どなたでもウェルカム。「できる」を増やして、自信につなげる。
企業・団体名:学校法人山口学園 ECC社会貢献・国際交流センター
http://npo.ecc.ac.jp/
「『できる』を増やしてほしい。センターで、自信をつけてもらえたらうれしいです」そうお話くださったのは、ECC専門学校の学生を対象に、ボランティア活動の情報提供やコーディネートを行うECC社会貢献・国際交流センター。2013年から2015年8月まで、5名のインターン生を受入れています。どのような思いで受入れているのでしょうか?ボランティアコーディネーターの長尾邦光さんにうかがいました。
「好き」がベースの仕事にチャレンジ!
- Q.実習・インターン受入れに取り組むきっかけや目的はなんですか?
最初はインターンを受入れる側ではなく、学生をインターンへ送り出す側として、手伝ってほしいと相談がありました(「発達障害のある大学生・専門学校生向けインターンシッププログラム」2012年)。センターとして学生を送り出すのは難しいと、当時は感じていました。でも、発達障害のある学生が社会に出るためのステップとして、センターを使っていただくことはウェルカムだったので、受入れる側へと自然に変わっていきました。 最初は「受入れてみたい」と思う反面、どのように一緒に働けばいいか不安もありました。でも、1人目のインターン生と一緒に過ごす中で、単純に「できる」と感じたんです。それからはだいぶ気持ちも楽になりました。
- Q.実習・インターン生の仕事内容はなんですか?
基本の仕事は、どなたが来られても取り組みやすいデータ入力が中心です。センターは学生同士が交流できる場づくりや、学生が地域のボランティアに参加するためのコーディネートをしています。そうした活動に参加した学生のアンケートをデータ化していただいています。 プラスアルファで、インターン生が一歩踏み出してステップアップできるよう、チャレンジングな仕事もあります。90年代J-POPが好きな方が来られた際は、手話の歌詞を一緒に作成しました。センター主催のワークショップで、歌を手話で表現するプログラムがあります。ワークショップの時は先生が身振り手振りで教えるので、みんなその場ではできるのですが、家に帰ると忘れてしまう。ワークショップの場を離れても練習できるように、「手話歌詞」(下写真参照)を準備したいと考えており、インターン生受入れの機会に作成することにしました。まずはインターン生が90年代J-POPで有名な曲を50曲ピックアップし、インターン生と手話の先生と私の3人で1曲に絞っていきました。その1曲がMr.Childrenの「innocent world」。曲が決まったら、手話の動きを撮影。写真をExcelに貼り付け、下に歌詞をつけ、写真に動作の矢印をつけるなど工夫して作っていただきました。ご自身の考えを言葉にするのに時間がかかることもありましたが、その方のタイミングに合わせて進めました。完成したものを見て、すごく喜んでいましたね。ワークショップに参加した学生にも好評で、他の「手話歌詞」を作る際のベースにもなっています。 インターン生の特徴がはっきりしていて、得意なことをご自身が認識していると仕事にも結び付けやすいですね。他にも、英語が好きな方が来られた際は、翻訳をお願いしたこともあります。
- Q.受入れをしている中で、難しかったことはありますか?
先ほどの回答とは逆に、得意・不得意や強み・弱みをご自身がまだつかめておらず、インターン期間中も発見できないときは難しいと感じます。こちらがいろんな経験をしてほしいと思っているからなのですが。どうしても単純作業だけで終わってしまうのはもどかしいです。それに対しては、顔合わせの時にその方の興味や得意なことをしっかり聞くようにしています。 今までも、発達障害による課題を抱えている学生と接することはあったので、学生を受入れることや、コミュニケーションをとることには慣れていました。でもボランティア活動を一緒にするのと、仕事を一緒にするのは全く別だと気づきました。ボランティアの学生だと、活動時間や活動内容も自由。一方仕事となると、スタッフとして僕らと同じ位置で見てもらわないといけない。勤務時間が決まっていて、成果も出さないといけない。自然と要求水準はあがります。その中でも頑張ってくださって、インターンの最終日に「自分もスタッフの一員になれた気がしました」と言ってもらえたときはとてもうれしかったです。それだけの気持ちで取り組んでくださったんだなと思いましたね。
学生の成長が、単純にうれしい
- Q.受入れの際に工夫・配慮・大切にしていることはなんですか?
インターン期間の5日間同じスタッフが受入れを担当すること、見通しがたって安心して働けるよう1日のスケジュールを表にすること、この2点は毎回心がけています。また、作業指示の細かさは人によって変えています。1回の指示のみでできる方もいらっしゃれば、都度細かく指示を出した方が取り組みやすい方もいらっしゃいます。 環境面では、作業や休憩の場所に気を付けています。周りの音が気になる方の場合、電話から離れたなるべく静かな場所で、作業に集中できるように配慮しています。
- Q.受入をしてよかったこと、周囲での変化はありましたか?
発達障害の特性や一緒に仕事をする上で必要な配慮など、私も含めたスタッフの認識が深まりました。そしてその必要な配慮は、誰もが働きやすい環境づくりにも役立ちます。今では、学生と一緒にボランティア活動をする際にも、手順を視覚的に伝えるなど応用しています。また、他の部署のスタッフから「発達障害について知りたい」と声がかかるようになりました。インターン生を受入れることで、関心のある人とつながることができました。今後一緒に何かできればと思っています。 実は先日、最初のインターン生と再会したんです。当時より、柔らかい表情でよく話されるようになっていて、ビックリしました。僕らが関われるのはインターンの5日間だけですが、また再会したときに、変化が見られるのはおもしろいですね。インターン生の成長が、単純にうれしいです。
- Q.受入れにあたっての将来像や今後の方針などお聞かせください。
学内でインターン生が活躍できる場をどんどん広げていきたいです。インターン事業の報告会に参加した際、受入れをした企業の発表を聞いて、メリットや目の前の仕事だけではなく「自分たちが社会を創っていくんだ」という視点をもった方が多く、温かい社会だなと感じました。そんな視点をもって「やりたい!」と感じて行動に移せるキーパーソンを見つけて、一緒に広げていきたいです。どの部署のどんな仕事をしていただくか、誰が担当するのかなど調整が必要なことは多いですが。一歩ずつですね。
企業・団体名 | 学校法人山口学園 ECC社会貢献・国際交流センター |
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所在地 | 〒530-0015 大阪市北区中崎西2-3-35 ECCコンピュータ専門学校1号館2階 |
HP | http://npo.ecc.ac.jp/ |
事業概要 | ECC国際外語専門学校・ECCコンピュータ専門学校・ECCアーティスト専門学校3校の学生一人ひとりの心身の健康と自己実現を応援するため、2001年4月に設立(設立当時は「ECC国際外語専門学校ボランティアセンター」)。学生のボランティア活動など、社会の課題解決に繋がる行動を促進する教育環境づくりに取り組んでいる。 |