catchview

発達障害のある方がスキルを学ぶということ

20代の私は読書家だった。
どんな本を読んでいたかというと、ビジネススキル本だ。

発達障害特性があり、求められる仕事ができなかった私はビジネススキル本に救いを求めた。
大量に読んで実践したが、役に立ったものは少なかった。
凸凹のある私は、一般的なビジネススキル本は実行しても成果がほとんど上がらなかった。

30代になり自分流でいいんだと気づき、ビジネススキル本をほとんど読まなくなった。
そして、自分にあった仕組み作り・工夫に力を注ぐと、少し楽に生きられるようになってきた。

このように発達障害のある方は、一般的なスキルを活用できない場合がある。
例えば、私は整理整頓系のスキルはことごとくうまくいかなかった。試しても、すぐに継続できなくなる。
当時は継続できない自分を責めていたが、今では自分に合わないだけだと受け入れている。

では、発達障害のある方はスキルを全く学ばなくていいかというと、そういう訳ではない。
仕事で成長をすると、それだけ楽になる、収入が増える可能性も出てくる。
合うスキルと合わないスキルがはっきりしているだけで、合うスキルを磨くと、その人の大きな力になる。

発達障害のある方が特定のスキルを磨くためには

では、発達障害のある方が特定のスキルを磨こうとすれば、どうしたらいいのか。
それは、手に入れたい結果を明確にした上で、多くの情報を手に入れ、実験することだ。

手に入れたいスキルを明確にする

まずは、どんな結果を手に入れたいかを具体的かつ明確にする(例えば、整理整頓できるようになるなど)。
意外とこれが重要で、無目的にたくさんの情報を集めても、発達障害のある方の場合は効果が薄いように感じる。
私が20代でうまくいかなかったのは、目的なく様々な本を読んでいたからだ。

どんな結果を手に入れたいかを明確にしてから様々な情報を集め、片っぱしから実践していく。
合わないもの、継続が大変なものを捨て、無理なく取り組みができるものを探す。

発達障害のある方にスキルをつけてもらうためには

次に、教育関係者や上司・家族などが、発達障害のある方にスキルを身につけてもらうためにはどうしたらいいのか。

本人の納得を得ること、複数の手法から選ぶこと

最も重要なのは本人の心からの納得だ。
発達障害のある方はできないこともあり、こだわりが強い場合も多いので、本当にやりたい、やらなくてはと思える状態にならないと長続きしない。

そして、次に手法を複数提供することだ。
特定のやり方を提示しても発達障害のある方には合わないことが多い。
複数の選択肢の中から、本人に合うスキルを取り入れてもらうのだ。
「このやり方が正しい!」と押し付けるのは禁物だ。
合わないやり方を無理やり取り入れても、うまくいかず、長続きせず、誰にとっても幸せな結果を生まない。

どちらにせよ、複数の手法から合うものを選ぶプロセスが必要だ。
例えば、職場の人間関係を構築するために、「雑談スキル」を磨きたいとする。
雑談に関する本はたくさん出ており、具体的なスキルやテクニックは簡単に数多く得られる。

私はそれらを、「話題提供→話す→聴く→広げる→変える」に分けており、それぞれ更に細分化することができる。
私が研修をするときは、それらを複数教えて、その中から合っているものを選んでもらう。

スキル

ASD特性がある方の中には、自ら話をすることが苦手な方もいる。
そういう方は話すスキルではなく、聴くスキルや質問をするスキルを伸ばした方がいいかもしれない。

ADHD多動型の方は、話がコロコロ変わりがちだ。
そういう方は、話を適切に展開するスキルを磨くことで、相手が不快感を感じない形で話を変えることができるようになるかもしれない。

また、そもそも職場の人間関係を構築するという目的に照らし合わせれば、雑談スキルではなく、適切に自己主張するスキルが向いているかもしれない。

自分に合っている手法を選んでスキルを増やしていこう

このように手に入れたい結果があったとして、そこに至るスキル・手法は様々だ。
多く手法の中から自分に合っている手法を選ぶと、無理なく使えるものが残る、長く使うとができる。
そのようなスキルの数を増やしていくことがとても重要だ。

発達障害のある方もスキルを増やしていくことで、どんどん成長することができる。
自分に合ったスキルを身につけることで、楽になっていきやすいのだ。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

就労移行支援エンカレッジ02 就労移行支援エンカレッジ01