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働きやすさは「よく知ること」から

企業・団体名:NPO法人SKIPひらかた
http://skip-hirakata.jp/

NPO法人SKIPひらかた集合写真

「インターンは受入れる側の私たちにとっても、学びの機会です」そうお話くださったのは、大阪府枚方市で発達障害のある3歳~18歳の方を対象にした「児童ディサービス スキップ」を運営しているNPO法人SKIPひらかた。大学生インターンのほか、就労移行支援事業所から職場実習も受入れています。どのような思いで受入れているのでしょうか。児童発達支援管理責任者の久賀谷 洋さんにうかがいました。

インターン生が教えてくれる「同じ人はいない」ということ

Q.NPO法人SKIPひらかた・児童ディサービス スキップとは?

NPO法人SKIPひらかたは、大阪府枚方市で活動する「発達障害親の会『ポレポレネットワーク』」が立ち上げました。「発達障がいを抱えた子どもたちがスキップしたくなるような毎日を過ごせるように」という想いで運営しています。主な事業は、自閉症に特化した療育プログラムを提供する「児童ディサービス スキップ」。対象は発達障害のある方で、現在幼児~18歳まで約100名の登録があります。登録された方は、2週間に1回、1時間の「セッション(個別療育)」に来られます。子どもさんの個性に合わせたサポートを親御さんと一緒に探っています。大切にしているのは「子どもさんのことをよく知ること」。客観的にご本人の特性や学習スタイルを把握した上で、必要な支援や取り組むことの優先順位を決めています。また、成長と共に必要な支援もかわります。たとえば、中学生以降は就労を見据えた支援が必要になります。子どもさんの得意・苦手を整理し、向いている仕事を探るグループプログラムも取り入れています。 その他、保育所や幼稚園、学校に出向いて必要な支援を検討する「保育所等訪問支援事業」,子どもさんにとって暮らしやすい環境を整えるための計画を立てる「計画相談支援事業」などがあります。これらの事業を合わせて、子どもさんの今と、将来を見据えたサポート体制を整えています。

児童発達支援管理責任者の久賀谷 洋さん SKIPひらかた入り口前にて
Q.インターン・実習受入れに取り組むきっかけや目的はなんですか?

以前、発達障害のある方も同じ事業所内で働いておられました。一緒にいることが当たり前だったので、インターン受入れも自然に決まりました。単に「経験」としてのインターンではなく、将来スキップで働いていただける方を探しながら受入れています。受入れの際は、比較的余裕のある日程をこちらから提示し、支援員の方に調整していただいています。スタッフが少なく、スケジュールも過密なので、インターン生に充分な機会を用意できるようにと気を付けています。

Q.インターン生・実習生の仕事内容はなんですか?

夏に受入れたインターン生には、いろいろとしていただきました。まず、室内、廊下の清掃業務。掃除機の音が苦手な方だったので、フローリングワイパーを使って、隅から隅まできちんと掃除してくださいました。また、パソコンが得意だったので、文書作成や日報の入力などの事務作業も、素早く、確実に作業されていました。他にお願いしたのは、セッションの教材づくり。絵が描かれた紙をラミネートして切り分け、ケガをしないように角をとるという内容です。とてもきれいに仕上げてくださいました。私にはマネできないですね。スタッフの名前もすぐ覚えて、きちんとメモをとって、前向きに取り組まれていました。その前に受入れた方は保育士の資格を持っておられて、子どもと関わる仕事を希望されていたので、子どもさんの見守りもお願いしました。インターン生の得意なことや興味に合わせて、仕事を選ぶようにしています。

Q.インターン・実習の受入れをする中でよかったことや、周囲の変化などありますか?

インターン・実習の受け入れは、受入れる側の私たちにとっても、学びの機会です。普段は、ディサービスに来られる子どもさんと当たり前に接しています。でも、インターン生とは一緒に仕事をするので、接し方や、要求度が自然と変わります。その中でも、きちんとコミュニケーションをとれるかどうか、私たちに問われてきます。ディサービスに来られる子どもさんに対してだけでなく、一緒に働く人に対しても、お互いに必要なサポートをしあう。そんなことを考える機会になります。また、インターン生に限らず、私たち支援員に必要なのは、どんな方が来られても、うまくコミュニケーションがとれることです。「こんな人には、どう接すればいいんだろう」と変に構えず、その方にとって心地よいコミュニケーションを探っていけばいい。インターン生を受入れることが、その心地よいコミュニケーションを考えるトレーニングになっています。障害のあるなしに関わらず、一人として同じ人はいない。インターン生はそんな原点を教えてくれるんです。

「知る」から生まれる工夫や配慮

Q.受入の際に工夫・配慮・大切にしていることはなんですか?

