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発達障害のある方が他者と比較しないことの重要性

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

先日、発達障害のある若手社員の方と話すことがあった。彼女は「同期は有能でうまく仕事ができるのに、私は仕事がまだまだできない。それが辛い。」という話をしていた。

私も同じ思いをしたことが何度もある。新入社員として入社した会社で、同期がどんどん仕事を覚えていくのに、私は仕事を身につけるのが非常に遅かった。また、発達障害特性もあり、誤字脱字をしないなど社会人としての”基本“とされることがどうしてもできなかった。そんな私は同期に”嫉妬”していた。嫉妬は誰もが一度は感じたことがあるのではないだろうか。ただ、発達障害があると嫉妬を感じるケースはさらに多くなる。

✅ ミスが多い
✅ 忘れ物が多い
✅ じっとできない
✅ 空気が読めない
✅ うまくコミュニケーションができない
✅ うまく会話に参加できない

などなど、自分ができないことを他人がいとも簡単にできる経験を発達障害がある方は幼少期から何度もする。

🔽 その他、様々な発達障害のタイプについて詳しくはこちら
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
引用元:厚生労働省:政策レポート(発達障害の理解のために)

できずに苦しんだ『当たり前』

私自身も、幼少期から、他人ができて自分が当たり前にできないことに苦しめられてきた。小学生の時に、なぜ他の人は教科書がボロボロにならないのか不思議で仕方がなかった。私の教科書はどんなに注意してもすぐボロボロになる。綺麗な状態を保つことができる大多数の同級生に嫉妬を感じていた。他にも、小学生の時にはご飯を食べる際にボロボロとこぼしてしまい、女子から不潔扱いを受けた。私からするとボロボロこぼさないことがどうしてできるか不思議だった。

これらのことが発達障害特性であると分かったのは、小学校を卒業してから13年後のことであった。

「隣の芝生は青い」ということわざがあるが、近くに優秀な人がいたらつい自分と比較してしまう。そしてできない自分に落ち込む。これはよくある話。

発達障害があると、社会・コミュニティで「できて当たり前」とされていることをできない。すると、「できて当たり前」を満たす他者と自分を比べてしまう。そして、できない自分に落ち込むことを何度も繰り返してしまうのだ。

発達障害特性上『できないこと』にどう対応すべきか?

では、発達障害のある方は自分の特性上できないことに対して、どう対応していけばいいのか。私はそのポイントは「開き直り力」だと思う。

開き直るとは「急に態度を変えてきびしくなる。覚悟をきめて、ふてぶてしい態度に変わる。」ことである。(三省堂『大辞林 第三版』より抜粋)

できないことに対して、ふてぶてしい態度をとって思うのだ。もちろん、ふてぶてしい態度を他者に示すと嫌われる。「自分はこの特性ができない」と、自分の中でふてぶてしい考え方にするのだ。

具体的には、「できないものはできない」と自分の中で考えるのだ。何度も言うが、開き直りを外に出してはいけない。外には出さずに、あくまで丁寧に周囲の協力を得ながら、少しずつ自分のやるべきことから外していくのだ。

このような開き直りをすることで、他者と自分は別物という思いを持つことにつながり、変な比較や嫉妬をしなくて済む。随分楽になるのだ。

かといって、開き直りをすることは簡単ではない。自分の状況が良くない方の中には、簡単に開き直りができない方もいるだろう。
では、開き直りのコツは何か。それはやはり“自己肯定感”ということになる。

以前、4回にわたって自己肯定感について書いたので興味のある方はそちらを参考にしてみてください。
▶ 発達障害のある大人と自己肯定感(1)~なぜ発達障害があると自己肯定感が下がりやすいのか~
▶ 発達障害のある大人と自己肯定感(2)~自己有用感をあげる~
▶ 発達障害のある大人と自己肯定感(3)~自己効力感を高める~
▶ 発達障害のある大人と自己肯定感(4)~自己受容感を高める~

自己肯定感は「自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられること」。なので、この感覚があると開き直りがしやすいのだ。

発達障害があると、どうしても他者と比較してしまう。特性由来の出来事に対して比較をしても辛くなるだけで良いことはない。そんな時は、思い切って開き直ってみてはどうだろうか。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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