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バリア(障害)をバリュー(価値)に変えるという理念

企業・団体名:株式会社ミライロ
http://www.mirairo.co.jp/

株式会社ミライロ集合写真

「障害があるかないかは関係なく、自分が将来目指したいこと、やりたいことを考えた上で生き方を決めてほしいです」。そう熱く語ってくださったのは、施設や企業のユニバーサルデザインの導入を支援する株式会社ミライロ。車椅子を利用する方、聴覚障害のある方、LGBT※の方々が、その人にしかない特性を活かして活躍しています。2012年からインターン生を受入れていただいていますが、受入れに当たってはどのような理念を持っているのでしょうか。取締役副社長の民野剛郎さんにお話をうかがいました。

※LGBT=レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心と体の性の不一致)の人々の総称。

サポートだけではなく、歩み寄りを心がけています

Q.実習・インターン受入れ・障がい者雇用に取り組むきっかけや目的はなんですか?

当社に「バリアバリュー」という理念があるからです。障害のある方に、自分自身の特性を活かした価値や活躍のフィールドを提供するというのが当社のミッションです。そのために、実習生の受入れや、正式な採用を進めています。 当社は、予め定めた役職に人材を配置するというよりは、思いを持ったメンバーの得意分野を活かし、全員で最適なチームを考えながら前に進むという会社です。

Q.実習・インターン生・採用された方の仕事内容はなんですか?

当社が採用したスタッフは、デザイン、ウェブ、建築などの業務を幅広く行っています。建築の場合、「車椅子を利用する方向けのスロープを設置したい」という企業の要望に応えるため、最適な設置位置や素材を検討したり、完成イメージをビジュアル化したりしています。また、「ユニバーサルマナー(あらゆる人のニーズに合わせて対応するマナー)」の検定や研修などの事業をメインとしており、講師も担当してもらっています。 インターン生には、そうしたスタッフのサポート業務を主に行ってもらっています。例えば、ブログの作成や、当社で使う編集機材の管理、企業の営業リストの作成などです。 そのほか、全国の障害のある方に、登録制のアルバイトのような形でモニター調査をお願いしています。2020年のパラリンピック・オリンピックに向けて、車椅子の方が自由に移動できるナビゲーションを作りたいという依頼があり、実際に、車椅子で走行してデータを取りました。肢体不自由の方々には、アルバイトの経験がない方も多いと思います。アルバイトをしようと思っても、飲食店ではもちろん働けません。デザインやパソコンが得意という方も少ない。働いた経験がないまま就職するパターンも多いのです。そのため、仕事の厳しさや対価を得るうれしさがわからないという方も多いので、アルバイトで仕事をしてお金を得るという経験をしてもらえたらと、このモニター調査に取り組んでいます。

Q.受入れをしている中で、難しかったことはありますか?

講師業務における体調管理が難しく、これからサポートを充実させていきたい面ですね。たくさん講師依頼がくると、どうしても長距離の移動や連続での講演が入ってしまうので。他の講師と分担し、パフォーマンスを発揮しやすい適切なスケジュール管理をしていかないといけません。 スタッフや実習生への説明の仕方が難しいときもあります。例えば発達障害がある方の場合、本人は何でつまずいているのかなかなか認識できないこともあるようです。しかし発達障害の特性を理解せず、一時しのぎに「こうすればいい」と伝えるだけだと、別の場面でもつまずきを繰り返してしまい根本的な解決にはなりません。そういった対応法を周りのスタッフがきちんと理解し、柔軟なフォローができるようどう育成するかも、難しい点だなと思いますね。 たとえば、薬を服用している社員が居眠りをしていても、それを知らない社員は「なんで寝ているんだ」と不信感を抱きますよね。しかし、眠くなる薬を服用しなくてはいけないことを理解すれば、納得する。いかにして周りの社員の意識や知識量を増やすか、あるいは、許容と不許可のメリハリをどこにおくかが重要です。障害を甘えにしてほしくないのですが、やはり配慮も必要。そのバランスをどうするかが、バリアバリューの大きな課題だと思いますね。

Q.受入れの際に、工夫・配慮・大切にしていることはなんですか?

