発達障害のある大人と自己肯定感(1)~なぜ発達障害があると自己肯定感が下がりやすいのか~
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
自己肯定感という言葉が、ここ数年で随分浸透したなと思う。至るところで聞くようになった。発達障害のある方にとって自己肯定感は非常に大切だと私は思う。
しかし、発達障害の自己肯定感というと、どうしても発達障害のある”子ども”に対して自己肯定感をどう育むかという記事ばかりになる。
そこで、今回からは発達障害のある”大人”が日常の中で自己肯定感をどうやって高めていくのかを考えてみたい。
自己肯定感とは?
そもそも自己肯定感とはなんだろうか?自己肯定感に関するネット上の様々な記事に目を通すと多様な使われ方をしており、定義がかなりあいまいな言葉であるようだ。
ここでは、『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』※1という本の定義を使いたい。
この本によると、自己肯定感とは「自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられること」である。いい定義だなと思う。
「自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられること」ができれば、自分に対して安心感を持つことができ、物事を肯定的に捉えられるようになる。
そのため、人からの評価に振り回されず、自分を大切にして、傷つかないようになる。いいことだらけだ。
発達障害のある大人は自己肯定感が下がりやすい
当然、発達障害のある方も自己肯定感を持った方がいい。このことに反対する人はあまりいないだろう。
しかし、発達障害のある方が「自分に満足」「自分を価値ある存在として受け入れる」という感覚を持つのは簡単ではないように思う。
なぜか?それは発達障害特性があると「自分はダメだ!」と思わされる機会が非常に多くあるからだ。
特に、大学生や社会人など、ある程度”節度”を持って行動することが要求される年齢になると発達障害のある方は「自分はダメだ!」と感じざるを得ない機会が多い。
どのようなことがあるかは色々なところで散々書かれているので省略する。
とにかく「大人として、社会人として、当たり前にできないといけないこと」ができなければ、ダメ出しをされるし、仕事関係や人間関係に重大な支障をもたらす。
私は仕事でも約束でも時間を守るのが非常に苦手だ。※2
わざと時間を遅らせているわけでも、やる気がなくて時間を遅らせているわけでもない。
自分でも時間を守らないといけないと思い、いつも焦ってはいるが、どうしても遅れてしまうのだ。※3
でも時間を守らないと、ダメ出しをされる。当然何度もダメ出しをされてきたし、時間を守れないことがきっかけで仕事を失ったことは1度や2度ではない。
このように、自分の特性によって他者から攻撃をされたり、自分の仕事・生活にマイナスがあったりすると、自分に満足できるだろうか。かなり難しいと思う。
私が発達障害特性に苦しんでいる時代は、自己肯定感が非常に低かったと思われる。
その時代の私は自己肯定感が低かったため、何事にも自信がなく、主張することができなかった。
その結果、自分の特性に合わない仕事も受けてしまい、また失敗し、そして更に自己肯定感を下げるという悪循環に陥っていた。
私だけでなく、他にも発達障害のある方が自己肯定感の下がった状態にあるのを何度も見てきた。
一生懸命生き、努力しているのにうまくいかず、自分にすっかり自信をなくしてしまっているのだ。このように発達障害のある方は自己肯定感が下がりやすい。
では、発達障害のある方が自己肯定感をあげるにはどうすればいいのか?
発達障害のある方は、その生きづらさを解消しないと自己肯定感が上げることができないのか?
そうではない。生きづらい中でも自己肯定感を持つことは可能である。そして、生きづらいからこそ、自己肯定感を先に上げることが生きづらさを克服するために重要だと思う。
次回以後、発達障害のある方が生きづらい中でも自己肯定感を上げるためのヒントを書いていきたいと思う。
※1 中島 輝(著)『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』SBクリエイティブ(2019)より引用
※2 このコラムの担当者様、いつもご迷惑をおかけしており申し訳ございません。
※3 このコラムの担当者様、本当です。嘘ではありません。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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