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発達障害(特にASD・旧アスペルガー症候群)と診断について

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

このブログに行き着いたということは、発達障害に何らしかの興味を持っている可能性が高い。

自分自身に発達障害のある方もいれば、周囲に発達障害のある方がいるのかもしれない。
どちらにせよ、発達障害がはっきりと分かっている場合は、取るべき対応が具体的になりやすい。

一方で、このブログを読んでいる方の中には、もしかして自分は発達障害があるのかもと疑っていたり、周囲の方に発達障害があるのかもと疑っていたりするのかもしれない。
今回はこれらの疑っている方に向け、発達障害の診断に関わる話をしたい。
ただし、ナイーブな問題でもあるので、私の個人的意見であることは強調しておく。

発達障害かどうかは、病院で診断を受けるまでわからない

まず、自分であれ、他者であれ、診断なしに発達障害と決めつけるのは危険である。
発達障害の診断は医師でしかできない。発達障害を疑う場合は、まずは病院に行って診断してもらおう。

インターネットや本で診断チェックリストはよくあるが、あくまで目安であり、たとえ多くのチェックがついたとしても発達障害とは限らず、他にも多くの要因が関係している場合もある。
以前読んだ精神科医師の話では、上司から発達障害の疑いをかけられて診断を受けたケースの多くが、発達障害でなかったそうだ。
私の知人では、自分はASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)だと思って診断に行ったところ、ADHDと診断された。
また、私自身、自分がADHDだと思って診断に行き、精密検査を受けたところASDの要素も一部あることがわかった。

このように自己判断は危険なので、繰り返しになるが発達障害を疑う場合は、まずは病院に行こう。発達障害の診断は精神科に行くことになるが、発達障害に詳しい医師もいれば、発達障害のある方をあまり診ていない医師もいる。
オススメは、地元の発達障害者支援センターに電話をして、詳しい先生を紹介してもらうこと。そうすれば、地元で発達障害に専門性のある先生の診断を受けられる可能性が高い。

発達障害の診断を受入れるメリットについて

診断を受けると、自分に発達障害があるか、またあるとすれば、

・ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)
・ADHD(注意欠陥・多動性障害)
・LD(学習障害)

等、どんな種類の発達障害なのかを知ることができる。

自分に発達障害があることを知った時、ホッとする人と、落ち込む人がいるそうだ。私は「ホッとした」。
診断前はどう頑張っても仕事がうまくいかないことを、自分の努力不足や性格のせいにして、ずっと自分を責め続けていたからだ。仕事がうまくいかない原因が、先天的な脳の構造にあると知った時、ホッとして前に向かおうと思ったことを覚えている。

一方で、自分が発達障害と診断を受けて、落ち込む人もいるそうだ。ASDの方は、比較的このパターンが多いらしい。「自分が普通じゃないことにショックを受けた」「できるなら知りたくなかった」という声も聞いたことがある。
落ち込む人は自分に発達障害があることはなかなか受け入れられてないように感じる。

確かに、自分に発達障害があるということを受け入れることは簡単ではない。実際に、“障害”という言葉に対する、日本人のイメージはひどく偏ってもいる。それでもなお、もし発達障害であるという診断を受けたのであれば、それを受け入れることはメリットが大きいと思う。
自分が発達障害であることを受け入れられないと、“普通”に近づこうとしがちだ(その普通がどのようなものであるかは、人によって大きく違う)。しかし、自分が発達障害であることを受け入れられると、発達障害であることを前提に対策を立てられる。後者の方が断然有効だ。
発達障害を受け入れることで、人生が進むように感じている。

自分に合う病院・先生を探すことも、状況を改善する上では有効

なお、診断や治療をする際には病院を一つに限定する必要はないと個人的には考えている。発達障害に対する知識量やスタンス・治療方針は、医師によって大きく異なる。そこで、不安がある場合、納得がいかない場合はセカンド・オピニオン(第2の意見)として別の医師の診察を受けることも有効であるように思う。

私は引っ越しや、仕事場所の変化で通院する精神科を何度か変えている。その中で、先生ごとのスタンスの違いを大きく感じた。

病院の先生によって異なる発達障害の診断やスタンスの例

【診断例1】

最初は統合失調症やうつ病の薬を色々試し、ADHDの薬をなかなか出してくれない先生。

【診断例2】

初回の診断で、私はADHDの薬を出すつもりがないと言い切った先生。

【診断例3】

「あなたにはADHDがあるが、社会生活を送れているのでADHDの診断は出さない。だが薬は出す。」と言った先生。

【診断例4】

最初からこちらが望む薬を出し、経過観察を細かく行う先生。

いろいろな先生がいた。自分に合う先生を探すことも、治療をしていく上で有効だろう。

発達障害と診断を受けることは、発達障害のある方にとって、とても大きな出来事であると思う。だからこそ、自分の人生を進めるために、診断を有効利用してほしい。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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