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何が起こりやすいか?~発達障害のある学生の就活中の親との関わり方(1)~

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

発達障害がある場合、親との関わりは難しいことが多い。
特に、就職活動中の親との関わりは難しい。以前、発達障害のある子供がいる親向けに就職活動支援の方法について書いたことがある。
(1)受容する~発達障害のあるお子さんの就活をサポートする方法~
(2)NG行動・Good行動~発達障害のあるお子さんの就活をサポートする方法~

今回は、発達障害のある学生が、就職活動中に親とどう関わればいいのかを書いてみたい。
ただし、このテーマは、親がどんな価値観を持っているのか、どのような性格なのかによって、対応がかなり変わってくる。

そもそも、就職活動を支援してくれる人として親の存在はとても大きい。具体的には、以下の支援を受けられると子供側はとても助かる。

子供が親から受けられる支援

1)環境支援

子供が就職活動をしやすいように環境面で支援すること。
就活用スーツを買うお金を支援することや、最近ではオンライン面接を受けられるようWi-Fiを導入するなどが挙げられる。

2)情報支援

社会人としての知識を子供に伝えること。
親は実際に働いた経験を持つことが多く、だからこそ子供に伝えられることがある。

3)活動支援

就職活動そのものを支援すること。

4)キャリア支援

どのような社会人になるかを考え、また、就職活動という現実の中で、子供がどんなキャリアや会社を選択するかを支援すること。

5)精神支援

就職活動では選考に落ちるなど辛いことも多い。そのような時に、心の支えになること。

親からのサポート

これらの支援を適切に受けることができると、子供としては就職活動を進めやすい。
しかし、子供の就職活動支援を全く行わない親や、逆に過剰に支援しすぎる親もいる。
支援が行きすぎて過保護になり、就職活動を全て肩代わりしようとするケース、キャリア支援・精神支援が行きすぎて過干渉になるケースなどもある。

就活中の子供を持つ親のエピソード

実際に、私が今まで関わってきた学生の親にも様々な方がいた。印象に残っているエピソードを挙げると、

『子供に公務員になることを強制する。子供は民間企業で働きたいが、親が公務員以外はNGと強く主張し、子供側が嫌々公務員試験の勉強をしていた。』

『ある優良ITベンチャーに内定が決まったが、親がその会社を聞いたことがないとの理由で内定を辞退させられた。』

『親が子供の就職活動を管理しすぎている。子供の就職スケジュールを全て把握し、「そろそろ履歴書を提出しなさい」、「選考が残っている企業が少ないから、もっと企業を受けなさい」など逐一指示を出す。』

これらはかなり極端な事例だ。
実際には、子供の就職活動を見守りながら温かく支援する親も多い。
ただ、親子という特殊な関係性が、就職活動という特殊な状況において、子供に苦しみを与えることは少なくない。
ちなみに、私は就職活動をしているとき超大手企業の選考が進んでいたが、自分と合わないと思い選考中に途中で辞退したら、父親に怒鳴られ、母親に泣かれたことがある。

多くの親は子供に愛情を持ち、幸せになってもらいたいと思っている。親によっては、その幸せになってもらう手段として、自分の価値観に無理矢理合わさせたり、子供に干渉しすぎたりするのだ。

発達障害がある子供がいる親の場合

そして、発達障害が関わってくると、この親子の関係が一層複雑になっていく。
特に、親は自分の子供に発達障害がある場合、子供の将来に対して心配や不安の度合いが強いことが多い。そのため、良かれと思って、支援が行き過ぎて子供の将来に干渉してくるのだ。

また、発達障害に対する受容も大きな問題になる。親が子供の発達障害を受け入れられている場合、その発達障害を考慮に入れて将来の選択ができる。

しかし、親が子供の発達障害を受け入れられていない場合もある。
そんな場合は、子供の就職活動がうまくいかないと、本人の努力不足という決めつけも起こりやすい。例えば、障害者雇用などの選択肢を認めないという状況が発生することもある。

では、どのように親に対応すればいいのか。それは次回に譲りたいと思う。

➡ 親に関わる際の原則は何か?~発達障害のある学生の就活中の親との関わり方(2)~

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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