「成長したい」その意欲が背中を押す

企業・団体名:日本新薬株式会社
http://www.nippon-shinyaku.co.jp/

日本新薬株式会社

「『こんな社会人になりたい』と、ご自身の目標とする姿をきちんと描いてほしいです」そうお話しくださったのは1919年創立以来、人々の健康と豊かな生活を支える医薬品、機能食品を提供している日本新薬株式会社。2015年12月に就労移行支援事業所エンカレッジより、初めて発達障害のある方を採用しました。実習での様子や現在の仕事ぶりなど、日本新薬株式会社人事部山元孝子さん・東山喜三彦さん、実際に働いているAさんにお話をうかがいました。

寄り添って成長を見守る

Q.障害者雇用に取り組むきっかけや目的はなんですか?

山元:本格的に障害者雇用に取り組んだのは2006年。京都市・教育委員会・京都経営者協会の3組織による「デュアルシステム」という仕組みへ参加したことがきっかけです。デュアルシステムとは知的障害のある方を企業実習から雇用につなげる仕組みです。当社もそれまでは身体障害のある方を中心に中途採用を行っていましたが、知的障害のある方も採用したいと考えていました。実は当時、法定雇用率も未達成だったんです。なんとかこの状況を払拭したいと、積極的にこの取り組みに参加し、結果として2名雇用することができ、法定雇用率も達成することができました。

Q.採用された方の仕事内容はなんですか?

山元:現在、29名の障害者を雇用しており、内訳は精神障害2名、知的障害10名、身体障害17名となっています。精神障害のある方の内1名を、就労移行支援事業所エンカレッジから実習を経て採用しました。知的障害のある方の多くは支援学校で植物の栽培やパソコンスキルを身に付けた方々で、植物園での植物の栽培・管理作業や本社内の各部署で事務作業などを行っています。特に事務職の場合は、入社後、即現場に配属されるのではなく、まずは人事部に所属しビジネスマナーや仕事への姿勢など勉強しながら、適職を見極めます。その後、社内インターンシップのように、人事部に籍を置きながらいろんな部署で仕事をします。

人事部 山元孝子さん
Q.Aさんの仕事内容、仕事の様子はいかがですか?

山元:当社には障害のあるなしに関わらず、新入社員全員にメンターがつく「ブラザー・シスター制度」があります。ブラザー・シスターは仕事やプライベートの相談にのってくれる身近な存在です。Aさんにはブラザーとして東山さんがついています。

東山:現在Aさんは採用関係の仕事をしています。書類整理、データ入力など事務が中心です。事務の仕事は、量が多く、単純で地味な仕事が多いんです。もちろん集中力が途切れることもありますが、休憩をとりながら、上手にコントロールしてやり遂げていますね。また、実習生も交えたチームでの仕事もあり、そのときはリーダー役も担っています。

A:リーダーの経験が少ないので、うまくできているか自分ではわかりません。人に「こうしてほしい」と伝えること、逆に相手が「こうしたい」と思っていることをくみ取ることは難しいです。うまくできるようになるにはどうすればいいか考えながら取り組んでいます。

東山:Aさんは難しいと言っていますが、うまくチームをまとめてくれていますよ。一方でAさんの負担になりすぎてはいけないと気をつけています。誰しも過度な負担があるときは、余裕がなくなります。Aさんも相手の気持ちまでフォローできずに厳しくなったり、声が大きくなったりすることがあります。そんな様子が見られたときは、声をかけるようにしていますね。

山元:「声が大きくなっているよ」といきなり指摘するのではなく、まずなにが起こっているのか「どうしたの?」と確認をしています。そうするとAさんも気づいて冷静になることができます。

東山:Aさんは非常にやる気がある。どんな仕事にもチャレンジしてくれるので、安心して新しい仕事を任せられます。

人事部 東山喜三彦さん

「どんな社会人になるか」想い描けると信じて

Q.実習から採用までの道のり

A:実習は3回に分けて行いました。1回目は1週間、2回目は2週間、最後は雇用に向けて1か月と期間が延びていきました。勤務時間は9:00~17:30。手書き資料のデータ化やマークシートの読み込み業務が主な仕事でした。

山元:最後の実習は、年末だったので会社カレンダーの発送業務がありました。カレンダーを巻いて、包装し、宛名シールを貼って発送します。送り先が750件もある、根気のいる仕事をチームになって進めてもらいました。実は、Aさんがリーダーとして役割を担えるか、また根気強く最後までやり遂げられるかを雇用前に確認したかったんです。思ったとおり、実習ではいろんな側面が見られました。

A:カレンダーの発送業務は量が多かったので達成感がありました。就職が決まったのが2015年12月。私は3月を目途に就職できればいいと思っていたので、想定よりも早く進んだことに驚きました。正直、もう少し学ぶ時間が必要なのではと不安もありましたが、せっかく選んでもらえたならと、就職を選択しました。

山元:当社で発達障害のある方を受入れるのは実習でもAさんが初めてで、Aさんにとっても長期の実習は当社が初めてだったんです。私たちとしては、実習の流れのまま雇用できればと思っていました。でも、当社の実習でうまくいったのであれば「他の会社や仕事でもできるかもしれない」とAさんが思うのではと少し不安でした。採用の決め手は、彼の仕事ぶりと意欲。実習での仕事ぶりは十分でしたし、なにより働きたい、成長したいという意欲が彼からすごく伝わってきたんです。どうしても実習を終わらせることや会社に入ることがゴールに思われがちですが、でも実はそこがスタート。彼なら入社後、「どんな社会人になるのか」という姿をきちんと想い描けるだろうと信じて採用しました。今でも、その意欲を信じているよといつも言っています。

Q.受入の際に工夫・配慮・大切にしていることはなんですか?

