自己PRを書けない発達障害のある学生のための強みの見つけ方
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
「自己PRが書けないんです」
「自分の強みが分からないんです」
この手の相談は、就職活動支援をしていて、相談項目トップ3に入るのではないかと思うくらいよく出会う。
自己PRが書けない理由は大きく3つに大別される。
(1)強みが分からない
(2)エピソードが見つからない
(3)文章化できない
だ。
発達障害のある学生の自己PR対策
(1)(2)(3)ともに共通する対策が一つある。それは、「支援者に見てもらうこと」だ。
支援者は多くの場合、カウンセリングやコーチングなどのスキルを持ち、話を引き出すことに長けている。また、自己PRを文章化する経験を多く持つので、時間をかけて話を聞いてもらうことで、良い自己PRの作成につながることが多い。
ただし、時間をかけて付き合ってくれる支援者がいるかどうかは環境によって異なる。就労移行支援施設はその特性上、じっくりと話を聞いてくれやすい。大学については、支援者を指名できるところと指名できないところがあり、後者だとじっくり関わってもらえない場合がある。公的機関は本当に様々という印象を受けるが、一から話を聞いてくれるほどしっかりと時間をとってもらえることは多くないようだ。
支援者側があまり時間をとれなくても、(3)の文章化についてはその場でやってくれるところが多い。しかし、(1)の強み、(2)のエピソードについては作成に時間がかかることもあり、可能であれば、自分である程度進めておきたい。
強み・エピソードを見つけやすい人・見つけにくい人
この差は何か?強み・エピソードを見つけにくい人の全体的な特徴として、
(A)経験自体が少ない
(B)自分に自信がない
ということがあると思う。
経験が少ないとエピソードが少ないし、強みに気づいたり発揮したりする機会も少ない。また、自分に自信がないと、語れるような強みやエピソードを持っていたとしても「たいしたことがない」と思いがちだ。
発達障害のある方の場合、過去の失敗体験や挫折体験から、何か行動を起こすことが怖くなってしまうケースや、自分に自信を持てないケースが少なくない。その結果、自己PRが書けない…というケースにつながってしまう。
ちなみに、私は「自分に自信がない」タイプの典型で、長らく自分の強みが分からなかった。自分の強みを本当の意味で理解できるようになったのはここ一年ほどで、それまでは必要に応じて自己PRを作るものの、ずっと納得感を持つことができなかった。今から考えると、私の作った自己PRは他者にあまり伝わっていなかったと思う。
では、自分の強み・エピソードを見つけるためにはどうしたらいいのか。自己分析の方法は数多くあるが、その中から一つ紹介したい。
(例)自分の強み・エピソードを見つけるためには
まずは『自分の中でこれはがんばったと思うこと』を、幼少期の頃から箇条書きで、『できるだけ多く』書き出そう。どんな小さなことでもいい。
例えば、
➡ 学校に遅刻しないように頑張って早起きした
➡ 逆上がりをできるように努力した
➡ 難しいゲームのクリアを頑張った
など、本当に何でもいい。
ポイントは『自分の中で』『できるだけ多く』ということだ。
自己PRを作ろうとすると、つい”他人から見て”すごいことを書こうとしてしまう。確かに誰もがすごいと思うようなエピソードがあるに越したことはないが、ほとんどの人はそんなエピソードは持っていない。まずは他人の目を気にせず、自分なりにがんばったエピソードを多く書いてみよう。その中に、他人から見て強み・能力を感じさせるようなエピソードが眠っていることが少なくない。
多く挙げたエピソードから自己PRで活用するものを選ぶ時には、他人の目を意識してみよう。他人から見て興味を持ってもらえるエピソードを考えてみるのだ。選び方の要素は2点。
✅ 分かりやすさ
✅ タイムリーさ
だ。
エピソードは分かりやすい方がいい。分かりやすい努力があり、分かりやすい結果が出ているものの方が人は覚えてくれやすい。
次にタイムリーさだ。あまりに古いと、現在も同じ能力が発揮できるか採用側が疑問を持つことが多い。先程のエピソードの洗い出しは幼少期から書いてもらうことをオススメしたが、それは自分の強みやエピソードの共通点に気づくためだ。他者、特に面接官が強みと判断するのは、過去5年以内のことであるように感じる。
このようにしてエピソードを決めたら、次に強みを考える。自分の選んだエピソードから、自分にどんな強みがあるように感じるだろうか。それを書く。大切なのは「論理の一貫性」だ。自己PRで強みとエピソードが一貫していないと、聞き手は強い違和感を感じる。エピソードを先に作るのであれば、強みはそのエピソードと合致しているものにする必要がある。
エピソードに合わせて強みを作ると、しっくりこないと感じる方もいる。だが、エピソードと一貫性のある強みは、実際に以前発揮されたもので、今後も発揮できると思われるものだ。自信を持って記載しよう。
他にも強み・エピソードを見つけ出す方法は多くある。発達障害のある方も含め、全ての人は強みを持っている。自信がなくてもまずは作ってみよう、そして支援者に見てもらおう。自分が納得できなくても、面接官は納得できる。そういうケースを私は多く見てきた。
長所・エピソードの見つけ方については、以下の記事も参照してください。
▶ 長所・エピソードの見つけ方
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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