当たり前のことを当たり前に…、できるはずがない

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

先日、一つ仕事を失った。正確に言うと、仲間はリピートが来たが、私には来なかった。

詳細は書けないのだが、添削の仕事だった。
社会人対象だが、提出された宿題に対して評価を行うものだった。

私は添削の仕事は苦手ではない。一人一人の提出物を読み、提出者の記載から状況を把握し、行動変化に繋がるように添削を行う。誤字脱字に注意をしないといけないものの、やりがいを感じる仕事の一つだ。

添削の仕事は苦手でないが、ADHDのある私にとって…

しかし、一年前に当該の添削の仕事に応募し採用され、やってみて愕然とした。
私が得意なのは、自由に内容を書いていい添削だ。一方で、その添削の仕事は、詳細なマニュアルがあり、全て形に当てはめていくものだった。
その仕事の説明会で「レベルが高い仕事ではありません。マニュアルを当てはめればいいんです。当たり前のことを当たり前にやってください。」と言われた。

その当たり前のことがADHDのある私にとっては非常に難しかった。考える必要はなく、マニュアルに当てはめて延々と間違い探しをしていくのだ。守っているつもりがどうもできない。
本気で頑張ったが、結局間違いが絶えなかった。迷惑をかけながらもなんとか無事に終わったが、その次の仕事は来なかった。
その仕事で評価され、次の仕事に繋げていこうという私の目論見は崩れた。

私が別のところでやっている添削の仕事はもっと高いレベルが求められるものだった。そちらは一定の評価を受けて続いている。高いレベルの仕事の方はリピートが来て、低いレベルの方の仕事はリピートが来ない。
仕事のリピートがなかったことに落ち込んだ。と、同時に自分らしいなと感じた。

発達障害のある方が「当たり前のことを当たり前にやる」には

発達障害のある方は凸凹が激しい。仕事内容と特性のギアが噛み合った時ではないと力を発揮しないのだ。だからこそ、自分に合った仕事をすることが何よりも大切なのだ。

しかし、社会はそうなっていない。仕事の得意・不得意を無視し、各業務に対して自分の物差しでレベルの上下を設定し、その基準でのみ人を評価する人がいかに多いことか。
そういう人にとって、凸凹のある発達障害者は「できない人」に簡単に分類されてしまう。

私がまだ会社員だった頃、簡単な日常業務をできない私に対して、先輩から「こんなこともできないのだったら、もっと大きい仕事、もっと難しい仕事なんてできるはずがない。」と言われた。
その先輩は私が会社を辞める時も、「お前みたいな当たり前のことができない奴が、どこに行ってもうまく行くはずがない。」という呪いの言葉までプレゼントしてくれた。

それから10年以上が経過したが、その簡単な日常業務は未だにできない。
そして、ありがたいことに、専門性があり、他者からしたら難しいと思っていただける仕事も一部できている。そして、なんとか生計を立てることができている。ありがたい限りだ。

この「当たり前のことを当たり前にやる」という仕事の価値観は、日本ではかなり根深いように感じる。簡単に変えられるとも思えない。
では、発達障害のある方はこの風潮にどう対処していけばいいのか。

まず、様々な工夫は必要だろう。できる努力はした方がいい。そして、自分が強みとする具体的なスキルがあればなおいい。

しかし、最も大きいのは「自分は自分」と割り切る力だと思う。
割り切ることができれば、発達障害特性のある自分も素晴らしい存在なんだと思い、失敗した自分さえも肯定することができれば、一喜一憂しないで済む。
また、割り切ることができれば自分ができること、できないことを冷静に見極められるようになる。できないことは人に手伝ってもらうなどの手段も取れる。

このように、割り切ることができれば、できないことに振り回されて、疲弊しなくて済むようになるのだ。下手に自分に期待して、辛くなることもない。
この割り切る力は、自己肯定感と言ってもいいのかもしれない。

自己肯定感

自己肯定感を高めることで「当たり前のことを当たり前にやる」という風潮に振り回されなくて済むのだ。

自己肯定感は長い年月をかけて培われている。しかし、最近は自己肯定感に関する良著も多く出版されているので、興味があれば、ぜひ探して読んでほしい。

私は仕事が続かなかったことで落ち込んだが、自分に合わなかったと思うことで前に進もうとしている。
発達障害がある限り、同じような苦しみをこれからも何度も味合わないといけないのだろう。そんな時、自己肯定感は大きな支えになるように感じる。

 
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かめたーとる

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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