発達障害のある学生がどうやって配慮を求めるか(2)~就職活動編~
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
「発達障害のある学生がどうやって配慮を求めるか(1)~大学生活編~」の続きになる。
今回は就職活動でどのように配慮を伝えるかについて考えたい。
発達障害のある学生が就職活動で配慮を伝えるには
就職活動でどうやって配慮を伝えておけばいいのか。
それは3つに場合分けして考える必要がある。
✅ 障害特性をクローズにした一般雇用
✅ 障害特性をオープンにした一般雇用
✅ 障害者雇用(この場合、障害特性はオープンになる)
の3つだ。
障害特性をクローズにした一般雇用
障害特性をクローズにした一般雇用で就職活動をする場合、障害特性と配慮を伝えることは難しい。基本的に強みなどのポジティブな面が質問の中心になるからだ。
採用側からすると、ネガティブなことについて聞いても、あまり正直に答えが返ってこないから聞かないという側面もある。
障害特性につながることを比較的伝えやすいのは、面接の中での
「あなたの弱点は?」
「あなたの短所は?」
という質問だ。
発達障害があることまで答える必要はないが、弱点・短所として障害特性からくる困りごとを正直に答えよう。配属先などに伝わり、配慮が受けられる可能性もある。ここで隠すと面接内でボロが出ることもあるからオススメはしない。
どうしても遠回りになるが、障害特性をクローズにした場合は、面接などで自分の障害特性を理解してもらい、配慮をしてもらうのは難しい。そのため、就職後に上司や同僚にどうやって障害特性を理解してもらい、配慮を受けるかが重要になる。
障害特性をオープンにした一般雇用
次に、障害特性をオープンにした一般雇用について見てみたい。障害特性をオープンにする一般雇用については、入社後に配慮を受けやすいというメリットがある。しかし、障害特性をオープンにすると、入社前に障害のことが伝わる。
ここからは私の感触と想像だが、現在の日本において障害特性について冷静に判断した上で、必要な能力があれば一般雇用で採用しようと思う人事はそんなに多くないのではないかと思う。
障害者雇用を担当した人事担当者の方は、私の会った限りはよく学習し、障害のある方の採用と戦力化に熱心な方が多いように感じた。しかし、そうでない人事・採用担当者は、障害者の採用に対する偏見を未だ多く残しているように感じる。また、障害のある方を一般雇用で採用することでのリスクを過大評価しているようにも感じる。
そのため、障害特性をオープンにして一般雇用として配慮を求めることは、採用されないリスクが高いのではと感じている。一方で、理解してもらえる会社があるとすると、入社後も配慮は受けやすいのではないだろか。
障害者雇用
最後に、障害者雇用の場合の就職活動での配慮の受け方について考えたい。
私も障害者雇用での就労を考えていた時、実習に行くために支援者に協力していただきながら配慮事項を文章化したことがある。
たまたま私は支援者側・採用側の仕事をしていたこともあり、いくつかのことに気がついた。
まず、正直に特性と配慮事項を書くことに心理的な抵抗を感じたのだ。過去の私を含め、自分の障害特性を他者に伝えることに苦痛を感じる方も一定数存在する。
実際に、私の知人でADHDのある方も自分の特性を長いこと人に伝えることがなかったそうだ。彼曰く、「言うと自分がダメになった気がする」「誤解され続ける気がする」とのことだ。その心配はよくわかるのだが、配慮を得るためには、どうしても自分の特性を表現しないといけない。
ちなみに、採用側の視点から立つと、配慮事項を明確に伝えてくれた方が明らかに助かる。入社後時間をかけて配慮事項を作り上げるより、入社時から配慮事項を明確にできた方が、作業効率面でも定着面でもメリットが大きいからだ。
次に、自分の障害特性や困りごとをまとめるのが意外と難しい。私が配慮事項を作った時も、自分では散々困りごとを経験してきたのに、いざまとめるとなると意外と大変だった。支援者の方に、過去の話をじっくり聞いてもらいながら作ることができたが、なかなかハードルが高いのだ。
また、自分の障害特性を誤解するリスクもある。以前、私の講義を履修していた発達障害のある学生から相談され、就職活動の支援をした時、彼は明らかに自分の障害特性を誤解していた。私から見ると、彼は具体的な指示がないと動くことができず、逆に具体的な指示があるとしっかりと作業に取り組むことができた。しかし、本人は自分の理解力全体が低いと思い込んでいたのだ。どちらが実際の特性かによって、必要な配慮が異なってくるのだ。
自分の特性や配慮を正確に掴むためにも過去の出来事を思い出しながら、自分の障害特性や困りごとを丁寧にまとめていこう。私のように支援者の方に手伝ってもらうことも効果的だ。
そして、障害特性や困りごとをまとめても、何を配慮してもらっていいのかを書くのも難しい。
私は実習の時、「集中を要する作業の際、周囲の音に反応してしまうのでイヤホンで音楽を聴きながら作業することを許可してほしい」という配慮事項を申し出た。これは今でも私の集中方法だ。しかし、企業からは音楽を聴くのは業務に相応しくないという理由でNGが出た。代わりに、耳栓をして周囲の音が聞こえにくいようにすることになった。
あまりに過大な配慮を求めると、企業側にとって負担になる。企業にとって大きな負担にならず、自分の必要な配慮を受けられるポイントを探すことも重要になる。
就職活動でどのように配慮を求めていくのか、考えるのは簡単ではないのかもしれない。しかし、今自分の障害特性に向き合っておくことが、入社してからの仕事のしやすさにつながるので、時間をかけて丁寧に考えたいところだ。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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