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発達障害を持つ方がフリーランスで働く?(2)

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

←《発達障害を持つ方がフリーランスで働く?(1)》

さて、前回はフリーランスについてのメリットをあげたが、当然デメリットもある。

フリーランスで働くデメリット

フリーランスで働くときの大きなデメリットは2つある。

(1)ある程度なんでもしないといけない
(2)仕事がなくなるリスクが大きい

(1)ある程度なんでもしないといけない

前回あげたメリットと矛盾を感じるかもしれない。

が、「技能」とは別の部分でなんでもしなくてはいけない側面がある。
例えば、

・自分で仕事をとってくる「営業」
・請求書発行・確定申告・振込 などの「経理」
・パソコンやプリンターなど備品購入を行う「総務」

など、会社に所属すると別の部署が担当する仕事をやらないといけない。

もちろん、他人に任せることはできるが、最終責任は自分だ。

例えば、「営業」は営業が得意な人に任せるとする。
ただ、その営業が得意な人と仕事をするための「営業」が必要になる。

また、「経理」はお金を支払えば税理士に確定申告など委託することができる。
それでも、請求書発行や振込業務はなくならない。

このように、フリーランスは自分で仕事を選ぶことができるが、
どうしてもやらないといけないことも出てくる。

(2)仕事がなくなるリスクが大きい

フリーランスの最大の特徴だと思う。
仕事で失敗すると、多くの場合次の仕事はない。

私も経験がある。

それまで取引がなかった企業から集客の仕事を依頼された。
私から提示していた人数を集めたが、先方はそれ以上の人数を集めることを期待していた。
その集客分のお金をもらったが、その企業から二度と電話がかかってくることはなかった。

何度か仕事をしている企業から、講師の仕事を依頼された。
テキスト作成・講義の両方をしないといけなかったが、テキスト作成の納期に遅れてしまった。
テキストの評価・講義の評価もよかったが、私への仕事は激減した。

かなりの取引量のあった会社の社長と、ささいな行き違いなどでお互いイライラが募り、関係性が悪化した。
翌年度、その会社からの仕事は0になった。

また、自分に責任はなくても仕事がなくなることがある。

間にある会社を通して、仕事をいただいていたが、間に入っていた企業と発注元の取引がなくなり、私の仕事も打ち切りとなった。

高い仕事評価を得ていても、担当者が代わり仕事がなくなった。

ということもある。
この不安定さはフリーランスを続ける以上避けられない。

発達障害のある・なしに関わらず、フリーランスに向き不向きはある

では、最後に<かめたーとる>は発達障害のある方にフリーランスを進めるのか?

正直に言うと、なんとも言えない。
発達障害のある・なしに関係なく、フリーランスで食っていけない場合も多い。
また、発達障害のある・なしに関係なく、フリーランスで大成功している人もいる。

フリーランスで成功するための条件とは?

その上で、以下の条件のうち2つ以上満たすものがあれば、発達障害を持っていたとしても成功の可能性が高いと思う。(絶対ではない)

特殊な技能・強みを持つ。

◆仕事を自分でとる営業力・人脈構築力がある。
 もしくは、営業力のあるビジネスパートナーがいる。

家庭を養っていく立場ではない。

2年以上食っていける貯金がある。

20代である。

最初の2つは今までである程度説明したと思う。

◆家庭を養っていく立場ではない
◆2年以上食っていける貯金がある

については、最初はなかなか収入につながらないことも多い。
出費が少ないか、ある程度の貯金がないと、すぐにお金が尽きてしまうことになる。

私は27歳でフリーランスになり、2~3年はほぼ仕事がなかった。
私は当時、彼女と同棲していた。
そして、その彼女にほぼ経済的に依存していた。
現在の妻であるが、今でも本当に感謝している。

また、

◆20代である。

ということについては、出費が少ないということもあるが、
「若いという理由だけで仕事を与えてくれる人が多い」
という点がある。

自分でビジネスをしてきた人は、若い段階でがんばる人を応援してくれる。
20代で独立しているのであれば、それだけで応援してくれる人が多い。

私も独立した直後、フリーランスの先輩や起業家の方からたくさんチャンスをいただいた。
そのうちのいくつかが自分に合っていて、今はそれを仕事にして生活している。
当時仕事をいただいた方々には今でも感謝している。

一つだけ注意をしておくと、自分でビジネスをしてきた人は、それだけ見る目がシビアだ。
チャンスをもらえたとしても一度で終わることも多い。

チャンスには全力で取り組もう。
全力で取り組んだ失敗には彼らは寛容なこともある。

最後に。
フリーランスという道は厳しくもあり、楽しくもある。
自分は発達障害があるという理由でその可能性を閉ざしてほしくない。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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