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コロナに伴うオンライン化は発達障害のある方にどんな影響があるのか?

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

新型コロナウィルスの影響で、オンライン化が急激に進んでいる。「新型コロナの影響で就活が不安な障害学生が、今やるべき3つのこと(1)」「新型コロナの影響で就活が不安な障害学生が、今やるべき3つのこと(2)」では、障害のある学生の就職活動に絞って書いた。

今回は、就職活動に絞らず、広い意味で新型コロナが発達障害のある方に与える影響を考えてみたいと思う。

オンライン化によるメリット

インターネットでのやりとりが増えることで、web説明会、web面接だけではなく、オンライン飲み会、オンライン研修、リモートワークなど、様々なことがオンライン化されてきている。
コロナの流行が収まったら、そのうちの60%程度はリアルに戻るのであろうが、40%程度はオンラインに残るのではないかと私は考えている。
なぜなら、リアルの方が優れている点は当然多いが、オンラインの方が優れている点も少なくないからだ。

たとえば、オンラインでは地理的な制約を超えられる点は大きい。リモートワークになると出社する必要がない。最近、研修実施企業、研修会社、そして講師の私の3者で打ち合わせをした。関東の企業だったので、以前であればわざわざ打ち合わせに出張しなくてはいけなかったが、家でその打ち合わせができるのは非常に楽だった。

このように、今回のコロナの影響でオンラインのメリットを人々は知ってしまった。だからコロナが収束した後も、オンラインに残る部分は多いだろう。

では、発達障害のある方にとっては、オンライン化によってどんな影響があるのだろうか。現在はオンライン化の入口なので、まだまだこれから分かってくることもあるだろうが、ひとまず私が今感じていることを書いてみたい。

オンライン化が発達障害のある方に与える影響

まず、コミュニケーションについて。発達障害のある方、特にASD(自閉症スペクトラム障害)がある方は、コミュニケーションが苦手なケースが多い。
だが、オンライン上のやりとりでは、発達障害のある方とない方のコミュニケーション能力の差が縮まると私は思っている。もっと言うと、発達障害がない人のコミュニケーション上の優位性が少なくなると考えている。

ASDでは、「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「イマジネーションの障害」の3つの特徴があると言われる。
(参考:ASD(自閉スペクトラム症)とは? ▶ https://en-c.jp/column/asd/

「社会性の障害」とオンライン

人と目線を合わせたり、察したりすることが苦手であることを指す。オンラインでは画面の向こうの相手と目線が合うことはないし、画面越しの相手の状況を察することは、発達障害の有無を問わず難しいものである。

「コミュニケーションの障害」とオンライン

相手の表情やジェスチャーを察知できない、言葉の裏の意味を理解できない、抑揚が少ないなどの特徴がある。だが、オンラインだと、相手の表情がリアルより読みにくいし、ジェスチャーも画面越しで伝わりにくい。抑揚も伝わりにくい。ASDのある方ができないことについて、ASDがない方もできないようになるのだ。

また、Zoomなどのオンラインツールでは、チャットを使うことにより言葉ではなく文字で表現することも可能になり、発達障害のある方には文字コミュニケーションは得意な方も少なくない。

以上のようなことから、オンライン上のコミュニケーションにおいて、発達障害のある方が不利になりにくいように感じる。今までコミュニケーションで自分だけ苦手としてきたことが、全員苦手になり、問題視されなくなるのはオンライン化の大きなメリットだ。

発達障害のある方に起こりうる問題『自己管理』

一方で、発達障害のある方にとってオンライン化で大変になるのが自己管理だ。オンライン化すると自己管理能力がかなり必要になる。特に発達障害のある人は、自己管理が苦手な人が少なくない。家にいると、誘惑の多さやリラックスしてしまうことなどにより、ダラけてしまうことが増えやすい。

例えば、私はここ最近のリアルの予定が全て中止・延期・オンライン化となった。そうなると、ADHDのある私に何が起こったのか。
まず、寝る時刻が遅くなり、起きる時刻も遅くなったのだ。端的に言うと、生活リズムが崩れたのだ。そして、仕事の効率が落ちた。家だと誘惑が多い。子供と遊ぶこと、漫画、TV、ゲームなど、仕事をしない理由が山のようにあった。
また、身だしなみも少しいい加減になる。関係性が遠い相手とのweb会議や、オンライン研修ではスーツに着替えたり、ジャケットを着たりするが、どうしても身だしなみがいい加減になってしまう。先日、上半身はスーツにネクタイを着て、下半身はパジャマで打ち合わせに参加したが、乱入してきた娘を追い出そうとするときに、下半身のパジャマを他の参加者に見られてしまうという痛恨のミスをしてしまった。
また、オンラインで会議中もパソコンが点いているので、つい他の画面を見たりしてしまう。最近、他の人はそれに気づいていることが分かった。うまく受け答えできなくなっているのと、私がかけている眼鏡の反射によって。

このように自分を律することがより一層必要になるが、それは発達障害のある人にとって難しいことだったりするのだ。特にADHDのある人にとっては悩ましい問題だろう。現に私は非常に苦労している。

オンライン化によって他にも様々な好影響・悪影響があるが、このオンライン化の流れは今後避けられないだろう。もちろん、職種や業種などによっても違いが出てくるだろうが、当たり前にオンライン化が進む時代に、自分がどう適応していくのか、発達障害があってもなくても、考えていかないといけない。

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【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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