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New発達障害がある人の組織で働く生きづらさ

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

先日、ある大企業で働く方数人と個別で話す機会があった。
有名な大企業で、それなりに出世している方が多く、一見すると仕事も家庭も何も悩みのない方々。
そんな方々が、深く話すとそれぞれ悩みを抱えていることに驚いた。
特に、全員が自分の能力について悩みを抱えていることが意外だった。

自分の能力に悩みを抱えるHさんの話

その中の一人の方のお話。Hさんとする。
私はHさんの関係先とつながっていたので、Hさんの話は事前に聞いていた。

私が事前に聞いていたHさんの情報は、

✅ 明るくて上司・同僚・部下・顧客・関係先全てから愛されている
✅ 営業マンとして非常に優秀で、大型案件をバンバン取る
✅ 顧客との関係構築力が高く、突破力がある
✅ ミスは多い

というものだった。

そして、いざお会いする時、私の目の前に聞いていた情報通りの人物が現れた。
Hさんは人懐っこい笑顔で初対面の私の心をほぐしながら、言うべきことはしっかりと言う方だった。ミスが多いことは気にしているかもしれないが、それ以外は取り立てて悩んでいないのでは、と最初は思った。しかし、Hさんの悩みは非常に深かったのである。

悩みの詳細はここで書くことは差し控える。が、自分の至らない点や、部下の方が良くできる点について、相当気に病んでいた
会社の組織風土として、Hさんが苦手としているスキルを当たり前にできる人材が多く、また上司からも苦手なスキルを伸ばすように指導されているとのことだった。

確かに、苦手な点を克服することができれば、Hさんは飛躍するのだろう。しかし、Hさんにしかできないポイントを伸ばした方がもっと飛躍するように感じられた。

Hさんは担当している業務の都合上、周囲の方と連携しにくい状況にあった。しかし、うまく連携してお互いの弱みを補い合えば、お互いにとってメリットは大きいだろう。それでも、上司や周囲からは苦手な点を伸ばすように言われ続け、Hさん自身も自分の苦手なところに気を病んでいた。その結果、Hさん本来の強みも一部失われているようだった。

発達障害のある方の悩みとして置き換えてみると

このブログは発達障害のことについて毎回と書いているわけだが、Hさんに発達障害があるかは全くわからない。それなのに、なぜHさんのことを書いたかと言うと、発達障害のある方で同じような状況にある方は多いであろうからだ。発達障害として診断を受けている方はもちろん、発達障害の診断はないがその傾向にある方(いわゆるグレーゾーンの方)も含めると、かなり多くの方がHさんと似たような状況になっているのではないかと推測する。

ブログのどこかで書いたが、結局日本は教育も仕事も全項目で80点を取ることが至上命題になっている。満遍なく何でもできる人材が重宝されるのだ。それは世の中の多様性が増してきても変わらない。組織に所属すると相も変わらず全てで80点をとることが求められるし、個人としても全てで80点を取る方向に動くことが多い。

80点超え

私は全てで80点を取ることはできないことを、サラリーマン時代に組織の中で嫌というほど思い知らされた。だから、自分が高い点数を取ることができる分野に特化できるフリーランスを選んだ。しかし、フリーランスの道は実力勝負だし、売り上げを作るまで時間がかかり、急に仕事がなくなるリスクとも常に隣り合わせだ。誰もができる道ではないだろう。

Hさんは、成果で見ると期待以上の成果を出している。100点と言っても良いだろう。関係構築能力で見ると天賦の才能を持ち、120点と言える。でも、彼のほんの一部である50点の部分に苦しんでいる。

組織内で発達障害がある方の凸凹の振る舞いは

(発達障害がある方は特にそうだが)それでは、能力に凸凹がある方は組織内でどう振る舞えばいいのだろう?
私は割り切るしかないと思っている。
自分は強みに特化する、弱みの部分はもう仕方ないと割り切り、強みの部分を徹底的に伸ばす
のだ。そうしていけば、自然とサポートしてくれる人が現れて役割分担ができることが多い。

「出る杭は打たれる、でも出過ぎた杭は打たれない」という言葉がある。
発達障害がある方は、組織の中で出過ぎた杭を目指すのが一番生きやすいだろう。

Hさんとの話は予定時間を大きく超えて続いた。会話の終盤で「営業成績を出せているし、そこに自信を持っていいんだなと思いました。」と言っていたので、少しは自分の強みに目を向けることができたのかもしれない。

Hさんが強みを発揮し、自分らしく生きること、そして全てに80点を取れなくて苦しむ人が生きやすくなりますように。

 
かめたーとる

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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