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カサンドラ症候群-(1)発達障害のある方がパートナーと良好な関係を続ける為に

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

以前、《大人の発達障害における恋愛・結婚》という記事を書いた。その記事をもう少し深掘りしてみたい。

「カサンドラ症候群」について

カサンドラ症候群という症状がある。
カサンドラ症候群とは、パートナー(妻・夫・恋人など)にASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)がある方が、パートナーと感情的交流が持てず、その結果、心身に不調をきたす症状のことを指す。
今回は、このカサンドラ症候群について取り上げてみたい。

実は、カサンドラ症候群については私の実体験と重なっている。
この記事では、カサンドラ症候群の生まれるメカニズムや、パートナーが心身に不調をきたすケースを中心に、私の経験も踏まえて考えていきたいと思う。

カサンドラ症候群

「私はカサンドラ症候群だと思う」と妻から言われ、ショックを受けた

実は、カサンドラ症候群については、私の実体験とも重なっている。
私はある日、妻からインターネット上の記事を見せられた。カサンドラ症候群に関するものだった。「私はこれだと思う」と妻は言った。

カサンドラ症候群についての記事を見せられた時、私はショックを受けた。私には関係ないと思っていたからだ。
私にはADHDがあるが、病院の検査でASDについては一部しか症状が見られなかった。ASD傾向が強くない私にとって、カサンドラ症候群は他人事だった。
また、その時期は育児が大変な時期で、妻が苦労していることは十分理解している“つもり”だった。私自身、仕事が忙しい中で、育児と家事に最低限参加している“つもり”だった。

しかし、妻から見ると私との感情的交流が持てず、孤立感を感じていた。
私にとって強い衝撃だったし、大きな罪悪感を抱いた。
妻から記事を見せられてから、どうすればいいのか自分なりに模索した。子どもの成長もあり、妻の精神状態も以前よりはかなり改善したと思う。

私のケースのように、発達障害のある方にとって、パートナーが知らない間に苦しんでいるということが十分にあり得る。

パートナーをカサンドラ症候群にしないために。発達障害のある方が注意すべきこと

インターネットや本を見ると、カサンドラ症候群を患うパートナー側の情報は多くあるように思われる(※下記参照)。
しかし、発達障害のある方側の情報はあまりないように感じた。
それは、実際の症状が出るのがパートナー側だからだと思われる。しかし、発達障害のある方も、パートナーに辛い思いをさせることは望んではいないだろう。

そこで、パートナーをカサンドラ症候群にしないために、発達障害のある方側から何ができるのか、今回は考えてみたいと思う。

一度ここで強調しておくが、発達障害のある方との恋愛関係・婚姻関係を持つことを否定しているものではない。発達障害とはその人を表す数多くある特性の一つである。「発達障害」という一つの側面のみでその方との関係を考えるのは、他の多くの側面を切り捨てていることになる。
発達障害のある方や、発達障害傾向のある方との恋愛関係・婚姻関係を考える時、発達障害特性だけでなく他の多くの側面を含めて、全人格的に判断するといいと思う。

(!) カサンドラ症候群が生まれるメカニズム

話を戻すが、まずカサンドラ症候群が生まれるメカニズムを見ておく。
恋愛関係・夫婦関係において感情的な交流を持つことは、お互いの精神的健康にとって非常に重要である。感情的な交流を持つためには、お互いに対する「共感」が大きなキーワードになる。しかし、発達障害、特にASDのある方は共感性に乏しいと言われている。そのため、パートナーとの間に共感を育むことができない。

(!) 「慣れ」がカサンドラ症候群につながる可能性がある

恋愛関係初期であれば、パートナーはまだまだ「外部」の人なので、お互いに遠慮があり、人間関係を育むための道具として「共感」を使う。しかし、だんだんと付き合う時期が長くなってくると、相手を「内部」の人と見なし、遠慮がお互いになくなり、素が出てくる。そうすると、発達障害のある方の場合はそこで相手に対する「共感」が抜け落ちる場合がある。
しかし、パートナーに対する「共感」は長期的な関係を結ぶためには、抜けてはならないもの。そこが抜けてしまうから相手は精神的に追いつめられることになる。

(!) 関係性が大きく変わるタイミングで、カサンドラ症候群の芽が生まれやすい

特に、結婚、同居、出産など二人の間の関係性が大きく変わるタイミングは要注意だ。お互い目の前の変化に適応しようともがく中で、いつの間にか相手に対する「共感」が抜け落ちてしまうことが多い(これは発達障害のあるなしに関わらず、だが)。
私の場合は、結婚・同居では大きな問題が出なかった(小さい問題はたくさん・・・)。しかし出産を機に、妻に大きな精神的負荷をかける構造が出来上がってしまっていた。

パートナーをカサンドラ症候群にしないために。具体的な対策は次の記事で

さて、前提部分が長くなってしまった。
次の記事で、パートナーをカサンドラ症候群にしないために、発達障害のある方側から何ができるのかについて、具体的に考えたいと思う。

■参照記事:
夫は発達障害? 苦しむ妻らへ、支援団体が小冊子
(引用元:朝日新聞デジタル ※会員限定有料記事になります)

■次の記事:
→《カサンドラ症候群-(2)発達障害のある方がパートナーと良好な関係を続ける為に》

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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