技術より可能性 興味が拓くSEへの道

企業・団体名:インフォニック株式会社
https://www.infonic.co.jp/

インフォニック株式会社

「何度もチャレンジして、自分にぴったりくる運命の会社を見つけてほしいなと思います」そう語ってくださったのは、インフォニック株式会社。京都に本社を置き、さまざまな業界でシステム開発、インフラ構築をしています。2017年1月、エンカレッジ京都より発達障害のあるAさんをシステムエンジニア(SE)として採用。どのような想いで障害者雇用に取り組み、システム開発という業務を展開させているのでしょうか。経営管理部の見浦秀美さんとAさんにお話をうかがいました。

採用の決め手は、SEとしての適性

Q.障害者雇用に取り組むきっかけや目的はなんですか?

見浦:
当社の規模から法律上、障害者雇用を進める必要があり、2014年から障害のある方の採用活動を始めました。今は町なかの飲食店でも障害のある方が働いているのを見かけます。身近なところで障害のある方が活躍している様子を見ていたので、当社でも戦力になってくれると感じていました。ただ最初は、具体的な働き方までイメージできておらず、何から着手すればいいのか悩むことに。まずは情報収集をと勉強会に参加したり、実際に障害のある方と面接をしたりして、イメージを固めていきました。最初は事務職で募集していましたが、「当社で活躍してもらうならSEとして採用しよう」と社内で意見がまとまり、一年半ほど経ってからSEでの募集に切り替えました。ところが、切り替えた後、今度は応募がなくて苦労しましたね。それが解決したきっかけは、京都府主催の障害者向け採用イベントでした。採用活動を進めていくうちに、障害のある方の目に留めてもらえるような求人票の書き方がわかってきて、応募もだんだん来るようになりました。そして2017年に発達障害のあるAさんを採用することができました。

Q.採用の決め手になったことは?

見浦: 
事務職への応募が多い中で、Aさん一人だけがSEを希望したというのが大きいです。Aさんも最初は事務職で応募していたのですが、面接で「本当はSEがやりたい」と申し出があったので、「じゃあやろう」と声をかけました。この業界は、コンピューターでのモノづくりに興味がある人でないと継続が難しい業界です。当社も、知的好奇心があり、仕事を楽しめる人を採用しています。Aさんの採用時も同様で、まず「物事に深いこだわりがあるか」を確かめました。あとは、パソコンの操作が好きか、プログラミングに必要な論理的思考能力があるか、お客様とうまく関われるコミュニケーション能力はあるか、などを確認しました。Aさんはプログラミング経験こそありませんでしたが、SEへの興味・SEとしての素質、どちらも基準を満たしていました。合同面接会から社長面接に進み、その後は役員面接、担当部署長面接、そして一日業務体験という流れで採用が決まりました。

Q.採用された方(Aさん)の仕事内容はなんですか?

見浦: 
午前中は、社内で使用するシステムの改修やメンテナンス等、社内の業務にあたっています。午後からはお客様の現場で、SEとしてさまざまなサポート業務をおこなっています。単純な作業も含まれますが、ある程度の専門知識がないとできない仕事です。当社は基本的にチームで仕事をすることを重視しており、5名程度のチームで業務にあたることが多いのですが、Aさんは当社では珍しく、一人で現場に入っています。新人を単独で現場に送るのは気がかりな点もありますが、環境面や作業レベルにおいて一番本人の働きやすい職場がそこだったんです。チームにこだわりすぎて枠にはめ込んでつらい思いをさせるよりも社外で仕事をしたほうが今後のキャリアのためになりますし、何より本人が楽しんでいます。お客様との関係もうまくできているようです。発達障害という特性をふまえた上で最大限パフォーマンスを発揮できる環境が一番いい形だと考えているので、今はこれが一番いい形だと思っています。

A:
仕事は毎日楽しいです。特に、自分の組んだシステムが思った通りに動いたときが一番嬉しいですね。あとは、現場で設計から製作まで全て自分が担当したシステムが、お客様に「いいんじゃない」と言っていただけたとき。きちんと期待に応えられたなと感じます。

経営管理部 見浦秀美さん
Q.受入れをして難しいと感じたことはなんですか?

見浦:
最初のうちはAさんへの接し方がわからないという社員も結構いましたね。でも、Aさんが社交的なタイプで、自分の障害のことも積極的に話していくので徐々にみんなと打ち解けていきました。この業界、あまり周囲と関わらないシャイな人も結構多いんです。そういう人にも話しかけていくので、Aさんが職場に自然と馴染んだのは本人の力が大きいと思いますね。
あとは、研修中のこと。当社は未経験の方を育ててきた実績があるので、発達障害のある方に対しても「教える」ところでは滞りなくできると思っていました。しかし、教える社員にも教えられるAさんにも、独特の苦労があったみたいです。特性上、「口頭で教えられるのが苦手」や「本をずっと読んでいると眠くなる」というところが、強く出てしまう。それらに対処して、どう研修を進めていくかは、支援機関のアドバイスも受けながら試行錯誤しました。

個性があるのは誰も同じ

Q.受入れをする中でよかったことや、周囲の変化などありますか?