ひとつは時間です。他の社員と完全に同じように働くことは強制しないようにしています。たとえば、午前は通院のため定期的に休み、午後から働くといったこともできます。また、チャットツールを用いることで在宅での仕事を可能にしています。講演や研修など、現地に行かないといけない仕事以外はほとんど家でできるようになっています。

取締役副社長の民野剛郎さん

自分の将来に、熱い気持ちを抱く人になってほしい。

Q.受入れをする中でよかったことや、周囲の変化などありますか?

当社の事業は、障害のある当事者の視点で施設の調査を行い、改善点を提案したり、ユニバーサルマナー検定・研修で当事者講師と触れ合うことで学びを得てもらったりと、多くが障害のある当事者にしかできないことで成り立っています。メンバーが活躍すればするほど、受入れてよかったと強く思います。 いろんな方々がメンバーに入って交わることで、自分自身の心の幅も広がります。たとえば、営業しているとき、「今うちの会社にこういうメンバーがいて、こんなふうにみんなで仕事をやっているんですよ」と営業トークに盛り込めるんですよね。それがきっかけで盛り上がったり、次の仕事に繋がったりしています。 大きい会社になればなるほど、発達障害の特性傾向のある方を雇用しているとも言われています。お互いどういう対応をしているのか情報交換し、「じゃあ、こう工夫しましょう」とフィードバックし合うといった、いい循環が生まれているなと感じます。このように、会話の幅、知識が広がった点もよかったですね。

Q.受入れ・採用にあたっての将来像や今後の方針などお聞かせください。

当社は、障害のあるなしに関わらず、働くことを躊躇している方々がきちんと働けるモデルを作っていきます。本当の意味で、バリアバリューを掲げられる会社にしていきたい。それが今一番思っていることですね。 障害のある小さなお子さんや、その親御さんの希望にもなりたいと思っています。素晴らしいサービスや売上で話題となっている会社、実は社員の半分が障害者という会社が事例としてあると、単純に「かっこいいな」と感じませんか。これだけインターネットが発達しているのに、情報が手に入れられず不安が募り、将来に対して何も希望が見えない方はたくさんいます。そんな方々の希望になりたいですね。 障害がある方々を採用するときの当社の基準は、「障害を言い訳や武器にしてしまっていないか」。私たちの理念は障害を価値に変えるバリアバリューですが、障害は誰かを傷つけたり、自分に言い訳して甘えるための武器にしてしまってはいけないと考えています。障害があってもこれをやりたい、むしろ変えていきたいといった熱い思いを持っている方は、ぜひ来ていただきたいなと思います。

就職活動に取り組む皆さんへ

jae_face01 他の会社に就職するにしても、「大手企業は障がい者雇用率があって入りやすいから」「福利厚生や環境整備をしっかりしてくれているから」などを働く理由にしてほしくはありません。障害があるかないかは関係なく、自分が将来目指したいこと、やりたいことを考えた上で入社していただきたいです。「こんなことにチャレンジしてみたい」「社員さんが素晴らしい人だったから一緒に仕事をしてみたい」などの思いを、働き始めてからも忘れずにいてほしいですね。
「株式会社ミライロ」オフィスの入り口
ダイバーシティ経営企業100選受賞、ビジエスプランコンペの賞など、受賞歴は多彩だ
企業・団体名 株式会社ミライロ
所在地 〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島3-8-15新大阪松島ビル8F
HP http://www.mirairo.co.jp/
事業概要 障害を価値と捉える「バリアバリュー」の視点から、誰もが安心して快適に過ごすことができるユニバーサルデザインのモノやサービスを企画・提案。ハード、ソフト、情報発信のあり方など、多用な観点から企業、教育機関、行政における課題の解決やサポートを多数実施。
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