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「普通」がわからない。

【執筆者】ひやの
発達障害当事者

 

「普通」とは何だろうか。

と、こんな書き出しだと哲学的な問答が始まるようでかっこいいですね。
普通の生活とは。普通の幸せとは。
多数派が正解となりうるこの世界で、自分は自分だと胸を張ることができたら、
きっと有意義な人生を送れるのでしょう。

という真面目な話は置いておきます。
そんな立派な論説ができるくらい自己が確立した人間でもありません。
冒頭の「普通」は指示内容を表すときの「普通」です。
その「普通」がわからない、という話です。
たとえば、こんな風に軽いパーティーに誘われたとします。

『知らない人がいるかもしれないけれど、普通にしていれば大丈夫だよ。適当な服でいいし』

――「普通」とは何だろうか。

もちろん誘った人に悪気はありません。
肩の力を抜いて来てね! という気遣いでもあるでしょう。
ですが、どうしても固まってしまいます。「普通にする」がわからないのです。

普通? 普通に? 普通にするって? 知らない人と普通にしゃべる?
話しかけてもいいの? それともダメなの? 普通な話題ってなに?
あと適当な服ってなんだろう。
私がタンスから適当に選ぶと、
下がジャージで上がアニメのイベントで買ったTシャツになるけど大丈夫?

いえ、もちろん、いくら気心の知れた友人に誘われたパーティーでも、
アニメのイベントで買ったTシャツは着ていきません。
テンションを上げたいときの自室専用着です。

場にそぐわない振る舞いをして周囲から白い目を向けられたら、
小心者の私はその場に霧散して消えたくなってしまうので、
できる限り事前に情報を仕入れてから現場に向かいます。

それでも、とっさの出来事には対応できません。これはどんな場面でもそうです。
「普通にしてて」と言われたら、「何を……どう……!?」と固まってしまいます。
「適当に」と言われたら「でも適当にしたら怒るんでしょう……!?」と不安になります。
「そんな感じで」と言われたら「どんな感じですかね!?」と心の中でツッコみます。

口に出してツッコめたときはいいのですが、
場合によっては口に出せないまま話が終わってしまい、
一人になったあと途方に暮れることもあります。

物事を察したり、言葉の含みを読み取ったりするのが下手な私にとっては、
指示が具体的なものであると大変ありがたいです。
人とやりとりする際にわからないことがあったときは、
「もう少し具体的に教えていただけますか」と質問するようにしています。

ただ、日常生活では言いづらい場面も多く、思い通りにならないのが人生というもの。
パーティー会場の隅っこにちぢこまり、
「好きな中華まんの種類を尋ねるのは普通な話題かな……」と考えながら
今日も生きていくのでした。

 

【ひやの】
どうも、就職活動中の発達障害当事者です。及びオタクです。ゲームやアニメが好きです。このコラムでは、ソーシャルゲームへの課金の是非や深夜アニメの主題歌の中毒性などを深く考察していく……ことはせず、家にいることが何より大好きな私から見た「発達障害当事者の就職活動や日常」「働くチカラWEB制作の裏話」について書いていこうと思います。よろしくお願いします。

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