私が自分に発達障害があると認めるまでに考えたこと(2)
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
前回の「自分を発達障害と認めるか、発達障害と認めないか(1)」に引き続き、自分が発達障害かもしれないと疑っているが、発達障害であることを認めない、知ろうとしない人について見ていきたい。
これらの方々が発達障害を認めない根本には、
・周囲からの見方が変わってしまうのではないかという恐怖
・自分が変わってしまうのではないかという恐怖
という2つの恐怖があるのではないかと書いた。
前回は「周囲からの見方が変わってしまうのではないかという恐怖」を取り上げたので、今回は「自分が変わってしまうのではないかという恐怖」について取り上げたい。
発達障害と認めることに潜む「恐怖」
自分が変わってしまうのではないかという恐怖
これもある意味正しい。
「自分は発達障害者だ」「自分には発達障害がある」という事実を突きつけられると、「私は何者か?」という自己認知に大きな影響がある。自分の内面で様々な変化が起こらざるを得ない。
自分が変わってしまうことへの恐怖を感じている方は、自分が発達障害であるということを認めると、発達障害であることを言い訳にして努力を怠り、そのままズルズルと自分の人生が堕落していくことを恐れているようだ。
しかし、この点に関して私は疑問を持っている。
確かに、発達障害を言い訳にして成長を止めているように見える方もいる。
しかし、自分が変わってしまうことに恐れを持つ方はそもそも自分に厳しい方だ。発達障害を言い訳にして成長を止めるリスクは少ないように思われる。
発達障害があることを前提に、その上で自分をどう成長させていこうという考え方を持つことが十分にできるのだ。そうすることで、より自分らしい形で、自分を高めていくことができるのだ。
以上のように、
・周囲からの見方が変わってしまうのではないかという恐怖
・自分が変わってしまうのではないかという恐怖
については、私は心配するほどのものではないと思う。
それよりも、
「自分が発達障害なのか」
「発達障害とすればどんな傾向なのか」
「発達障害でないのであれば生きづらさの原因は何なのか」
について、発達障害を専門とする医師の方に診断を受けた方がいい。
そうすることで、自分に合わせたキャリア設計を前向きに行うことができるようになる。
発達障害を認められない層は努力家の方が多いイメージがある。
生きづらさをなんとか克服しようともがいており、そのもがいている自分を守るために発達障害であることを認めないのかもしれない。
発達障害を受け入れることで変わる前提、そのインパクトは大きい
私はADHDであるという診断を受けたが、当時はそれを認めることができなかった(当時は成年の発達障害がほとんど知られていなかった)。そして、ADHDを克服しようとして、望んで経理課に配属された。
そしてあまりにもミスが多く仕事が全くできず、地獄のような半年ほどを過ごし、最後には部署を異動させられた。
パワハラと言っても過言ではない状態にあったこともあり、この期間に受けた心の傷は今も時々痛む。
診断を受けた時点で発達障害であるということを認め、発達障害があることを前提としたキャリアを構築すれば、あのような辛い思いをしなかったのではないかと後悔している。
発達障害であることを自分で受け入れることによって、前提が変わる。この前提が変わることはなかなかインパクトの大きいことだ。
新たな前提のもとで自分がこれからより良く生きるためにどうするのかを考えた方が、できなくてクヨクヨする自分より、よっぽど充実した人生につながると思うのだ。
発達障害と診断されることは怖いことかもしれない。確かに発達障害であったと診断されるショックは小さくない。しかし、その怖さとショックは一時的なものだ。
未来に続いていく人生のためにも、一人の当事者として、今後のキャリアを気づくために発達障害を疑うのであれば、専門とする医師の方への診断を私は勧めたい。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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