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ADHD当事者かめたーとるの忘れ物対策

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

ADHD当事者の難敵「忘れ物」

私は物心ついたときから忘れ物が多かった。
それも異常に。

古文の教科書を何度か連続で忘れ、国語教師が激怒。
その翌日も古文の教科書を忘れる。
人間は激怒を越える激怒があることを発見。

当時付き合っていた彼女の欲しがっていた誕生日プレゼントを奮発して購入。
喜んでくれるだろうなと思って彼女と誕生日デートに。
ただ、デート中にプレゼントを忘れたことに気づく。
彼女はいつプレゼントをくれるか期待していた。。。
楽しいはずの誕生日デートの結果は悲惨でした。
そして、私はそのプレゼントを持って、人生初の質屋に行くことになるのです。

面接対策の講座で模擬面接官として参加。
学生の服装もチェックしないといけない仕事。
そんなときに、靴下の左右が異なっていた。
学生はその面接官の言葉を信頼できるでしょうか?
(忘れ物というよりうっかり)

ビジネス本を読むと、忘れ物をしない対策として毎日こまめに整理することをオススメされることが多い。
私自身、きれい好きの先輩からそう指示された。

しかし、それを守れるくらいならADHD当事者は苦労しない。
いくらがんばってみても継続せず、「対策」にはなり得なかった。

そして、ADHD当事者がたどり着いた究極の忘れ物対策

ADHD当事者である私が現在とっている、忘れ物対策は1つだけ。
そしてうまくいった対策もその1つだけ。

それは、「大きなかばんに全部入れる」。

ステップは3つ。

① できるだけ大きなビジネスバッグを買う
② 仕事で使う可能性のある資料・書類・グッズを全部入れる
③ ミス対策のためのグッズを入れる

忘れ物対策ステップ①:できるだけ大きなビジネスバッグを買う

腕力が許す限りできるだけ大きなかばんを買う。
同じものでは収納場所が多いものがベター。

もちろん、私のビジネスバックは大きい。
初めて訪れた地元大学(自宅から30分圏内)で、

「今日は遠方からお越しいただき、ありがとうございます。昨日はどちらにお泊まりでしたか?」

と聞かれることがある。
きょとんとした私を見て、先方もきょとんとしたのはよい思い出だ。

それ以来、私のバッグは「出張バック」とよばれている。

忘れ物対策ステップ②:仕事で使う可能性のある資料・書類・グッズを全部入れる

仕事で使う可能性のある資料・書類を忘れるのは、「整理整頓が苦手」というADHD特性を無視し、中途半端に整理整頓するからだ。
だから資料や書類が、バッグ、会社の机、自宅と分散し、行方不明になったり、忘れたりする。

であるなら、割り切ってバッグの中にすべて入れておけばいい。
使う可能性が限りなく0%に近づいてからバッグから取り出せばいい。

バッグの中がゴチャゴチャな奴、忘れ物の多い奴では、前者の方が圧倒的にましと思われる。

バッグ内に大量の書類があって大丈夫か?
大丈夫。そのための大きなかばんである。

重い?
そのバッグを持つために必要な腕力はすぐにつく。

また、仕事で使う可能性のある電子機器のコード類、充電器も入れっぱなしにしている。
コードや充電器を家で使う度にいちいちかばんの出し入れができる自分だとは全く思っていない。
なら、最初から2つ準備して、片方を家におき、もう片方をかばんの中に入れておいた方がいい。

ただ、飛行機に乗るときには注意した方がいいかもしれない。
今まで、飛行機のX線による荷物チェックで2度、目の前で中身を空けられてチェックされた。

何かこういうパターンのまずい持ち込み物があるのか、それとも小さなコード、電子機器類があることを奇妙に思うのか、
それともただ単に私が怪しく見えるだけなのか、私にはわからないが。

忘れ物対策ステップ③:ミス対策のためのグッズを入れる

いくら気を遣っても、ADHD特性は変わらない。
どうせミスが多いのだから、ミスしたときの対策を準備しておくと、何かあってもあまり困らない。

まずは、忘れたり無くしたりするものの予備。
通常時、メインのバッグには名刺入れ、筆箱、ノート、アラームが2種類入っている。

メインは頻繁に忘れる。そのときにサブが活躍する。
そういう対策をしているとミスの可能性がグッと減る。

また、何かミスをしたときのための対策も取っている。
例えば、書類のホットキス留めを忘れた、印鑑を持ってくるのを忘れたなどということがあった結果、私のバッグの中にミニポーチが入っており、その中には文房具が一通り入っている。

同様に、歯を磨き忘れた、ヒゲを剃り忘れた、靴下を左右逆になった、などの対策に、歯磨き・ヒゲソリ・靴下・タオルなども入っている。

自分なりの忘れ物対策法を見つけていこう

以上の3つの対策を行ってから、決定的な問題が起こる回数は減った。
また、それでも決定的な問題が起こることもあるが、かばんの中身に何か追加することで対策をうつことができた。

基本は、世界中の誰もがやりにくくても、自分がやりやすい仕組みならそれでいいと思う。

私と同じようなADHD当事者や、忘れ物が多くて困っている方の参考になれば幸いです。

※初めて会う顧客にあまり奇異にみられないため、
また、個人情報、契約書など大切な書類をきちんと保管するため、私は他のかばんも持っています。
できるだけ使いたくありませんが。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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