東山:社員の中には、Aさんに発達障害があると知らない人もたくさんいます。そのため、業務上のやりとりでトラブルが起こる可能性は0ではないと思っています。そんなときは一緒に乗り越えていこうと、つい先日話をしました。

山元:現実にトラブルもあるので、入社して1・2年は人事部で学ぶ期間を設けているんです。人事部の中であれば、どれだけ失敗しても大丈夫。私たちは実習のときから関わって、本人だけではなく、周りの関係者ともずっと連携を取っているので、いろんなサポートができます。人事部にいる間にたくさん失敗して、経験して、そして自信をつけて別の部門で独り立ちできるようになってほしいんです。その他大切にしていることは、一個人として、一従業員として、他の従業員と同じように接することです。障害のあるなしは関係なく、日本新薬の一員として役割のある必要な方ですから。もちろん、できていないことはできていないと伝えますし、評価もきちんとつけます。

東山:特別扱いの接し方をしないということですね。

Q.受入れをする中でよかったことや、周囲の変化などありますか?

東山:人事部にAさんと年の近い障害のある男性社員がいます。普段あまり感情が表に出ない方ですが、Aさんが人事部に入ったときは「お兄ちゃんがきた!」という感じでとても喜んでいました。人事部のメンバーは年齢が離れている人が多いので、年の近い、同性の人と一緒に働けることがうれしかったようです。そんな姿を見て、僕もうれしくなりました。今、Aさんと彼は席が隣です。2人で仕事を分担し、協力しながら仕事をしています。いい関係ができているなと思います。

A:仕事の依頼も気兼ねなくでき、気持ちよく一緒に働けています。お昼ごはんも社員食堂で一緒に食べていますね。

Q.受入れにあたっての将来像や今後の方針などをお聞かせください。

山元:会社と雇用関係が発生する以上、社員一人ひとりが役割を果たす必要があります。そのためには「働きたい」と強い意欲のある人に来てほしいです。そんな方がいらっしゃれば、どんどん受け入れたい。ただ、今のブラザー・シスター制度のようなマンツーマン指導や、人事部での受入れには限界があります。組織として、受入れの仕組みを整備し、障害のある方も一緒に活躍できるきちんとした体制ができればいいと思っています。

A:今任せてもらっている仕事を一つ一つこなし、自分のできることを最大限やっていきたいです。できなかったこともできるように、ステップアップしていきたい。発達障害のある方々の中には働く意欲を抱いている方がたくさんいて、彼・彼女たちはきちんと仕事をやり遂げる力を持っている。そういった認識が、社会に広がるきっかけになれたらと思っています。

就職活動に取り組む皆さんへ

jae_face01 「こんな社会人になりたい」と、ご自身の目標とする姿をきちんと描いてほしいです。目標は一人ひとり大きさや形が違っていいんです。また、採用を考える際は、“なぜ”働きたいのかという点に注目しています。その働く理由も「お金がほしいから」でも「家族と旅行がしたいから」でも、なんだっていい。大事なのは、「なんのために働くか」という強い思いを持っているかどうかです。資格やスキルではなく、目標や理由がしっかりあればどんな会社や仕事でもやっていけると思います。
jae_face01 成長意欲。それがすごく大事です。当社の経営方針にも「一人ひとりが成長する」とあります。実現のためには社員一人ひとりが成長意欲を持っている必要があります。今はスキルがなくても、身につけたいという一心で努力し続ければ、少しずつ積み重なって、いつか十分成長したなと思える日がくるかもしれません。よりよい自分になりたいという意欲を大事にしていただけたらと思っています。
jae_face01 とにかく前向きでいることです。「倒れるときも前のめり」という言葉もありますが、私の場合は、倒れようがそのまま転がってでも前に進むぞという想いで就職活動していました。失敗を恐れて何もしないのではなく、むしろ失敗してもいいという気持ちで、前に進んでほしいです。失敗したなら、なぜダメだったかを振り返って改善すれば、次からは同じところで転ぶこともなくなります。まず、できることから一歩前に踏み出してみてください。
企業・団体名 日本新薬株式会社
所在地 〒601-8550 京都市南区吉祥院西ノ庄門口町14
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事業概要 経営理念である「人々の健康と豊かな生活創りに貢献する」ことを信条とし、医薬品、機能食品事業の持続的な発展に取り組み、「ヘルスケア分野で存在意義のある会社」を目指す。