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ADHDのある人が仕事でうまく適応するための方法とは?

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

以前、“発達障害のある方が仕事で生き残るために大切なたった一つのこと”というブログの記事を書いたが、今回はもう少し具体的な工夫を書きたい。

ADHDの特徴として多動性・衝動性・不注意性があるため、仕事での失敗が多くなるケースが見られる。
本人が努力してもなかなかうまくいかず、会社内で孤立してしまう。これはとても辛い経験だ。
私自身、会社員時代、ADHDの特性から仕事で多くの失敗をしてきた。それが退職に繋がった経験もある。会社に居づらくなったためだ。

では、そのADHDのある人がうまく仕事に適応するためにはどうしたらいいのか?
それは、「仕事環境を作る」ことだ。

“発達障害を才能に変えるための3つのプロセスとは”でも少し触れたが、今回はもう少し詳しく記載したい。

ADHD特性の問題を抑えられるような仕事環境を作る

仕事環境を他者に「作ってもらう」のではなく、自ら「作る」ことで、解決するADHD特性の問題も多くある。自分の仕事の中で、自分なりの環境を作れば仕事をしやすくなるのだ。

自分なりの仕事環境を作ることの最大のメリットは、意志の力を使わなくてもいいことだ。

仕事をする上で成果をあげられない、といった失敗を「努力が足りない」など、意志の問題として捉える方は少なくない。確かに、そういうケースがあるのかもしれない。

しかし、ADHDのある方の場合、失敗を意志の問題にしても解決しない。
衝動性があるため、やるべきでないとは思っていても、実行してしまう場合がある。
また、不注意性があるため、どれだけ意識しても失敗する場合もある。
意志の問題にしても、ADHDのある方には役に立たないケースが多い。

意志力を使わない代わりに、環境を使えばいいのだ。
環境をうまく調整すれば、意志力を使わなくても発達障害特性の問題を抑えられる。
大きなことでなくても、小さなことでもOKなので、環境を変えてみよう。

例えば、私の場合、ADHD特性に対して以下のように環境を作っている。

仕事の上で私が作っている自分なりの環境

ADHD特性と仕事環境(1)『ミスが多い』

一部の取引先にはお願いして、提出した資料をチェックしてもらっている。
大事な資料については、お金を払ってチェックをしてもらう場合もある。

ADHD特性と仕事環境(2)『締め切りを守るのが苦手』

一部の取引先にお願いして、締め切りを早めにするように頼んでいる。
少しであれば遅れて出しても、取引先に迷惑はかけない。

ADHD特性と仕事環境(3)『忘れ物が多い』

大きなバックを持ち歩き、よく忘れるものはバックの中にスペアを入れておく。
翌日、絶対忘れられない大切なものは前日のうちからドアの前に置く。

ADHD特性と仕事環境(4)『衝動買いが多い(フリーランスなので、仕事グッズの衝動買いは大きな問題)』

カードの明細のwebページのIDとアドレスを妻に共有。
いらないものを買ったら、恐ろしいことに・・・。

ADHD特性と仕事環境(5)『会議などで長時間座っていられない』

基本、一箇所に座るのは30分が限界。会議では早めに到着し、ホワイトボードの前に座って書記係を担当する。そうすれば座らなくても済む。

多くのものは、最初に環境さえ作ってしまえば、後は私の意志とは関係なく、問題の発生を防いでくれる。
一つ一つは小さな工夫だが、積み重なってくると問題がどんどん減っていく。このような小さな環境調整を多くすると、仕事に適応できる部分が大きくなる。

ADHD特性のある方へのポイント

(1)自分で仕事の環境を調整をする

ADHDなんだから、周囲が配慮すべきだと思うかもしれない。確かにそうしてくれるとありがたいが、周囲はどんな配慮が必要か分かっていない可能性がある。他者の力が必要な環境調整がある場合、こちらからお願いしよう。

(2)小さいことから始める

つい大きな環境調整をしようと思うかもしれない。しかし、大きなものだとそれだけ準備が大変になる場合がある。小さい環境調整を大量に行い、そこでうまくいったものを残そう。

ADHDのある方が、環境調整を多く行い、努力しなくても自分の問題が起こらない状況を手に入れ、充実した仕事生活を送れることを願っています。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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