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発達障害と距離感とコロナ

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

私は昔から距離感がおかしいと言われ続けた。人との距離感を近くとりすぎたり、遠くとりすぎたりして、人に違和感を与えてしまうのだ。要は、人との距離感がよく分からないのだ。これは物理的にも、精神的にも当てはまる。

発達障害の特性の一つ『人間関係の距離感の取り方』

このような人間関係の距離感のおかしさは、発達障害の特性の一つである。特に自閉症スペクトラム(ASD・旧アスペルガー症候群)の方に多いとされている。私はADHD不注意優勢型が中心で、自閉症スペクトラムの傾向もあると診断されているのが影響しているのだろう。

発達障害と距離感

このような距離感が分からないことにより、特に異性に嫌がられることが多かった。私は何の気なしに近づいたことで、嫌悪感を感じられることがある。また、大学で講師をしている際は、セクハラと誤解されそうになったことがある(誤解であることを納得してもらえてホッとしたが)。

そのような失敗を経て、今では人との距離感に困ることがなくなった。どうしたかといえば、常に人との距離をとるようにしているのだ。物理的にも、精神的にも。
そうすることで、人間関係のトラブルはグッと減った。しかし、同時に人間関係の距離を縮めることもできない。不思議なもので物理的に人と距離を取ると、無意識的に精神的にも人と距離をとることになる。

少し寂しさはあるものの、これは私にとっての大切な生き抜く術であった。

ちなみに、物理的距離と精神的距離の関係性は「パーソナルスペース」という言葉で理論化されている。

パーソナルスペースの種類

▶ 0cm~45cm:密接距離
体が触れられる距離。恋人や家族のみが入ることを許される。

▶ 45cm~1.2m:個体距離
自分と相手が手を伸ばせば接することができる距離。友達との会話はこの距離であることが多い。

▶ 1.2m~3.6m:社会距離
相手と会話・対話ができる距離。仕事の打ち合わせなどはこの距離であることが多い。

▶ 3.6m~:公衆距離
個人間のやりとりをしにくい距離。講演や演説などの距離であることが多い。

【参考】パーソナルスペースから学ぶコミュニケーション法


人間関係によって、パーソナルスペースに入ってきても不快にならない距離が異なるのだ。例えば満員電車が不愉快なのは、知らない人が密接距離に入ってくることがその理由である。

私は家族以外のどんな人とも極力社会距離を取るようにしている。向こうが個体距離に入ってきても意識して社会距離を取るようにしているのだ。この行為は人間関係を近づけることの拒絶となる(相手は意識をしていないが、無意識的にそういうシグナルを送っている)。

新型コロナウィルスの流行によって感じるパーソナルスペースの変化

このパーソナルスペースが最近は変わっているような気がするのだ。具体的に言うと、社会距離をとっても、精神的距離が近づくように感じられるケースが増えているように思うのだ。

これは新型コロナウィルスの流行が密接に影響していると思う。ソーシャルディスタンスで2m以上距離を保つことが言われるようになった。2mは社会的距離の中でも遠接層(より遠い部類)とされ、本来は公式な商談など、人間関係が薄い人と話す距離になる。このように物理的距離をとることが重視されるようになった結果、物理的なパーソナルスペースが全体的に広がり、同じ物理的距離だと、精神的距離が近づきやすくなったようだ。

ソーシャルディスタンス

そのため、以前から人と1.2mを離れることを意識している私からすると、今までと同じ1.2mの距離を開けても、相手から親密感を感じてもらいやすくなっている。最近何度かそんな経験をする機会があり、驚いている。

このようなパーソナルスペースの広がりというのは、私の考えすぎかもしれないし、たまたまかもしれない。そして一時的なものかもしれない。あくまで私の私見だ。

でも、もしこれが事実なら、発達障害のある人にとって、良いことなのか、悪いことなのか。
両面あるのではと思う。

まず、良いこととしては、ある程度距離を保っても、人と近い関係を築くことができるのだ。もっと言うと、物理的距離感を保ちながら、誤解されることなく精神的距離を近づけることができるのだ。

一方で、悪いこととしては、人間関係の距離感がますます難しくなるのではと思われる。距離感で失敗した経験のある方は、より意識をしなくてはいけない場面が増えそうだ。

ここまで書いて、この距離感問題をどの程度の人が共感してくれるのだろうなとふと思った。
ただ、これを読んでもし共感してくれる人がいたとすれば、一緒にこの変化に対応していきましょう。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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