発達障害のある方が仕事で生き残るために大切なたった一つのこと
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
「発達障害と仕事」について書こうと思う。
『仕事』というテーマは私にとってはあまり書きたくないテーマである。それは、どうしても辛かった時代を思い出してしまうからだ。
ADHD(注意欠如多動性障害)がある私は、大学を卒業してから10年間「仕事ができない人」だった。企業にいても、フリーランスになっても失敗ばかり。整理整頓ができない、計画性がない、ミスが多い、納期を守れない、調整ができない……。怒鳴られる、無視される、仕事を打ち切られるなどの経験は数限りなくしてきた。辛い時期が長く続いた。出口のないトンネルにずっと迷い込んでいたように感じていた。
10年間もがき続けている中で、自分の向いている分野に特化し、特性が問題になりにくい働き方をし、失敗しないための自分流の工夫を多くした。現在は何とか社会に適応している。
(なお、テーマから外れるが、私が適応できているのは、周囲の方々からサポートをいただいていることが最も大きい。)
私だけではなく、発達障害のある方で、仕事についての苦労をされている方は多いのではないだろうか。今回は、発達障害のある方がどうやって仕事で生き残っているか、サバイバルするかを書いていく。
発達障害当事者が仕事で生き残るために
私が思う、発達障害当事者が仕事で生き残るために大切なことはたった一つ。
『自分だけができる仕事をする』
これだけだ。
組織で仕事をするにしても、フリーランスで仕事をするにしても、「自分だけができる仕事をする」ことで、かなり楽に生きられるようになると思う。
組織で仕事をすることを前提として、もう少し詳しく説明したい。まず、「自分だけができる仕事」があれば、それだけでチームに貢献していると周囲から見られる。その分野で成果を出すことができる。信頼も得られる。役に立っているという感覚も得ることができるが、これは精神的にいい影響があるのだ。このように、ポジティブな面がたくさんある。
しかし、私が強調したいのは、「自分だけができる仕事をする」と、ネガティブな状況が少なくなることだ。
「自分だけができる仕事をする」ことは、逃げ場所づくりに繋がる。他の人にはできないので、その仕事については文句を言われることがない。精神的に辛い状況でも、その仕事に逃げ込めば攻撃されないのだ。これはとても大切な状況だと思う。
また、失敗しても大目に見てもらえることが増える。組織に所属していると、発達障害特性であろうが「できていないこと」に対して厳しく怒る人がいる。ところが、自分だけができる仕事を持つと、同じ失敗をしても怒られ方が甘くなるのだ。経験則だが。
強みを持ち、力を持つと、遠慮してもらえることが増えるようだ。そうすると、ストレスがかなり減る。
失敗を推奨している訳ではない。失敗なんてしないに越したことはない。発達障害のある方自身も、失敗を避けるために行動することは必要だと思う。しかし、いくら努力しても、つい失敗してしまうのが、我々発達障害当事者ですよね。
そんな失敗したときのダメージを減らすのが、「自分だけの仕事」なのだと思う。
かめたーとるのケースだと、「自分だけの仕事」に携った例は以下。
エクセルによる顧客管理
ミスは多いが、エクセルは得意。
それを活かして関数を細かく配備したエクセルシートを作った。
便利だったが、私にしか触れないので、そこで文句を言われることはなかった。
契約書チェック・法務対応
新卒一社目で学ばざるをえずに勉強した。
その後の仕事で、意外と重宝された。
特定分野の講義資料づくり
何年か集中してやっていると、自分の特殊技能として認知してもらえるようになった。
締切遅れ・ミス多発など、トラブルは相変わらずあったものの、私の立場を強くしてくれた。
大切なのは模索すること
じゃあ、「自分だけができる仕事」ってどこにあるんだ、という話になると思う。が、それはここではわからない。各人がそれぞれの経験・特性に合わせて発見するものだと感じる。模索し続けていると、だんだんと見えてくると思っている。
ただ、特別なことである必要はない。他の人より「ちょっと得意」なところ、そこを深掘りすると、自分だけができることに繋がる。
仕事現場で苦しんでいる発達障害のある方が、少しでも楽になりますように。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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