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オンライン面接のポイント(2)~面接スキル対策~

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

オンライン面接のポイント(1)~環境対策~」の続きになる。

前回の記事冒頭で、私がある大学教授から、「今のところ(2020年6月時点)、内定をもらっている学生が例年と全く違う。ほとんどweb面接だったことが原因だと思う。」と言われたと書いた。

では、どんな学生が内定を取り、どんな学生が内定を取れていないのか。その教授から聞いたのは、コミュニケーションが比較的苦手な学生が例年と比べ内定を取る確率が高くなり、コミュニケーションが得意な学生が内定を取る確率が低くなったそうだ。

就職・転職活動において、コミュニケーション能力が高い学生の方が内定を取る確率が高い。これは私自身が就職支援を何年かやってきて、偽らざる感想だ。
面接官はその学生が「自社で活躍できるか」という視点から学生を見る。その視点の中には、「他の社員とうまく関係を築くことができるか」という要素がある。関係構築能力はコミュニケーション能力と高い関連性があるので、リアル面接であればコミュニケーション能力が高い学生は受かりやすい。

しかし、web面接では、リアル面接と同等のコミュニケーションが行われているという訳ではない。この辺りは「コロナに伴うオンライン化は発達障害のある方にどんな影響があるのか?」にも一部書いた。一言で表すと、web面接では非言語(ノンバーバル)の影響が小さいのだ。非言語コミュニケーションはアイコンタクト、視線、間、声の大きさ、動作、特徴、対人距離など様々な要素があるが、オンライン面接になると、効果が弱まるものが多い。効果が強まるものもあるが、そちらについては項目と対策を前回書いた。

web面接で重要になるのは、会話の中身だ。非言語的なコミュニケーションが難しくなり、雑談も生まれにくいオンライン環境では、会話の中身の重要度が相対的に増えるのだ。では、発達障害のある方が、web面接での面接を効果的に行うためには何をすればいいのだろうか?私は2つあると思う。

web面接でのスキル対策

(1)話を噛み合わせる

発達障害のある方と話をしていて時々感じるのは、「話が噛み合わない」感覚だ。こちらが話したことに対して、全く異なる話題が返ってくることがあるのだ。ADHDのある方は、おそらく飛躍して自分の言いたいことを言ってしまう傾向にある(私自身も自覚がある)。ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)のある方は、相手の話している意図を掴むのが苦手な傾向にあり、意図がつかめないため適切な受け答えが困難な場合がある。
オンラインでは、相手と話が噛み合わない感覚のストレスは大きくなる。目の前に人がいるとまだ親近感などでごまかせる部分もあるが、同じ空間を共にしないオンラインでのイライラはとても大きい。面接でも、話の噛み合わない感覚は致命的になり得る。

では、話を噛み合わせるために、どのようなことがポイントになるのだろうか?
まずは、相手の話をしっかりと聞くことが重要だ。普段の会話も含めて、相手が何を話しているのかを真面目に聞くことが重要になる。そして、自分の話したいことを一方的に話すのではなく、会話の中身を相手と合わせて話そう
身近な方には、話が噛み合っていなかったら指摘して欲しいと伝えておくと、自分の話が噛み合っていない場合が分かるのでオススメだ。
ちなみに私はお願いはしていないが、話が噛み合っていなかったら妻から指摘される。こちらからお願いしていないので嬉しくはないのだが、話の飛躍を防ぐいい練習にはなっている。

(2)論理的に話す

日常会話と違い、ビジネスコミュニケーションでは、伝えたいことを「わかりやすく」「正確に」伝えることが求められる。面接はビジネスの延長線上なので、「わかりやすく」「正確に」話すことが必要になる。発達障害のある方は、これらが苦手であることが少なくない。

そこでポイントとなるのが、論理的に話すことだ。論理的と言うと、難しいことのように感じるかもしれないが、筋道を立てて話すことを心がけよう。様々な方法があるが、面接ではPREP法、ホールパート法の2つを使えば何とかなることが多い。

PREP法は、
▶ 結論→理由→具体例→結論
という順番で話す。
ホールパート法は
▶ 結論→理由①→理由②→理由③→結論
と3つの理由で説明する。

詳細は書かないが、インターネット上で多くの情報があるので、それらを参考に実践してみよう。この2つの手法を使うだけで、話がかなり伝わりやすくなる。ただし、面接で使えるようになるには練習が必要なので、日常生活で意識して何度も使ってみよう。
web面接ではその特性上、「言語面=会話の中身」が重視される。そのため、内容を準備するのは当然として、「わかりやすく」「正確」に伝えることが求められる。PREP法やホールパート法をうまく活用して論理的に話すことを実現しよう。
また、論理的に話すことが重要というと、web面接の場合はメモ・カンペを用意していいかという質問を受けることがある。私からすると、メモやカンペを使うことはオススメできない。メモやカンペを読むとどうしても感情が乗らなくなり、会話ではなく一方的に説明している印象を与えてしまうからだ。だからこそ、カンペに頼らずとも話せるように、日頃からの練習が大事になってくる。

最後にweb面接により非言語コミュニケーションの必要性が減ったからといって、リアルでの面接対策やコミュニケーション能力の強化は継続しよう。
就職活動においては、オンライン化が進んでいるが、「最終面接は会社に来てもらってでもリアルで会って評価したい」と考える会社は多い。また、入社後も、職場で人と顔を合わせる機会はあるだろう。そんな時に、従来のコミュニケーション能力はやはり必要だ。

例の大学教授は「コミュニケーションが苦手だけどweb面接で内定を取れた学生が、就職してあまりコミュニケーションを取れずにすぐに会社を辞めるのではと懸念している」とも言っていた。

web面接も面接の延長線上にあることは間違いない。基本的な面接練習やコミュニケーション能力向上も行いつつ、web面接特有の出来事に慣れていこう。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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