経験が導く私だけの“譲れない条件”

先輩Eさん

私の「はたらく」

"自分に合った環境で 一つ一つ「できる」を増やす"

私は特例子会社で事務の仕事をしています。仕事はコピー用紙や文房具の補充、書類のファイリング、郵便の仕分け・発送など様々です。また、社員のみなさんが過ごしやすくなるよう、休憩スペースにあるエスプレッソマシーンや給茶機の補充、掃除もしています。好きな仕事は、社員向け図書コーナーの本の登録と、本棚の整理です。まず、送られてきた本と注文内容を照合します。その後、本にシールを貼って押印し、「事務所の本」とわかるようにします。そして、カテゴリーごとに分けて本棚に入れます。週に1回、本棚の整理をしています。

 今の仕事を選んだのは、自分の希望条件に合っていたからです。その1つは通勤時間です。人ごみが苦手なので、交通機関がなるべく混雑しない時間帯の通勤を希望していました。今は電車通勤で、行きは途中から混みますが、座れているのであまり気にしていません。そしてもう1つは「静かな環境」というものでした。今まで行った実習先では、ラジオや音楽がかかっていたり、人が多くて雑音が耳に入ったりしてあまり集中できなかったためです。就職活動時は、ハローワークの求人も見ていましたが、それだけでは職場の雰囲気がわかりません。今の会社は実習を通じて、雰囲気が自分に合うと感じました。私語が少なく、フレンドリー過ぎない。そして、プライベートと仕事の区別をはっきりできる。そんな環境が私に合っています。

<ある日のEさん>

09:30
朝礼、コーヒー・お茶の補充、コピー用紙補充
10:00
郵便物の仕分け、配布
11:00
休憩
11:10
コーヒー・給茶機の補充、食器洗い
11:45
昼休憩
12:45
掃除、郵便の仕分け・配布
15:00
休憩
15:10
備品補充、シュレッダー書類の回収
16:00
エスプレッソマシーン・給茶機の掃除、宅急便の発送準備
17:30
終礼

滞りなく仕事をするために工夫していることは、メモ取りです。口頭での指示を忘れて、すべきことがわからなくなってしまうと大変なので、きちんと記録しています。周囲はあまりメモを使わないので、私だけメモをとっていて焦ることもあります。でも、メモをとっている間はみなさん待ってくださいます。

業務の中に手先を使う作業があるのですが、思いのほか苦戦しました。特に切手をちぎる作業は苦手です。手先を使う作業が得意でないことは自覚していましたが、ここまでできないとは自分でも知りませんでした。反対に、思っていたよりできたことは職場でのコミュニケーションです。上司からは、挨拶ができているとフィードバックをいただきました。社員の方と昼食を一緒に食べるときは、会社のことや行事のこと等を話しています。

今、私は段階的に仕事を任せてもらえています。この仕事ができたら、次はこの仕事と、一つ一つクリアしていくのは達成感があります。私はたくさん挑戦してたくさん成功したとしても、一つでも失敗があるとひきずってしまうタイプです。そのため、着実にクリアしていくこの形式は私に合っています。ペースは緩やかでも、一つ一つできるようになったという達成感があれば、次も頑張ろうとモチベーションが湧いてきます。

働くために必要なこと

"譲れない条件を明確に"

必要なのは、自分の譲れない条件を明確にしておくことです。私は実習に参加するまで「とりあえず仕事ができればいい」と考えていました。でも実習でいろんな職場を経験し、自分自身を振り返る中で「静かな環境で働きたい」という譲れない条件を見つけることができました。実際に体験してみること、そして、そのときの様子や感情を振り返り、自分研究を重ねること。そうすれば、自分だけの条件が明確になってくると思います。

今までの道のり

"「私はここで働いている」不安を乗り越え実感"

  1. 発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター
  2. 大学卒業
  3. 職業訓練
  4. 就労移行支援事業所エンカレッジ
  5. 実習
  6. 就職

中学生の頃に広汎性発達障害と診断されました。その後、大学卒業間近に自分の得意・苦手を知るため、別のクリニックを受診し、障害者手帳を取得しました。大学卒業をひかえ、発達障害支援センターと障害者就業・生活支援センターにも相談していました。2014年大学卒業後、3か月の職業訓練でパソコンの基本操作を学び、資格もとりました。その後、2014年10月より就労移行支援事業所エンカレッジに入りました。

エンカレッジのプログラムでは、「ビジネスマナー講座」が役に立ちました。特に報告・連絡・相談について学んだことは、今でも活用しています。またチームで合意形成を図りながら計画を立てる「ミーティング」も役に立ちました。チームの様子を見て「今この役割が足りていない」と感じたら、「他の人だったらどうするか?」をイメージしてその役割を自分なりに担うようにしました。例えば、まとめる人がいない場合は「まとめ役」を、解説する人がいなければ「解説役」を担当できるよう、努めました。話につまったときは「あの人のあの対応が役に立ったな」と思い出しながら色々試してみました。人と話すときの工夫を考える練習になりました。

プログラムと並行して、実習へは5回行きました。最後の実習が今の会社です。最初に面接があり、その後3日間の実習に参加。最後の面談を経て採用が決まりました。エンカレッジ最終日の壮行会では明るくして「新しいことができるから楽しみ」なんて言いましたが、実は「きちんと通えるのか」「私に仕事ができるのか」と不安でいっぱいでした。働き始めて3か月経った今では、そんな不安も落ち着いています。少し前までは会社に入るのも、他人の敷居をまたぐという感じでしたが、今では自分が所属しているところだと感じます。

将来の夢や目標

"幅を広げて、人の役に立つ"

任せてもらえる仕事を増やしたいです。今は1年契約の雇用なので、また次の契約も更新されるように。ただ、今仕事のペースが落ちているので、まずは目の前の仕事をしっかりできるようにしたいです。そして、みなさんの役に立てるように、いろんな業務を覚えていきたいです。

就職活動に取り組むみなさまへ

自分を省みて落ち込むことも多いため、私は自分研究が正直あまり好きではありません。しかし、自分の好き/嫌い、得意/苦手を明確にすることなしに就職活動は進まないと思います。自分研究の結果、自分の譲れないことが明確になれば、「こんな会社で働きたい!」というのも見えてきます。そして、その譲れないことを貫けば、おのずと道は開くと思います。

  • 年齢:20代
  • 勤務時間:平日(会社カレンダーにより土・祝日の出勤数日あり)
  • 仕事概要:特例子会社で事務の仕事
  • 雇用体系:契約社員
  • 障害種別:広汎性発達障害