画を見ることが当たり前になっている。
そんなネオ・デジタルネイティブ世代に大きな影響をあたえるのがSNS(ソーシャルメディアサービス)だ。SNSによって、若者世代を中心にコミュニケーションが大きく変わってきている。

インターネット

そして、発達障害のある方々にとっても、インターネットによる影響は少なくないと思う。今回は発達障害とインターネットについて考えてみたい。

発達障害とインターネット~ネガティブな面~

まずは、インターネットのネガティブな側面から。(ポジティブな面は続編で)
発達障害に限らないが、発達障害のある方にとってインターネットの特にネガティブな面は、”依存症””引きこもり”だと思う。

依存症

まずは依存症から見ていく。
インターネットに接続すると、ゲーム・読み物・ソーシャルメディアを始めとして多くの楽しみが提供されている。そのため、インターネットやその媒介であるスマホが手放せなくなる。
私は大学で教えているが、講義の集中力・グループワークへの参加度を上げるため、スマホを禁止することが多い。
しかし、禁止してもスマホをどうしても見ずにはいられない学生も存在する。完全にインターネット中毒・スマホ依存と言っていいだろう。

そもそも発達障害のある方は依存症になりやすいと言われているが、インターネット依存にもなりやすいと思われる。
ADHDの方は依存症になりやすいことが様々な研究で報告されている。インターネットだけではなく、お酒や薬物へ依存する割合が、ADHDがない方と比べてはるかに高いそうだ。
ADHDの方は脳の報酬系といわれる経路が他の方と違うが、そのために強い刺激を求めて依存症になることが多いそうだ。

私も自分で依存症へのなりやすさを感じている。
インターネットやゲーム、そして酒に溺れがちな自分を自覚している。
特に時間に自由のあった大学生時代と、絶望しかなかったフリーランス時代の初期には、インターネット、ゲーム、酒に溺れた時期もあった。
現在は家庭があり、家族を食べさせていかなければならないので十分に気をつけている。

また、ASD(自閉症スペクトラム障害)のある方もインターネット依存になる可能性が高いという報告もあるようだ。
ADHDのような脳の問題というより、仕事生活・学校生活・日常生活がうまくいかないことに対して強いストレスを感じ、その結果として何かに依存してしまうパターンが多いようだ。

このインターネット依存・スマホ依存にどう対応するかは簡単ではない。正直、私もインターネット依存・スマホ依存と言われても否定できないからだ。
この記事を執筆している今日も、何かのきっかけで気になった「戦国ちょっといい話・悪い話」(歴史好きは読み過ぎ注意!)というWebサイトを2時間も見てしまった。
天下を取った後の豊臣秀吉がどれだけ暴君になったかがよく分かったが、帰宅時間が遅れることになったので妻が怒り狂うことが目に見えている。はぁ…。

インターネット依存を防ぐヒントは、仕組み化だと思っている。
発達障害特性を無効化する仕組みを作るためのコツ」でも少し述べたが、私はスマホに機能制限をかけており、スマホを見る時間を少なくしている。
私の場合はまだ完璧な仕組みにはなっていないが、依存が重度でなければ仕組み化で対応していくこともできると思う。

引きこもり

次に、インターネットがあることのネガティブな影響として、引きこもりについて見てみたい。
発達障害のある方は引きこもりになる確率が高いと言われている。発達障害特性があることによって、様々な面で生きづらさを感じやすく、それが引きこもりにつながるからだ。

その引きこもりを長期化させるのがインターネットである。
インターネットがあれば、そこで時間を潰すことができるし、何よりゲームなどを通して仲間ができる。
仮想空間を通じたものであったとしても、そこに人間関係が生まれる。そうすると、外に出る理由がなくなってしまう。それが引きこもりを長期化させてしまう。

インターネットの人間関係は、リアルな人間関係と違って関連する要素が少なく、仕事のような困難な課題をクリアするわけでもないので、葛藤が比較的少ない(といってもゼロではないし、インターネットならではの葛藤もあるが)。
発達障害のある方は、人間関係で苦しんだ経験を持つ方が少なくない。そんな方々にとって、全く人間関係がないのは寂しいが、インターネット上の人間関係のように浅く傷つきにくい関係は心地よくもある。ただし、引きこもりから社会復帰する上ではそれが足かせになってしまう。

もちろん、引きこもりの方にとってインターネットがあることは悪いことばかりではない。
私の大学時代の友人が引きこもってしまったことがあったが、SNSで複数の友人と繋がりがあり、そこで交流が続いていたことが彼の社会復帰を助けたということもあった。
引きこもりの方とのコミュニケーションには、まずチャットやメールを使うことも珍しくない。

では、引きこもりからどう対応すればいいのか。それについて私は知見を有していないし、簡単ではないことは理解しているのでここには書かない。

ただ、インターネットがあることで、発達障害のある方にネガティブな影響があることは間違いないと思う。
では、インターネットがあることのポジティブな影響はないのだろうか。それは次回に見たい。

▶ インターネットと発達障害(2)~ポジティブな影響~

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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