発達障害がある方のメンタルケア(1)ストレッサーを減らすには
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
発達障害は「生きづらさ」の原因になる。当事者である私はつくづくそう感じる。
「生きづらさ」の種類は様々だが、今回は心の健康(メンタルヘルス)に焦点を当ててみたいと思う。
発達障害があるとなんといってもストレスが多い。
人間関係のストレス、仕事でのストレス、プライベートでのストレスなど、ストレスは多岐に渡る。
もちろん、発達障害特性と環境によってストレスの内容は異なるだろう。
ADHDである私の場合、約束をすっぽかしたり、ミスをして迷惑をかけてしまうという人間関係悪化のストレスはとても大きい。小さなところでは、忘れ物のストレスが地味に大きい。本稿を書いている当日も財布を忘れたことに駅で気がつき、家に戻った結果、遅刻しそうになるというミスがあった。※1
ストレスによって起こるメンタルヘルス不調
このように、発達障害がある方はストレスが多く、その結果メンタルヘルス不調になりやすい。メンタルヘルス不調によってうつ病などの精神疾患にかかると、発達障害に加えて二重の生きづらさを抱えることになる。
私自身は人生で2度、メンタルヘルス不調を起こしている。この期間は非常に辛い時間だった。
両方とも仕事が原因だった。具体的には、発達障害特性によって特定の仕事ができないことに対し、上長から激しい叱責を受け続けたことが原因だった。発達障害特性がなければ激しい叱責を受けることもなく、人生で遠回りしなくても済んだのではと今でも感じている。
発達障害のある方はメンタルヘルス不調を起こしやすい傾向にあるので、メンタルケアは非常に重要な課題となる。では発達障害のある方はどうメンタルケアをしていけばいいのだろうか?
発達障害のある方のメンタルケアについて
まず、メンタルヘルスと密接な関係にあるストレスの構造を見ていこう。
ストレスの構造を図示すると上記のようになる。ストレスの原因(ストレッサー)がきっかけで、体や心に現れるストレス反応が起きる。ただし、同じストレッサーでも、受けた人のストレスの捉え方によって、ストレス反応が異なる。
これから発達障害のある方のメンタルケアについて
(1)ストレッサー
(2)認知・評価
(3)ストレス反応
に分けて見ていきたい。
ただし、WEBでも専門家の方の情報は多くあるし、本もたくさん出ているので、詳しくはそちらを見て欲しい。
ここでは、あくまでも発達障害のある方とメンタルケアの関係について考えてみたい。
(1)ストレッサー
ストレッサーは
a)生物学的ストレッサー(最近感染・花粉など)
b)物理的ストレッサー(騒音、振動など)
c)化学的ストレッサー(化学物質の吸入など)
d)心理社会学的ストレッサー(人間関係、ライフイベントなど)
に分けることができる。
発達障害のない方と比べ、発達障害のある方は、b)・d)がより大きいと思われる。
まず、b)物理的ストレッサーだが、ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)のある方の一部には「感覚過敏」がある。
感覚過敏については「感覚過敏さの大変さについて」でも取り上げたことがあるが、一部の刺激に対して過敏な反応を示す。
例えば、私の娘はだいぶ改善してきたものの、聴覚過敏が未だに残っている。
娘からすると、我が家のプリンターが動く音は”頭がガンガンする音”であるそうだ。
感覚過敏がある方からすると、感覚過敏がない方が気にならない刺激が大きな苦痛になるため、ストレッサーに気づいてもらえないケースも多い。そのため、感覚過敏がある方は仕事であれば上司などに相談し、環境を変えてもらうことが必要になる。
以前、光に対して感覚過敏がある方と話したことがある。
その方は、上司と相談し日光の当たらない場所に席替えをしてもらった結果、定期的な腹痛が治ったそうだ。本人も腹痛というストレス反応の原因が日光だと気がつかず、席替えをして初めて自覚したそうだ。
d)心理社会学的ストレッサーについては、もうここで書くまでもない気がする。
発達障害のある方がどれだけ職場で苦労するか、それがどれだけのストレスになるかはこのブログだけではなく色々なところで情報を得ることができる。※2
平成29年労働安全衛生調査によると、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.3%とある。感覚的にだが、発達障害のある方の場合はもっと高い割合の方が職場で何らかのストレスを感じているように思われる。
また、同調査によると、ストレスと感じる事柄がある労働者のうち、仕事の質・量にストレスを感じている方が60.6%、対人関係にストレスを感じている方が30.6%となっている。この2点に関しても、発達障害のある方の割合はより高いと思われる。
この心理社会学的ストレッサーを減らしていくためにはどうしたらいいのだろうか。まずは、上司・同僚への相談がもっとも効果的であることが多い。相談した上で、必要な配慮を得て環境調整を行うのだ。
ただし、心理社会学的ストレッサーは複雑な要因が絡むので、ストレッサー自体をなくすことは簡単ではない。そんな時に、ストレスの捉え方を変えたり、ストレス反応を減らしていくことが大切になる。どうしていくかは、次回以降に。
※1 一応努力はしています。
■ADHD当事者かめたーとるの忘れ物対策など
※2 このブログでは、以下などが当てはまる。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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