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発達障害のある大学生の就労支援で重要なこととは?

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

発達障害のある大学生の就職には、考慮すべき要素が少なくない

今回は、大学のキャリア関係者、就労支援関係者に向けて書いてみたい。私の本業は大学生のキャリア構築支援・就労支援の講師なので、実は同業者に向けて書いていることになる。
発達障害のある大学生の就労支援は、支援者からすると大変なことが多いと思う。

なぜなら、発達障害のない大学生に対する就労支援に加え、発達障害特有の要素を考慮した支援も必要だからだ。今回はその要素の一部を伝えることができればと思っている。

発達障害のある大学生の就労支援において重要なこと

まず、発達障害のある大学生がどのようなルートで就職していくのかを理解しておこう。

発達障害のある大学生の多くが、最初は一般雇用を目標にする。一般雇用で内定を得られる大学生もいるが、一般雇用では内定を得られない大学生もいる。内定を得られない大学生は、面接で適切なコミュニケーションが取れないなど、発達障害特性が一因と思われる理由で選考に落ち続けることが多い。
その時はまず、発達障害があると思われる大学生が、自身の発達障害特性に気がついているか?受容しているか?を確認しないといけない。※1

発達障害特性に気がついており、かつ受容している場合は、障害者手帳の取得により、障害者雇用での就職という道も開ける。本人に確認してみると、実はすでに障害者手帳を取得していた、というケースもある。
発達障害特性に気がついていない、または気がついていても受容できていない場合、多数の企業の選考に落ちる大学生が出てくる。その場合、落ち込んでいる大学生に対して、学内カウンセラーの方と連携し、メンタル面のサポートをすることが求められる。

また、発達障害のある大学生のためのリファー(紹介)先を持つことも重要である。
先述の通り、学内カウンセラーの方との連携は必須となる。ただ、学内カウンセラーの方はメンタル面の支援はできるものの、就労支援までは行わない(行えない)ケースも多い。リファーした大学生を、もう一度リファーされるという話を聞くこともある。
そこで、発達障害のある大学生の具体的な就労支援については、学外で発達障害を専門的に支援している先にリファーできるように、日頃から関係構築をしておくことがオススメだ。

支援機関の種類は、働くチカラWEB内のこちらのページ、
<支援機関を探す>が非常に参考になる。その中からいくつかリファー先があると、発達障害のある大学生の対応に困った時に紹介しやすい。

当事者としての私の個人的なオススメは、

『発達障害を専門とする就労移行支援事業所をリファー先に加えておく』

ことだ。

発達障害専門の就労移行支援事業所をリファー先に加えるメリット

このWebメディアを運用しているエンカレッジが京都・大阪で就労移行支援事業所を運営しているから、その宣伝と思われるかもしれない。
確かにそれもあるのだが、私の実体験として就労移行支援事業所は他にはないメリットがある。
私は発達障害特性に悩まされて仕事がうまくいっていない時期に、上記のいくつかの施設に相談に行った。人手不足であまりじっくりと話を聞いてもらえないケースや、他の障害のある方が多いため、発達障害についてはあまり支援を受けられないケースが多かった。一方で、就労移行支援施設はどこも比較的こちらの話に耳を傾けてくれて、具体的な提案もしてくれた。

また、リファー先に就労移行支援事業所を持っているメリットがもう一つある。学生がどうしても就職先が決まらずに卒業を迎えた場合のことだ。支援している大学生が障害者手帳を持っている(もしくは診断を受けている)ケースに限られるが、大学生のうちから就労移行支援事業所と連携をしていると、卒業後もスムーズに就労移行支援施設を利用することができる。そうすることで社会との接点が途切れることなく、就労を目指すことができる。社会との接点が一度切れてしまうと、そのまま引きこもりにつながるケースも少なからずある。そうならないためにも、日頃から連携しておくことは重要だ。

すべての就労移行支援事業所が大学生の就労支援に熱心というわけではないが、お近くの就労移行支援施設を探して相談してみる価値は、支援者にとっては大きいと思う。

発達障害のある大学生に対しては、通常の支援とは別の面での支援が必要になるため、苦労することがあるかもしれない。その一方で、支援者の方の献身的な関わりによって、多くの発達障害のある大学生が毎年、無事に社会に旅立っている。
大変なことも多いと思うが、発達障害のある大学生に、できる限りの対応をお願いできれば嬉しく思います。

※1 発達障害に気がついているが、受容できていない学生もいる。たとえば、ASDの診断があったが、その結果を受け止められず、できない面の多い自分を責め続ける学生などもいます。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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