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発達障害のある方が才能を活かすためには偶然が重要

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

発達障害のある方が、どうやってその才能を発揮するかは、私にとって非常に興味のある分野であるようだ。

発達障害を才能に変えるための3つのプロセスとは

ASD(旧アスペルガー症候群)のある方が仕事で才能を発揮するには

などでも才能に関することを書いてきた。

発達障害のある方が才能を発揮できれば「生きやすく」「楽しく生きられる」

なぜ、発達障害と才能について書くのかというと、才能に気づき、発揮することができればやはり生きやすくなるからだ。ただ生きやすくなるだけではなく、楽しく生きられるようにもなる。
また、「発達障害があってよかったこと」にも書いたが、発達障害のある方は好きなものにはこだわりを発揮する傾向が強いので、発達障害のない方よりも、才能に気づき・発揮する確率は高いように感じる。

発達障害のある方には自然と才能を発揮している方もいる。小さい頃から大好きなことにこだわり、それを職業にすることに成功した人などが典型だろう。しかし発達障害のある方の多くは才能を発揮できていないのではないだろうか。今回は、才能の発見し、発揮する方法についてもう少し別の角度から見てみたい。

プランドハップンスタンスセオリー(計画的偶発性理論)

たまには私の本業のキャリアに関する理論を使ってみる。
才能について考えるとき、スタンフォード大学のJ.Dクランボルツ名誉教授の提唱した、プランドハップンスタンスセオリー(Planned Happenstance Theory・計画的偶発性理論)が非常に参考になる。※1

ざっくりと言うと、
個人のキャリアは予期していない偶発的なことに大きな影響を受ける
その偶発的なことを計画的に導くことが重要
という理論だ。

就職した会社の社風や仕事スタイル、上司・同僚の個性、結婚・出産・介護などのライフイベント、人との出会いなど、個人のキャリアはコントロールできない要素が非常に多い。それらは偶然であり、予期ができないものが多い。
その偶然を計画的に生み出したり、出会った偶然を計画的にキャリアアップの機会としたりすることが重要ということだ。

目標を立てて、そこに向かって突き進むべきと考える方も少なくないが、発達障害のある方には向いていない場合が多い。特にADHDのある方(私含む)は不注意性・衝動性から、目標を立ててそこに向かい続けるのはかなり困難ではないかと思われる。
プランドハップンスタンスセオリーでは、未来ではなく現在に焦点を当て、現在どのような方針で努力をすればよいかを明確に示している。この点が発達障害のある方にとって高い親和性がある。

さて、プランドハップンスタンスセオリーでは偶然を活かすためには5つの行動方針が必要だとしている。好奇心持続性楽観性柔軟性冒険心だ。
この5つの行動方針は、発達障害のある方が才能に気づき、発見するためには非常に重要だ。

才能に気づき、発揮するための行動指針

発達障害を才能に変えるための3つのプロセスとは」でも書いたが、才能に気づくために最も重要なことは、色々やってみることだ。そのためには、「好奇心」が必要だ。

そして、自分にとって才能のありそうな領域に気づいたら、それを継続して伸ばしていくことが重要になる。そのためには「持続性」が必要だし、「楽観」的に取り組んでいくことが重要になる。

才能がありそうだと思って取り組んだことが、やってみるとあまり才能がなかったことに気づくことがある。そんな時は「柔軟」に行動を変える必要があるかもしれない。

最後に、才能を発揮してそれをお金に変えるためにはリスクを取らないといけないこともある。そんな時は「冒険心」が必要になる。

5つの行動指針

このように、5つの行動方針を持っていると、発達障害のある方(ない方も)自分の才能に気づき、発揮することがしやすくなるだろう。

繰り返しになるが、発達障害があるということは才能に気づき、発揮する可能性が高いということだ。そうしないとなかなか社会適応できないという現実もある。

そんな中で、プランドハップンスタンスセオリーは才能を発揮するための具体的な行動指針を示してくれている。

 

※1 興味のある方は、ジョン・D・クランボルツ、A.S.レヴィン著「その幸運は偶然ではないんです!」ダイヤモンド社・2005をご覧ください。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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