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就職活動がうまくいく発達障害のある学生の特徴

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

私は、大学のキャリア系講師・就労支援講師として発達障害のある学生に会うことも少なくない。発達障害のある学生は就職活動が上手くいっていないと思われがちだ。
しかし、一般企業に対する就職活動が上手くいっている学生もいる。

では、就職活動が上手くいっている学生の特徴とは、一体どういうものだろうか?
ある学生の事例を紹介したい。ここではA君とする。

発達障害特性を意識し、就職活動を上手く行った事例

A君は1回生の時に私の科目を履修した。その講義は性質上、グループワークを多用していた。
A君には「グループで他者と関係をつくりながら議論を発展させることが苦手」という特徴があり、かなり苦労をしていた。
グループの他のメンバーから私にA君に関する苦情もあった。
なんとか授業は最後まで受けたが、最後のレポートで「私はグループワークやコミュニケーションが苦手ということを嫌というほど確認させられました。」と書かれていたのが印象的だった。

2年後、3回生になったA君は再度私の授業を履修した。
その時は講義前に大学教員の方から、A君がASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)であることを伝えられ、適切な配慮を求められた。A君と私でどのように講義を受けるか話をした際、就職活動をどうするつもりなのか聞いてみた。彼はプログラマーを目指すと教えてくれた。
詳しく聞いてみると、自分の発達障害特性に気がついてから、自分のできることを探し、コンピューター分野に活路を見出していた。プログラマーになればコミュニケーション能力がそこまで求められず、自分にもできそうと判断した。理系ではなかったが、大学の授業とは別に独学でのプログラミング学習に力を入れていた。

その後、彼は就職活動において、発達障害特性を伝えることなく、システム系企業から複数の内定をもらい、早期に就職活動を終えたそうだ。
彼が就職後、どうなったか私には分からない。ただ、一つのモデルケースにはなると思う。

このように、発達障害のある学生にとって、特殊技能や資格を取得することは、就職活動やその後のキャリアにおいて一定有効なことであると思う。
実際、発達障害のある学生がコミュニケーションの苦手さなどの特性を意識して、司書・公務員試験・税理士といった、資格や試験に向かうことが多い。そして、資格を獲得して上手く仕事をしているケースも見られる。

就職活動の際は、自分の発達障害特性がその職業に合っているか確認を

ただし、注意点がある。
技能や資格の先にある仕事が、自分の特性に合っていない場合もある。だから、どんな技能・資格を選ぶかは慎重になった方がいい。
(📍 参考→発達障害と仕事について知る ▶ https://hataraku-chikara.jp/user/hattatsu/

私は以前、幼児教育専攻の学生から相談を受けた。彼女をBさんとする。
Bさんは高校生で発達障害特性(ADHD・ASD)を自覚し、専門職に就こうと思って大学で幼児教育を専攻した。保育士や幼稚園教諭の資格を取り、保育所で働くことを希望していた。
しかし、保育園実習でミスや失敗を繰り返し、大きな問題になった。自信をなくし、また学校からは彼女には就職先候補としての保育園は推薦できないと言われて悩んでいた。
結局、彼女は保育士の資格を獲得したにもかかわらず、保育士として働くことを断念し、大学卒業までに就職ができなかった。
専門性があったとしても、自分の特性に合わない職種を選んだゆえの悲劇であったと思う。

他にも、コミュニケーションが苦手だが、公務員試験を受けて公務員となることを目指す場合も散見される。
個人的な感覚だが、行政系職種の公務員試験では一次試験(筆記)は受かっても、二次試験(面接)は落ちるケースが多いように感じている。公務員試験の行政系職種(事務)では、市民の方との窓口対応など、仕事の特性上、コミュニケーション能力が求められるものが多い。そのため、面接ではコミュニケーション能力はかなり見られているように感じる。
ただし、他の専門職の公務員試験ではそうではない場合もあるようなので、公務員志望の方の場合は一度調べてみてほしい。

発達障害のある学生が就職活動を上手く行っていくには

これらの事例などから、発達障害のある学生で就職活動が上手くいっている学生の特徴を個人的にまとめてみると、以下の3点に集約できるように感じる。

特徴1)自分の発達障害に対して、早い段階から向き合っていた

特徴2)特性が問題になりにくい職業を模索していた

特徴3)その職業に就くための努力を惜しまなかった

もちろん、この3点を満たしていない場合でも、発達障害のある学生が一般企業に対する就職活動に上手くいったケースも何度も見ている。
ただ、上記の3点は、発達障害のある学生の大学生活の過ごし方について、参考になる点もあると思う。

大学時代は自由になる時間が多い。
発達障害のある学生に、将来に結びつく有効な時間の使い方を模索してほしいなと、当事者の立場からも日々感じている。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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