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発達障害とパワハラ(2) ~パワハラ時の対応~

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

《発達障害とパワハラ(1)~なぜ発達障害者はパワハラに遭いやすいのか~》では、発達障害のある方がパワハラに遭いやすい理由について考察した。

今回は、発達障害のある方がパワハラに遭った時にどう対処すればいいかを考える。
基本的な対応は、障害があろうとなかろうと、共通している。

【対処1】まずパワハラかどうかを確認しよう

まずは、自分が受けている行為かパワハラかどうかを確認する。
厚生労働省はパワハラ行為として6類型にまとめている。

[1]身体的な攻撃

叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。
丸めたポスターで頭を叩く。

[2]精神的な攻撃

同僚の目の前で叱責される。
他の職員を宛先に含めてメールで罵倒される。
必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。

[3]人間関係からの切り離し

1人だけ別室に席をうつされる。
強制的に自宅待機を命じられる。
送別会に出席させない。

[4]過大な要求

新人で仕事のやり方もわからないのに、他の人の仕事まで押しつけられて、同僚は、皆先に帰ってしまった。

[5]過小な要求

運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。
事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。

[6]個の侵害

交際相手について執拗に問われる。
妻に対する悪口を言われる。

▶ https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/

※厚生労働省:明るい職場応援団HPより抜粋

パワハラを疑う場合、この6つのいずれかに当てはまるだろうかを確認する。
いずれかに当てはまりそうなら、パワハラの可能性が高い(確定ではない)。

【対処2】パワハラの証拠を集めよう

パワハラの疑いがあるなら、とにかく証拠を集めよう。具体的には、メモ・メール・業務日誌などのコピーを取っておく。また、暴言系の場合は録音が決定的に重要になる。
権力のある側は自分がパワハラをしたという意識が希薄だ。そのため、パワハラを訴えても、否定する場合が多い。自分がパワハラを受けたとする確たる証拠が必要だ。

パワハラに遭ったことの証拠を保全し、救済されるために録音を行うことは法的に問題ない。
また、企業側が録音したことを理由として懲戒処分を行うことは許されていない。

パワハラの多くが「お前が悪い」「お前のため」という言い方をしてくるので、録音をすることに対してためらいが生じるかもしれない。また、パワハラを受けている最中は目の前の事態を乗り切ることに必死で、何か対策をすることさえ考えられない事態に追い込まれる。
しかし、証拠がないと、パワハラどうかの判定さえもできない。最近ではスマートフォンにも録音機能が付いている。パワハラかどうか分からなくても、まずはとにかく録音しておこう。

私自身も、パワハラを受けていた時代の音声を持っている。そして弁護士のところに持って行き、聞いてもらったところ勝てると言われた。様々なことを考え、訴えることはしなかったものの、音声を持っていて、時効以内であればいつでも訴えられるという安心感は、私の精神的な回復を早くしてくれた。

なお、発達障害をオープンにしている場合、パワハラの中で障害者差別的な発言が出てくる可能性もある。私も障害者差別的な発言を受けたことがあるが、精神的に非常に辛いものであった。しかし、パワハラとは別の意味で社会では許されないものになっている。録音さえしておけば、パワハラをする側にとって不利になることになるので、無駄に傷つかなくて済む。

録音音声を始めとする証拠が集まったら、企業内のパワハラ担当窓口や、上長の上長など上の立場の方に相談しよう。それでも問題が解決しそうになければ、弁護士を始めとした専門家に相談をすることをオススメする。弁護士に相談とまでなれば、事件はかなり大きいものになるが、悪質なパワハラの場合もあるので、専門家に依頼をかけた方がいいときもあるだろう。

※注意:場合によってはパワハラと認定されないこともある

なお、受けた方がパワハラと思っても、実際パワハラと認定されないケースもある。パワハラは、「業務の適切な範囲」を超えるかどうか、が重要になる。
「業務の適切な範囲」を超えないのであればパワハラにならない。

これは知人から聞いた話だが、ある人は折り合いの悪い上司からの気に食わない命令をパワハラと感じ、録音した音声を持って弁護士に相談したそうだ。そうすると、業務の適切な範囲での業務命令考えられるので、訴えないことを勧められたそうだ。
このように部下側の考えすぎというケースもある。パワハラかパワハラでないかの線引きは曖昧だ。だからこそ、しっかり証拠を確保し、専門家に相談することが大切になる。

どこからがパワハラか、当事者が判断することは難しい。しかし、パワハラを受けていると思えば、まずは録音を始めとした証拠固めをし、専門家に相談しよう。

発達障害のある方はパワハラに遭いやすいが、その逆もまた有り得る

発達障害とパワハラ(1)(2)では、発達障害のある方がパワハラを受けることを前提に話をしてきた。しかし、発達障害のある方が、パワハラ側に回ってしまうこともある。どんな時に、どんなことが起きるのか。

それは《発達障害とパワハラ(3) ~自分がパワハラ側に回らないために~》で見ていく。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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