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発達障害と人付き合い

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

今回は私にとっても結構勇気のいるテーマを書きたい。
人との関係性についてだ。

私は正直、人付き合いが苦手だ。発達障害のある方も人間関係が苦手な方は多い。
今回は人との付き合い方について考えてみたい。

発達障害のある方の『人付き合い』について

ここで私が言いたいことは一つ。「既存の社会が求める人付き合いに縛られない」ことが大切だと思う。既存の社会では、家族を持ち、少数の親友がいて、たくさんの友人を持ち、職場の方との信頼関係を作って…などという人間関係を築いていることが当たり前のこととされている。また、そのような人間関係を持つべきだとする雰囲気もある。

だが、発達障害のある方を初めとして、人間関係づくりが苦手なのであれば、無理に人間関係を作る必要性はないと思う。むしろ、自分にとって快適な人間関係がどのようなものであるかを知り、それを作り上げていくことが大切だと思う。

私の場合の人間関係

家族

私の話をすると、私には妻と子供が2人いる(最近2人目が生まれた)。私は家族との関係をとても大切にしている。子供が小さいので、育児と家事は時間が許す限りするようにしているし、妻との会話時間もできるだけとるようにしている。あくまでこれは自分視点なので、妻や子供からはどう見えているか分からないが、人間関係面ではある意味”普通”の家庭なのかもしれない。

仕事

では、仕事での人間関係はどうなのか。仕事において、私が大切にする人間関係の原則は「週に2回以上同じ人と会いたくない」だ。短期であれば毎日会ってもいいのだが、継続的に同じ人と週に2回以上会い続けることはどうも苦手だ。また、短時間の電話やメールのやりとりであれば、別に週に何回あっても問題はない。逆に週に2回以上会う仕事の関係者とは、人間関係が悪化してくることが多い。

私は人間関係が苦手で、そこから失敗して仕事がなくなるケースが多いので、今は複数の収入源を持つようにしている。そのため、週に2回以上同じ人と会うことは、短期的なものを除くとまずない。おそらく、かなり特殊な働き方だが、私にとってはすごく楽だ。

プライベート

また、プライベートも、頻繁に連絡をし合う友人はいない。頻繁に連絡が来ると、私自身が辛くなり、そういう相手とは友人関係が長続きしない。だから、親友と言える存在はいないが、半年から一年に一度くらい連絡を取り合ったり、飲みにいったりする友人は10人ほどいる。

逆に、講師のコミュニティや勉強会関係など、ゆるい付き合いの知人は数多くいる。

こう書くと、かなり寂しい人生を送っているように思われるかもしれない。だが、私としては今、ちょうどいい人間関係だと思っている。

私の場合、家族以外の人との密接な人間関係はストレスだし、うまくいかないのだ。私はADHDが主だが、検査でASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)の傾向もあることがわかっている。社会性に欠陥があり、特性として人間関係を築くのが得意ではないのだ。

仕事のように、自分のタスクを果たすことを主とした人間関係の場合は、会いすぎなければ何とかなるが、友人関係は本当に難しく感じる。
ただ、昔は、「友人は持つべき」「仕事の関係者とは仲良くなるべき」といった「べき論」を強く持ち、うまくいかない自分に苦しんでいた。

しかし、うまくいかないものは、うまくいかない。自分にとって心地の良い人間関係を作ろうと思ってから、かなり楽になった。幼い頃からの人間関係を保ち続けられる人や、広い人間関係を保つことができる人を見ると、羨ましくはなる。でも、自分にとって居心地の良い人間関係はこれだと思えるようになってから、だいぶ楽になったのだ。

「人間関係はこうあるべき」という社会的なプレッシャーは少なくない。でも、発達障害のある方はそれを捨てて、自分にとって心地いい人間関係を知り、その人間関係の構築のために努力すれば良いと思うのだ。

人間関係は幸せのもとにも、ストレスの源にもなり得る。
自分にとって心地良い人間関係を作り上げよう。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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