発達障害があるのであれば、余計にマナーを身につけた方がいい
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
今回はマナーについて考えてみたい。
マナーについては、「発達障害のある新入社員の生き残り術/発達障害のある新人教育術(3)」でも少し触れた。
私は最近、企業での研修も担当している。4月は新入社員研修のシーズンでマナー研修も多い。私もマナー研修を少しだが担当している。
ADHD不注意優勢型である私がマナーを得意なはずが無い。むしろ苦手な分野に当てはまる。
一つ一つの細かい決まりを忠実に実行しなくてはいけないのは、私にとって苦痛でしかない。
例えば、服装をマナー通りにきっちり整えることは私にとっては至難の業だ。
そんな私がマナーを教えていいのだろうか。
最初はとても悩んだ。講師となって長らくの間、私にはマナーを教える資格などないと思っていた。
しかし、最近は苦手な私だからこそ教えられるマナーがあると思う。マナーに苦しんできたからこそ、マナーができない人の気持ちがわかるのだ。
そもそも、マナーは社会人として仕事をする上での共通のルールのことである。
社会人としては、できて当たり前とされるのだ。発達障害のある方はマナーを身につけるのが難しい。
でも、発達障害がある人こそ、マナーを身につけて欲しいと思う。
マナーを身につけることは防御になる
なぜか?
発達障害のある方にとって、マナーを身につけることは防御になるからだ。
発達障害のある方は、社会ではとにかく誤解されやすい。ちょっとしたことで攻撃を受けることがあるのだ。
マナーを身につけておくことは、攻撃される機会を減らすことにつながるのだ。
例えば、私のようなフリーランスでは、ちょっとしたことで仕事がなくなる。
圧倒的な実力があれば別だが、そうでもないとマナー一つでも仕事がなくなることがある。
企業に勤める組織人でも、マナーができないことでいつの間にか周囲の評価が下がっていることがある。
このように、マナーをできないことによるデメリットは多い。
発達障害のある方はもともとマイナス要素が多いので、マナーを守ることでマイナス要素を一つでも減らした方がいい。
ただし、発達障害の方はマナーを身につけることが楽ではない。
私も社会人1~3年目に非常に苦労をした。
発達障害のある方がマナーを身につけるコツ
そんな発達障害のある方がマナーを身につけるためのコツは大きく3点である。
(1)マナーの理由を伝える
(2)マナーを一つ一つの流れで追う
(3)体で覚えるまで繰り返す
(1)マナーの理由を伝える
こちらについては、「発達障害のある新入社員の生き残り術/発達障害のある新人教育術(3)」で書いたので、そちらを見て欲しい。
なぜそのマナーが大切なのかを理解すると、なぜその行動をするのかのが分かり、忘れにくくなる。
(2)マナーを一つ一つ流れで追う
マナーでは一つ一つの流れを追うことが重要である。
動きがあるマナーもあれば、動きがないマナーもあるが、どちらも一つ一つの流れを丁寧に覚えておく。
例えば立ち姿勢の場合、一気に正しい姿勢をしようとしても難しい。
そこで、足元→足→体→肩→手→頭と順番に姿勢を正していく。
そうすると、プロセスで覚えることができ、記憶に定着しやすい。
(3)体が覚えるまで繰り返す
当たり前のことかもしれないが、マナーを身につけるために最も重要なことは、何度も繰り返すことだ。体や口が自然と覚えるようになって初めて定着したと言えるのだ。
ただし、繰り返しになるが発達障害のある方はマナーが苦手だ。
研修があったとしてもその時間内に身につけられないかもしれない。
そんな時には、周囲の先輩の力を借りよう。
マナーはできているかは客観的なチェックが重要だ。
そのため、先輩から教えてもらったり、注意してもらうことで時間はかかっても身につけることができる。
自分から注意をしてくれる先輩もいるが、お願いしないと注意してくれない先輩もいるだろう。自分から声をかけよう。
このような手段を取ることで、マナーを身につけていくが、発達障害のある方はどうしてもできないマナーがあるかもしれない。私も服装のマナーはどうしてもダメだ。
スーツを着ることが多いが、スーツの汚れに気づかない、Yシャツがズボンから出ていても気づかない、ネクタイを忘れても気づかない。
正しいマナーは分かっていて、対応策もそれなりにとっているが、どうしてもマナー違反をおかしてしまう。
なんども練習してもどうしてもできないマナーは、無理を身につけようとする必要がないと思う。誰かに代わってもらおう。
例えば、私は服装マナーについては、妻に全面的にお願いをしている。スーツで仕事をするときは外出前に必ず妻にチェックしてもらっている。そして、よくダメ出しを受けているが、改善はできている。
また、以前、ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)があるが正社員として適応している方とお話をしたとき、その方は電話の一次受け(企業の代表電話にかかってきた電話の応答)がどうしてもできず、そこだけは上司の許可のもとやらなくてもいい形にしてもらったらしい。
頑張ればできるマナーは身につけた方がいい。
頑張ってもできないマナーは身につける必要はない。
自分を守るため、自分ができる範囲については努力をして、マナーを身につけていこう。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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