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一人一人の「やってみたい」をナチュラルにサポート

企業・団体名:NPO法人JAE
http://www.jae.or.jp/

NPO法人JAE集合写真

「発達障害は一つの個性であって、誰にでも活かせる強みがあると思っています」そうエールをくれたのは、大学生インターンシップのコーディネートや若手社員の研修などを行うNPO法人JAE。2012 年から 2015 年 7 月まで、10名以上の実習生を受入れています。どんな思いで受入れているのでしょうか。代表理事の坂野充さん、コーディネーターの松田雅子さんにうかがいしました。

働く人のペースに合わせて業務や環境をコーディネートしています。

Q.実習・インターン受入れに取り組むきっかけや目的はなんですか?

坂野:障害のある方の支援をしている方々ともともとお付き合いがあったんです。発達障害のある方の中にはすごい集中力で、すごい量の業務をこなす方もいるという話も聞いていました。ずっと、「どんな感じなんだろう」と関心があったんですが、そこにタイミングよく実習受入れの依頼がありました。当社としても、ちょうどデータ入力や発送作業のような定型業務に人手が必要だったので、「じゃあ、受入れてみましょう」となりました。

Q.実習・インターン生の仕事内容はなんですか?

松田:データ入力、アンケート入力に取り組んでいただいています。発達障害のある方は、定型業務で強みが活かせるケースが多いから、というのが理由です。
坂野:スムーズに仕事をしていただくため、まずマニュアルをつくりました。手順を明確にすることで、仕事に安心して取り組めると事前に聞いていたのが役立ちました。

松田:具体的には「ホッチキスをとって、分類して、スキャンをして、スキャンに名前入力して、ファイリングして…」といった内容です。ミスもありましたが、作業自体はスムーズに行えました。

坂野:そのほか、チラシや案内などの発送業務も手伝っていただいています。昨年度は、冊子の発送作業があったのですが、発送部数がとても多かったので、エンカレッジの業務委託(*)でお願いしました。約2週間、3名1組で来ていただきましたが、冊子は重い、量も多いという状況。そんな中で、役割分担をしたり、手順を工夫したりと、力を合わせて集中して取り組んでくださいました。最終的に、1万部ぐらい発送作業していただいて、とても助かりました。


(*)就労移行支援事業所エンカレッジが企業様の業務の一部を引き受け、利用者(発達障害のある若者)が、代行するサービス「en+トラスト」。利用者は代行の対価として、工賃を得ることができます。
Q.受入れをしている中で、難しかったことはありますか?

松田:一番覚えているのは、「求められすぎるとミスをしてしまう」という方を受入れた時です。あまり急かさないようにしたのですが、作業途中で居眠りしてしまうこともあり…。どこまで求めていいか、どのぐらい注意すればいいかの基準がわからなかったのが、難しかったですね。 また、「もっとチャレンジしたい」という言葉はあったので、こちらから「では、こんな仕事をしてみますか?」と提案したこともありましたが、その人の心にはあまり響かなかったようでした。成長したいのかしたくないのか、その辺りがわからない時も、難しさを感じましたね。

Q.受入れの際に工夫や配慮、大切にしていることはなんですか?

松田:発達障害のある方を初めての方を受入れる時は、職員全員がいる会議でプロフィールを前に出して、「こういう人を受入れますよ」「職員は名札をつけましょう」「外の景色が動いていると気になるからブラインドを閉めましょう」と丁寧に注意事項を共有しました。2人目以降は、職員に認識ができたので、事前にメールで情報共有し、名札をつける、くらいで大丈夫でした。

坂野:作業場所はその時々で柔軟に変更しています。それぞれが、力を発揮できる環境で実習に取り組んでいただきたいからです。事務所側はゴチャゴチャするので、周りが気になる場合はミーティングスペースで作業していただいています。最近はむしろ、仕事の臨場感を知りたいから「事務所側でやりたい」という方が多いですね。 松田:最初の2日間はミーティングスペースにいる方でも、だんだん慣れてくると事務所側に移動することもあります。10:00始業だったのが、朝礼を経験するために、9:15の掃除の時間から出勤するようになった方もいました。毎日振り返りを一緒にするので、その時に希望を聞いて、その方の状態に合わせて対応しています。

坂野:一人一人のペースや希望に合わせて、環境や業務をコーディネートするのが一番だと思います。

コーディネーターの松田雅子さん

いい意味で普通。みんなにとって日常の一コマになっています。

Q.職場実習の受入れをする中でよかったことや、周囲の変化などありますか?

坂野:最初にマニュアルを作ったことがとても勉強になりました。それまでは、職員に指示を出す時も「わかってくれるだろう」という前提で、細かい手順を飛ばして伝えていました。でも、それがいかに曖昧な指示だったのか気づいて、すごく反省しました。これは意味のある気づきでした。今では、社内向けのマニュアルを作る際には、文字と画像を組み合わせて、全く知らない人が見ても理解できるレベルのものを作るのが基準になっています。

松田:2年目の途中までは、主に私と坂野が受入れを担当していました。他部署の人が実習生と直接やりとりすることはなかったのですが、今では直に接してもらっています。何回か受入れてみて雰囲気がわかったことで、周りの人も受入れやすくなり、「このアンケートがたまってきたから、実習生に入力をお願いしたい」といった話が出てきたりしています。

坂野:当社の場合は、職員の人数もそれほど多くないので、部署は違ってもみんな同じ空間にいます。ですから、実習生の様子を見ていて、「この人はこういう方で、これができるんだ」というイメージがついたんですね。最初はなにもわからないから、心理的な壁があったと思いますが、今は普通に接しています。いい意味で普通。配慮はするけど、変に気は遣いすぎずにいるんです。先週も実習生に来てもらいましたが、本当に日常の一コマになっています。


Q.受入れにあたっての将来像や今後の方針などお聞かせください。

坂野: 今後ですが、実習ではなく、業務委託として仕事をお願いできればいいと思っています。もちろん、個人でばらつきはあるので、ケースバイケースになると思いますが。単純に「受入れてあげますよ」ということではなくて、仕事として取り組んで、その対価を得ていただく方が、当社としても気兼ねせずにすみます。有給で、かつその方の経験値も増える、そんなふうに進めていけたらいいと思っています。当社の場合、定型的な業務が年間どのくらい発生するか、大体見えているので、年間スケジュールを作って共有してもいいかもしれないですね。

代表理事の坂野充さん

就職活動に取り組む皆さんへ

jae_face01 誰にでも強みを生かせて、なおかつやりたいと思える仕事はきっとあるはず。ネットの情報だけでなく、ぜひ勇気を出して一歩踏み出し、自分の目で確かめてほしい。自分に何ができるのか体験を通して見つけてください。
jae_face01 発達障害のある方が活躍できる場はたくさんあるはず。僕らだけでなく、いろいろな企業でみなさんの活躍の場を広げられるよう、働きかけていきたいです。
若者の挑戦を後押し。長期実践型インターンシップの参加学生は過去13年で700名になるそうです。
ミーティングスペース。パーテーションを動かして環境をカスタマイズ。
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