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発達障害があってよかったこと

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

“発達障害”というと、どうしても負の側面から取り上げられがち。そこで、発達障害があってよかったこと、発達障害のメリットを書いてみたい。

発達障害のメリットとは?

発達障害がある方のうち、ADHDとASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)の最大のメリットは、好きなことと得意なことが一致しやすいということだと思う。

ADHDのある方の場合(私も含む)、好きなことに対しては過集中が働きやすい。時間を忘れて取り組むので、好きなことが結果として得意なことになるように感じる。私で言えば、講師という仕事が好きなのだが、資料作成の準備をしている時に過集中に入ることがある。ある時は、7時間微動だにせず集中して資料を作り続け、かなり満足のいくものが作れたことがある。

ASDのある方の場合、こだわりが強い場合が多い。好きなことにこだわりを持ち、とことん突き詰めるので、結果的にその分野に関する仕事が得意になる場合もある。

このようにADHDであれASDであれ、好きなことと得意なことが一致していることが多い。逆に言えば、好きでないことは得意でないことが多い。私の場合、好きな仕事以外は全く結果を出せないので「わがままだ」「不真面目だ」という批判をされたことがある。確かに好きでない仕事は結果が出ない傾向がある。手を抜いたのではなく、頑張ったにも関わらず、好きな仕事以外は結果を出せないのだ。
このように発達障害のある方は、うまくパフォーマンスを発揮するには“好き=得意であること”に集中せざるをえなくなる。天職につながる可能性が、発達障害のない方よりはるかに高いように感じる。これはかなり大きなメリットだと思う。

私は講師業という仕事は好きであり、得意でもある。自分の天職だと思っている。それは多くの仕事を経験してもうまくいかず、結果的に好きで得意な講師業という生き方しかできなかったという一面もある。
この、好きなことと得意なことが一致しやすいということは発達障害のある方全体に関するメリットなのかなと思う。

発達障害特性が実際にメリットとして働く事例

また、私個人にも発達障害特性があるが故のメリット・長所かと思う部分も多くある。

まず、講師業は自分の興味を発信することができる。私は好きなことであればマニアックに調べるが、それを発信することができるのである。全体の講義設計をしっかりできていれば、マニアックな知識を発信することで、受講者の興味を更に喚起することができる。
また、飽きっぽいため、同じ講義を続けていると苦痛になってくる。そのため、講義を常に改善しないと気が済まない。そのため、作成する資料を改善し続けているが、これは講師業においてとても重要な強みになっている。
このように、私の発達障害特性については、それが仕事上のメリットとなっている部分は少なくない。

発達障害であることにメリットを感じるときもある。だが……

では、私はそれをどう評価しているのか?
以前、このようなメリットが全てなくなる代わりに発達障害特性が消えるとしたら、発達障害特性を消したいか、と聞かれたことがある。
私の場合は迷わず「消したい」と答える。全てのメリットがなくなってもだ。

発達障害特性のために私が感じてきた生きづらさは大きい。
私は様々な工夫をしてなんとか社会に適応しているが、未だに生きづらさを感じることはよくある。だから、その生きづらさがなくなるのであれば、メリットを消してもいいと思う。

そのため、発達障害のない方に対するお願いとして「発達障害があるってことは、天才ということだね」と軽々しく言わないでほしい、と思っている。時々悪気なくこのような内容の発言をする方がいるが、メリットに見える部分の後ろには大きな苦しみを伴っている場合があるのだ。

とはいえ、やっぱり発達障害は凸凹だと思う。凹む部分があれば、凸の部分もある。凸の部分を活かして生きていきたいものだ。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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