「ご本人についてよく知る」ことを心掛けています。まずは、支援機関からの情報提供や事前の顔合わせで、特性や必要な配慮を確認します。たとえば、業務指示や報連相のやりとりは口頭のみでも可能か、書いた方がいいのかなど確認します。でも、事前情報だけでは十分ではありません。休憩場所や手順書など、実際に現場で見てもらい、ご本人に必要なことを聞いて微調整しながら進めています。 どのような配慮や手順があれば、インターン生が働きやすくなるのか、考えて工夫することは私たち受入れ側の課題です。もちろんご本人の努力も必要ですが、その努力は、安心して過ごせる環境の上でするものだと思っています。私たちの中には、自分にとって「過ごしやすい環境」を整えるための工夫を無意識にしている人もいれば、周囲の配慮がなければ工夫することが難しい方もいらっしゃいます。ご自身で工夫することが難しい方へは、その方が働きやすいと感じる環境づくりを周囲がサポートする必要があります。そのためにも、「ご本人についてよく知る」ことが大事なんです。

インターンで使ったコミュニケーションツール
実習生のスケジュール表 1日のスケジュールが明確になっている
Q.働くために必要なこととは。

「障害」は人にあるのではなく、社会の中にあるものです。社会が変わらなければいけないこともたくさんあります。でも、その中でより自分らしく生きるためには、ご自身の得意・苦手を整理し、知っておくことが大切です。得意なことを生かし,苦手なことは努力ではなく、得意なことでカバーするということ。たとえば、不器用だから、努力してできるようにがんばるのではなく「ハサミでうまく切れなかったら、裁断機を使ってみよう」というように、苦手なことを知っていれば、それに代わる道具で補うことができます。コミュニケーションも話し言葉以外に、書く(描く)・打つなど様々な方法があります。視覚的認知力の強みを生かして自分に合ったコミュニケーションの手段を知り,使うことで、自分から仕事で困ったことや相談したいことを発信することができます。ご自身の得意・苦手を知り、工夫していくことで、働きやすさは変わってきます。ご自身だけではなく、第三者にアドバイスやサポートを受けながら、客観的に整理していかられることをお勧めします。 また、余暇活動も大事です。余暇は暮らしを豊かにしてくれます。また、ちょっと嫌な仕事でも、がんばって、お給料をもらって、余暇を楽しもうとなれば仕事の励みになりますよね。仕事と余暇、そのバランスをとることで充実した毎日を送ることができると思います。

Q.受入れにあたっての将来像や今後の方針などをお聞かせください。

受入れ体制が整う限りはインターンも受入れていきたいです。また、スキップで働きたい、こういう職場に向いているという方がおられれば、ぜひ一緒に働きたいです。ただ、場所も狭く、来る人も多いんです……。現場見学、職場実習を経て、そういう実際の様子も含めて、「ここで働きたい」と思ってくれるかどうか。私たちが選ぶというより、「こんな職場ですけど、いいですか?」という問いに,「ここだったら自分の得意なことが活かせる」と実感をもって、ご本人に選んでいただいた上で、採用を進めたいです。

就職活動に取り組む皆さんへ

jae_face01 私はみなさんに、楽に仕事をしてほしいと思っています。楽というのは「楽しい」と書きますよね。楽に仕事ができる=楽しく仕事ができるということです。日本人は楽=怠けると考えがちですが、楽なことはいいことなんです。そのためにも、どのような工夫や配慮があれば、働きやすいのか見つけて知っていってほしいです。
企業・団体名 NPO法人SKIPひらかた
所在地 〒573-1191 大阪府枚方市新町1丁目3-18 池田ビル2F
HP http://skip-hirakata.jp/
事業概要 「発達障がいを抱えた子どもたちがスキップしたくなるような毎日を過ごせるように」自閉症・発達障害の診断受けている3歳~18歳の方を対象にした児童ディサービス「スキップ」を運営。発達障害の専門家と保護者の立場から、地域や社会の中で必要な支援を考え、子どもたちやその家族をサポートしている。
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