発達障害のある(かもしれない)子供にどう関わるのか
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
幼稚園の保護者面談に行った妻から、「娘が幼稚園でうまく友達関係を作れていないらしい」と言われた。同年代の子供と比べて、同じクラスの友達との付き合いが苦手らしい。
発達障害のある私の経験もあり、不安が募る
しばらく様子を見ることになったので、まだ発達障害と言える段階ではない。ただ、発達障害は遺伝する部分があると言われている。私は自分自身に発達障害があるため、以前から子供に発達障害傾向があっても、じっくりと向き合おうと思ってきた。そのため、今回の話を聞いて、仕方がないなと思う部分もあった。しかし、かなりショックを感じていたようだ。
学校や会社などでうまく人間関係が作れないことを私も何度も経験している。私はそれを切り抜けてきて今に至っている。だからこそ人間関係がうまくいかないことの苦しさはよく知っている。娘には同じような経験をして欲しくなかった。
そのため、妻からの言葉を聞くと、「じっくり向き合う」という今までの方針が頭から吹っ飛んで、不安ばかりが大きくなった。
自分たちの教育が悪かったのではないか?
もっと厳しくマナーやしつけをした方がよかったのではないか?
甘やかしすぎたのかではないか?
などの不安が頭を駆け巡った。
次に、どんな対策をすれば娘の社会性が高くなるかについて考えを巡らせた。あの習い事をさせた方がいいのか、ここに連れて行った方がいいのではないかなど、様々な方法を調べていた。
そして、ふと気がついた。
もともと私と妻がしたかったのは、娘が興味を持ったことで娘の強みを伸ばす教育だった。しかし、不安にかられた自分の頭には、その観点が全く抜けていたのだ。
私は人材育成や教育に関わる仕事をしているし、このブログでも情報発信をさせてもらっている。このブログでは、親向けのお願いみたいな記事も過去に書いた気がする。そんな私が、自分の子供の出来事になると冷静さを失っていることに我ながら驚いた。
そんな時、ある言葉を思い出した。
岸見一郎先生の言葉
何年か前の話になるが、大ベストセラー「嫌われる勇気」を書いたアドラー心理学の専門家、岸見一郎先生の講演会を聞いた。その帰りに、たまたま岸見先生と同じ電車の車両に乗り、色々質問させていただくというラッキーな出来事があった。
その時、私が
「子育てで悩んでいます」
と言うと、岸見先生が
「自分の子供だと思うから悩むし、過干渉になるんだよ。自分の兄弟や従兄弟の子供と思って接するくらいが子育てにはちょうどいいんだよ。」
と言ってくれた。
その時も良い言葉だと思ったが、改めて思い返すととても重要なことを言っている。
私が考える発達障害のある子供への関わり方
子供に発達障害がある、もしくは発達障害の疑いや傾向があると、親としてはとても心配になる。だからと言って、親がそこで厳しくしつけをしたり、過干渉になると、子供にかえって悪影響を与えることになる。
もちろん子供の世話は必要だが、子供は本来自分の興味・関心を持って物事に取り組む。その「何かしたい」と言う衝動を大切に伸ばしてあげることこそ、子供が今後社会に適応していくためにも最も重要だと思うのだ。
そのためには、過干渉にならずに、子供に適度に距離感を持って見守っていくことが大切なのだろう。そして適度な距離感を持って見守るためには、「自分の子供」と思わずに姪や甥だと思うくらいがちょうどいいのかもしれない。
発達障害で苦しんでいる成人の方の中には、幼少期、親からかなり厳しいしつけを受けた方もいる。おそらく親としては大人になってからの社会適応を願ってのことだろう。確かに社会適応のためのトレーニングは大切なことかもしれないが、本来の強みが潰されていては返って逆効果になるだろう。
娘の社会性問題については、悩むところもあるが、妻と話し合い、親は無理に干渉せずにもう少し余裕を持って見守ることにしてみた。その結果がどうなるのか、本当の意味で分かるのは20年後になるだろう。だが、何にせよ、娘の衝動を大事に、本人の強みをできるだけ伸ばしてみたいと思っている。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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