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私が生きていくには社会は複雑すぎる

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

たまには、一当事者の愚痴を書かせてください。
まあ、ADHDの人から見た世の中ということです。

私にはADHDがあり、種々の生きづらさを抱えている。
その中の一つに、「私が生きていくには社会が複雑すぎる」というものがある。

このコラムを書いているのが12/31。年を越して、めでたいお正月のはずだが、私は1月~3月はひどく憂鬱だ。なぜなら、事務が非常に多いから。

ADHD当事者が抱える苦手なこと…

複雑で苦手(1):事務作業

例えば、確定申告。
フリーランスなので、確定申告をしないといけないが、これがひどくメンドくさい。
お金を払って税理士にお願いすればいいのだが、そこまでの稼ぎでもないから自分でやらないといけない。
領収書の取りまとめから書類作成まで、かなりの量の作業がある。書類との格闘は私にとって、非常にしんどく、確定申告の作業をしているときに1回は悪夢を見る。
日頃から領収書など整理しておけばいい?そんなこと、ADHDの人ができるはずないでしょ。

また、1~3月は大学にも様々な書類を出さないといけない。期末試験・成績・新年度シラバス・契約書など。私は3大学で講義を持っているので、更に煩雑だ。
この1~3月の書類の多さに耐えきれなくなって、2度は一人でカラオケに行き叫んでいる。

書類が得意な人の方が少ないことは分かっているけど、発狂しそうなほど苦手な人はどれ程いるのだろう。

このように、社会生活を送る上での一つ一つが私にはひどく複雑に見える。

複雑で苦手(2):人間関係

人間関係もひどく複雑に思える。なんで人って、集まると派閥を作ろうとするのかね。そして、ライバル派閥にいる人を攻撃しようとするのかね。本当に理解できない。

私はそういう場合、そもそも派閥の存在を認識していない。そして、派閥同士で争っていることも理解していない。どちらとも付き合い、相手派閥の悪口を聞かされて、初めて派閥の存在に気がつく。気づいたらどちらかの派閥に組み込まれていることもある。

派閥争い中の細かい人間関係のやり取りは、私からすると複雑すぎて意味がわからない。さっきまで笑いながら話していた人が、裏では悪口を言っていたりするというやりとりなど、私の理解の範疇を超えている。

上記2つの例は、困りごとという程ではない。生きづらさにも直接繋がっていないかもしれない。でも、私から見えてしまうのだ。発達障害のない方の世界って複雑すぎるって。

一応、知的能力は人並みにあるつもりだが、それでも理解できない。ADHDのある人は私と同じように分からない方が多いと思う。ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)のみある方はどうだろう。

発達障害がある方が見ている世界を少しでも知ってほしい

なぜ、わざわざこんなことを書いたのか。
発達障害の世界を少し体感して欲しかったからだ。発達障害について触れられるとき、当事者であろうと、当事者でなかろうと、まずその困りごとに焦点が当てられる。次に、障害特性が説明され、そして対策が書かれる。このような流れが多い。

確かに、困りごとを解消し、生きづらさを減らしていくことは非常に重要だ。しかし、もう一つ理解してもらいたいことがあるのだ。
発達障害がある方が見ている世界は、発達障害のない方が見ている世界と違うということだ。何度も言うが、発達障害のある方といっても多様なので、それぞれが別の世界を見ている。ただ、発達障害のない方と比べると、明らかに世界の見方が違う。

その見方の違いは、正しい・正しくないで比較できるものではない。でも、残念ながら一般的な「正しさ」が作られ、マイノリティーの見ている世界は排除される。

マイノリティー

例えば、行政の書類であれば、発達障害のない方ならなんとかなるかもしれないが、発達障害のある私からすれば複雑すぎて見るのも嫌だ。
このように、社会自体が発達障害(だけでなく、その他マイノリティもそうだろう)に対して優しくない。

もちろん、マイノリティでも対応しやすく社会がしていくべきなのだろう。でも、それには限界がある。書類のように仕組みについては変えることが不可能ではないが、派閥のように感情に関することは社会がついていくのが簡単ではない。

ただ、発達障害のない方は、当たり前と思っていることが、当たり前と思えない人がいるということはよく知っていてほしい。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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