(2)NG行動・Good行動~発達障害のあるお子さんの就活をサポートする方法~
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
「(1)受容する~発達障害のあるお子さんの就活をサポートする方法~」の続きです。前回は親がお子さんを受容することの大切さについて書きました。
次は、具体的にどのような行動をすればいいのかと言うことについて書きたいと思います。引き続き、お子さんが成人しており、発達障害があり、一般雇用や障害者雇用を考えていると言う前提で解説をしたいと思います。
発達障害のあるお子さんの就活で親ができるサポート
まずは、避けていただきたいことから書きます。
NG行動(1):履歴書・職務経歴書・面接練習
避けていただきたいことの一つ目は、履歴書や職務経歴書、面接練習などをすることです。就労支援の専門性をお持ちであればいいのですが、専門性のない親御さんが子どもさんをサポートしたいという気持ちから、誤った指導される場合が見受けられます。その場合、専門の支援者との意見が食い違い、お子さんの混乱につながっていきます。何とかしてあげたいという気持ちはよく分かるのですが、その結果として、お子さんを不利な方向に追い込む可能性もあるので、オススメすることができません。特に発達障害のある方の支援については、障害者支援の専門性も必要になります。プロの支援者が様々な場所にいますので、その辺りのサポートはプロに任せることをオススメします。
NG行動(2):お子さんの代わりに行動をしすぎる
次に避けていただきたいことは、お子さんの代わりに行動をしすぎることです。就労継続支援事業所を検討されている場合や、知的障害もある場合では親の働きが重要になります。しかし、発達障害のあるお子さんが、一般雇用や障害者雇用を目指している場合は、お子さんは今後社会人として自立していくことになります。いくら就職活動が大変だからといっても、親が代わりに行動しすぎると依存心が大きくなり、自立心が育たなくなるリスクが生じます。
面接において、そして障害者雇用の実習において、社会人として自立して行動できるかはチェックされるポイントです。自立心を育むことも親としての重要な役割でしょう。もちろん、親が情報収集してお子さんに提示することもあってもいいと思います。ただ、押し付けるのではなく、あくまでお子さん本人に意思決定してもらいましょう。
では、どんな行動を行っていけばいいのでしょうか?
Good行動(1):支援機関を探して関係を築く
まずは支援機関を探すこと、そして支援機関との関係を築くことです。
発達障害がある場合、一般雇用での就職活動が大変な場合も多く、障害者雇用は就労移行支援施設などの支援機関ルートを通ることが多いです。そのため、支援機関とつながることが有効になります。
しかし、支援機関探しは残念ながら分かりにくい側面があります。そのため、支援機関探しを手伝い、必要に応じてその支援機関との関係を親が作ることが重要になります。もちろん、お子さんが支援機関を探してきて、そこといい関係を築いているのであれば問題はありません。しかし、お子さんを支援してもらえる機関がない場合は、親御さんが支援機関を探し、お子さんと同行し、親子共々信頼のできる支援機関を探すことは有効です。
お子さんが大学生であれば、キャリアセンター、障害者雇用を目指すのであれば就労支援機関など、支援を受けるために必要な支援機関は様々です。ここでは詳細は述べませんが、一緒に探して、訪問してみましょう。
そして、お子さんと支援機関がつながったら、後は極力お子さんと支援機関を信頼して任せましょう。親が出すぎると、やはり自立心に支障が出ます。
Good行動(1):お子さんの話を「傾聴」する
次に、お子さんの話を「傾聴」しましょう。お子さんの話をよく聞くこと自体が受容することにつながります。
就職活動はただでさえ大変です。そんな時に、話を聞いてくれる相手がいることは大きな助けになります。人は苦しい時に話を聞いてもらうと、それだけで救われた気分になります。だからこそ、就職活動を行う人にとって、親が話を聞いてくれることは大きな力になるのです。
かといって、子はなかなか親に対して深い話をしないということもあります。そんな場合、親が傾聴をするのではなく、お子さんの意見を否定したり、自分の意見を押し付けたりしているケースが珍しくありません。また、話を聞いて欲しいだけなのに、ちょっと話を聞いただけでアドバイスをされたりすると、もうこの人には話をしようと思わなくなります。
お子さんが就職活動の話をしてくれた時に、じっくりと話を聞いてみましょう。その時は、何か作業をしていても手を止め、お子さんに向き合い、アイコンタクトを取り、お子さんの話をうなずきながらじっくりと聞いてあげましょう。こちらからの意見は求められれば言う程度でいいでしょう。お子さんのことになると、なかなか冷静に聞けない気持ちはよく分かるのですが、じっくりと話を聞くことがお子さんにとって救いになるかもしれません。
以上二回に渡り、親のサポートについて書いてきましたが、あまりできることがないと思った方もいらっしゃるかもしれません。お子さんに発達障害がある場合、心配になり、何かしてあげようという気持ちになるのはよく分かります。
しかし、一般雇用や障害者雇用という形で、社会で自立して行くことをお子さんが目指されている場合、やりすぎると自立を妨げる結果になります。
少し距離を取りながら、求められる手伝いをして行くことが重要になってきます。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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