見浦:
年々労働人口が減っているので、障害のある方が戦力として活躍することはこれからの社会にとって重要なことです。当社もその社会的責任として一歩を踏み出せたのはよかったと思っています。
社員同士の関わりにスポットを当てると、発達障害が身近になったおかげで「あの人も変わった人だけど、それがあの人なんだから」と互いに受入れ合えるようになってきたと思います。その人なりの個性があると知りながら接したほうがお互い楽になれる部分があると思うんです。そこからもう一歩進んで「できない」ことを自分も周囲も認めて、業務がうまく流れる環境を作れていたらいいのですが、まだ実感できるレベルには至っていません。受入れて半年なので、これからですね。

A:
私は疑問に思ったことをずばずば言ってしまうタイプなのですが、周囲の方はそれを「生意気だ」と怒らず、真剣に応じてくれるので安心しています。
前職は、社会人になるのが初めてということもあって周囲の意見に合わせることに必死でしたが、結局うまくいきませんでした。再就職活動では得意なことを活かした仕事に就きたいという意思が強かったのですが、そもそも障害者向け求人が少なく、一般向け求人ではサングラスがネックになるなど、非常に苦労しました。それでも家族は私の意思を尊重して見守り、生活費が尽きた時には援助をしてくれました。おかげで妥協することなく就活ができ、今は適度に自己主張しながらのびのび仕事ができています。

Q.受入れの際に工夫・配慮・大切にしていることはなんですか?

見浦:
「個性」があるのは誰も同じ。一人ひとりに合わせて工夫をしていけばいいと思っています。そのためにも、ちゃんと話ができる関係性を社内で作っていきたい。しかし、相談に関しての問題はIT業界全般の悩みでもあります。仕事柄、社内・社外問わずいろんな人と関わる必要がある。その時々で、案件に詳しい人や場をまとめる人が違うため、誰に相談すればいいか迷ってしまう。Aさんも困っているポイントなので一本化したいのですが、なかなか時間がかかりそうですね。
人材育成する上で心がけていることを言えば、「仕事を楽しんでいる姿を見せること」くらいかなと思います。もちろんSEにも大変なことはたくさんあります。お客様のご要望に応えるために悪戦苦闘することもあります。人によってはしんどそうに見えるかもしれないのですが、それをめちゃくちゃ楽しんでいる人もいるんですよね。見た目ではパソコンに向かって難しい顔をしているように見えるのでわかりにくいですけどね。

Q.SEの仕事と、発達障害のある方に期待すること。

見浦:
SEはプログラミングだけが仕事ではありません。資料を作ったり、お客様のご要望をうかがってシステムを設計したりと、多岐に渡る業務を行います。働きながらこの仕事の勉強をしていく面もありますね。
元々はIT業界をつくってきた人たちも最初は「SEにはプログラミング技術さえあればいい」と勘違いしていたんですよ。でも、システムを発注するお客様にはシステムに詳しくない方も多い。そういう方にどうやって、より良いものを提案していくか。そして、開発部門以外の人々と、いかに連携を取って仕事をするのか。そのあたりが重要になってくるので、SEにはコミュニケーション能力を必要とする場面も多いんです。しかし、発達障害のある方の中には「相手にわかりやすく説明する」ことが苦手な方も多いですよね。なので、発達障害のある方の雇用を考え始めた頃は、その点を心配することはありました。ですが、お客様の希望を実現させてこそSEと言えるので、発達障害のあるSEの方も、ヒアリング・設計・納品まで全てできるようになってくれたら嬉しいなと思いますね。
当社はIT系の会社ですが、文系出身の方も多く、Aさんもその一人です。この記事を読んでいる方の中にも、「SEって難しそう。でも興味はある」という方がいらっしゃるかもしれません。そういった方はぜひSEにチャレンジしてほしいなと思います。貪欲に技術を習得していく姿勢とモノづくりへの情熱、そして人と関わり合っていいものを作りたいという思いがあれば、活躍の機会はあるんじゃないかと思います。

インタビューオフショット

就職活動に取り組む皆さんへ

jae_face01 就労移行支援事業所など支援機関に足を運んでいる方は、その時点でもう、就職への第一歩を踏み出せていると思います。そこからいろんな可能性を広げていってほしいので、ぜひさまざまな会社を見て回ってください。
障害のあるなしに関わらず、私は就職活動中の学生に「就職活動は恋人選びみたいなものだ」と言っています。たとえ採用されなくても、それはただ自分と会社の相性が悪かったから。何度もチャレンジして、自分にぴったりくる運命の会社を見つけてほしいなと思います。
jae_face01 以前聞いた書道の話に、「合わせようとして型からはみ出たものは“個性”だ」という一節がありました。周囲に合わせる努力をするのは好ましいと思いますが、合わせきれなかったからと言って気に病むこともないのではないでしょうか。自分の特性が長所として出るか・短所として出るかは環境に影響されると感じています。まずは、支援機関・大学・家族・趣味の友達……どこでもいいので、とりあえず自分の「居心地のいい場所」を見つけてください。自分はどんな環境なら働きやすいのか把握し、それから苦手分野への対策を考えていくのが大事だと思います。
企業・団体名 インフォニック株式会社
所在地 〒604-8152 京都市中京区烏丸通錦小路上ル手洗水町659 烏丸中央ビル6F
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事業概要 「みたす」「あゆむ」「つなぐ」を経営理念に、受託システム開発、インフラ基盤構築・運用などを手掛ける。

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