catchview

そもそも転職をするべきか~(1)発達障害のある方が転職時に考えるべきこと

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

私は過去に転職を数回経験した。そして、その全てに失敗した。私のADHD・ASD特性が原因であることは明らかであった。

そんな私が、発達障害のある方が転職をする上で何を考えたらいいのか、どのような注意点が必要なのかについて書いてみたい。
今から考えれば、私の失敗は事前に予期できたものだった。同じ失敗をする方が少しでもいなくなればと思う。

発達障害のある方の転職

発達障害のある方が転職をする3つの理由

まず考えるべきは「なぜ転職をしたいのか?」だ。転職をしたい理由は様々だが、根本的には大きく3種類に分けられると思う。

(1)今の環境に耐えられない

(2)今の環境に不満がある

(3)今の環境よりさらにいい環境に行きたい

の3種類だ。

とはいえ、厳密に3つを分けることができず、重なっている部分がある。
特に(1)と(2)は似ているように見えるかもしれない。
(1)と(2)の違いは、「耐えられない」「耐えられるか」だ。

 

(1)今の環境に耐えられない

この場合、転職を考えることは仕方のないことだと思う。むしろ早めに辞めた方がいいパターンも少なくない。

私はパワハラ上司の下で働いたとき、限界まで追い詰められたが、その時は辞めるという選択肢が頭の中になかった。非常に苦しい環境の中で耐えていたが、耐えきれなかった。
駅で特急電車の通過待ちをしている時に、自然と足が動いて飛び込みかけたことがある。その際は極度に精神状態が悪化していることが明らかだったため、部署を移されて最悪の状態を脱した。
しかし、結局はしばらくしてその会社を辞めた。辞めた後もしばらくはパワハラの後遺症に苦しんだ。もっと早く辞めていてもよかったと思う。

このように、耐えられない状態の時は、その環境から離れることが一番の解決になることがある。自分の人生で一番大事なのは自分の命であり、体と心の健康だ。それを守るために会社を辞めることが必要になる場合もある。

一方で、本人が耐えられないと思っても、他者から見たら「逃げたいだけではないか?」と見える場合もある。
発達障害のあるなしに関係なく、私も傍観者としてそのようなケースを何度か見たことがある。
まだ精神的にも余裕があるように見えるし、もう少ししたら職場環境にも適応できそうなのに、それを投げ出そうとしている場合だ。もったいないなと感じた。

どこからが辞めた方が良くて、どこまでが辞めない方がいいのかの具体的な基準については、あまりにも複雑な要素があるので提示することはできそうにない。
ただ、「(1)今の環境に耐えられない」と思った時にやるべきことは「信頼できる人に相談する」ことだ。

親身になって話を聞いてくれて、一方的な決めつけをしない人であれば誰でもいい。自分がこの人になら苦しい状況を話せる、と思う人に話してみよう。
そうすることで、自分の思考が整理され、本当に耐えられないのか、まだがんばることができるのかが見えてくるだろう。辞めるのはそれからでも遅くないと思う。

 

(2)今の環境に不満がある

この方々にお伝えしたいことは、「転職は慎重に」ということだ。
転職活動自体が大変なことではあるし、転職できたとしても思ったものと違ったということが多いからだ。
発達障害がある場合、障害者雇用のような受け入れ態勢が整ったものを除いて、転職先が発達障害特性を受け入れてくれるかは分からない。そのため、発達障害のある方にとって転職はバクチのような側面がある。

だから、まだ不満が耐えられるものである場合は、まず社内で不満の解決を目指すことを考えてみよう。不満は大きく、「(A)業務に対するもの」「(B)人に対するもの」の2種類に分けられる。

(A)業務に対するものであれば、まずは業務内容の見直しを考える。上司に相談して、業務の一部を担当から外してもらう、苦手な業務をどのように成長させていくかを考える、部署異動を交渉してもらうことなど、現実的な選択肢を探そう。

(B)人に対するものの場合は簡単ではない。人間関係が良くない理由は様々なものが考えられ、解決には時間がかかり、また複雑になる場合が多い。部署異動などの手段もあり得るので、それを希望することは可能かもしれない。

どちらにせよ、すぐ辞めるという選択肢より、組織内にいて何とかする手段を考える方がリスクは少なくて済むケースが多い。
だから「転職は慎重に」と思うのだ。絶対にそうだというわけではなく、もちろん、転職を考えることも一つの選択肢ではある。

 

(3)今の環境よりさらに良い環境に行きたい

大きな不満はないが、更に良い条件を求めたい場合が当てはまる。
求めたい良い環境が何なのかは人によって様々だろう。給料かもしれないし、業務内容かもしれないし、職種かもしれないし、勤務体系かもしれない。いずれであっても、転職をする以上は全てが変わるためリスクを伴う。

そのリスクを最大限低くするためには、自分ができることを増やしておくことだ。
以前「発達障害のある方が仕事で生き残るために大切なたった一つのこと」にも書いたが、「自分だけができることを増やす」ことが、発達障害のある方が職場に適応するためには重要だ。
専門性のある仕事をしている場合はもちろん、専門性のない仕事をしている場合も、自分ができることを増やしておくことが、さらに良い環境に移動した際、生き残っていくために重要になるだろう。

何度も繰り返しになるが、転職をすることはリスクを伴う。自分の状況に合わせて冷静に考えることから始めた方がいい。

その上で、それでも転職をどうしてもしたいとなると、次は具体的に転職活動をすることになる。転職活動では何に注意したらいいのか?それを次回以降は考えたい。

▶ 忘れがちな重要ポイント~(2)発達障害のある方が転職時に考えるべきこと

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

就労移行支援エンカレッジ02 就労移行支援エンカレッジ01