発達障害のある方の仕事の選び方(1)~不向きな仕事の特徴とは~
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
発達障害があると職業選択が狭まる。発達障害のある方で、このことを実感している人は多いだろう。
発達障害のある方は様々な特性を持っている。それが、仕事をする上で様々な制約を生むのだ。
職業・仕事は、より慎重に選ぶ必要がある
何度も書いているので恐縮だが、私はADHDの不注意優勢型でミスが異常に多く、忘れ物が多い。また、ASD(自閉症スペクトラム・旧アスペルガー症候群)の傾向もあり空気が読めない。
そのため、大学を卒業してから10年間、仕事がうまくいかずに非常に苦しんだ。今だからわかるが、自分に向いていない仕事を必死にがんばって苦しんでいた。今は、自分に向いている仕事をしているので、まだ生きやすい日々を送っている。
職業選択に関しては、「置かれた場所で咲きなさい」という言葉がある。「こんなはずじゃなかった」と新たな職場をどんどん探すより、今いる場所で頑張ることが重要という考え方を示した言葉だ。この言葉には、ある程度の真実を含んでいるように感じている。
だが、発達障害のある方に関しては凸凹があるので、置く場所を選ばないと咲くことができない。発達障害のある方は仕事を慎重に選ばなくてはいけないのだ。
では、発達障害のある方はどんな仕事に向いていて、どんな仕事に向いていないのか。
発達障害の特性によってまったく違うので、この問いを端的に答えるのは難しい。
まず、今回は向いていない仕事について考えたい。向いていない仕事には2つの系統がある。
発達障害のある方に向いていない仕事
1)発達障害特性が致命的になる場合
自分の発達障害特性が業務にとって致命的になると考えられる場合は、その企業に就職しない方がいい。また、すでに就職していたとしたら部署異動を交渉した方が賢明かもしれない。
例えば、ミスが多い私の場合は、経理の仕事をしていた時は本当に大変だった。経理の仕事はミスが許されない。チェックをして数字を合わせていくのだが、いつまでたっても数字が合わない。普通の人が1時間でできる仕事を1日かかってもできなかったのだ。当時の上司は社内でも有名なパワハラ体質の持ち主だったこともあり、この時期は本当に苦しかった。
半年頑張ったが、あまりにも私が経理の仕事をできなかったことと、そして心を病んでいたことから、部署異動となった。
他にも、ASDのある方は、常に誰かと会話をすることの求められる接客業は向いていない可能性が高い(全員ではないが)。
このように、自分の発達障害特性の影響で致命的にできない仕事については、向いていないので選ばない方がいい。
ただし、自分の特性で不利な業務があるからといって、選り好みしすぎると選択肢がかなり少なくなってしまうのでおすすめしない。避けた方がいいのは、あくまで“致命的な場合”のみだ。
たとえば、私は非常にミスが多いわけだが、ではミスをしてもいい仕事となると、世の中にほとんど存在しなくなってしまう。だから、ミスによるダメージが深刻でない職業を選ぶことが重要になる。私が今やっている講師業はミスが許されるわけではない。ミスがあることで、受講者の講師に対する信頼が下がることがあるので、ミスは極力避けた方がいい。私は自分で2度はミスチェックをし、可能であれば他の方にもチェックをしてもらうことでミスを減らしているが、それでもミスは発生する。でも、相対的にミスが大きな問題にならないから、今も講師業を続けることができている。
2)発達障害特性に対する理解がない職場での仕事
これは特定の業種・職種と言うよりは、会社の社風や上司の考え方によって大きく影響される。
近年はダイバーシティ(多様化)を大切にすることの重要性が広く認識されるようになったので、発達障害特性についての理解も広がってきた。とはいえ、日本では全ての業務で80点が取れる人が求められる。特定のことが全くできない発達障害のある方の存在は理解されないことが多い。
そのような発達障害について理解されず、言い訳とされる環境の中で心を病む方は過去の私を含め少なくない。
一般雇用の場合は障害特性自体を面接で言わない(クローズ就労)場合が多く、配慮を受けられるかどうかは見えにくいことが多い。そんな場合は、なかなか会社の風土を知る方法がない。
ただ、採用ホームページを見たり、説明会や面接で、なんとなく配慮が受けられそうか、判断できる場合がある。また、面接はその会社の風土や上司にあたる方々の考え方を知る重要なチャンスだ。情報は少なくても、会社選びの重要な判断基準にしておこう。
今回は、発達障害のある方にとって不向きな仕事について書いてみた。では、どんな仕事であれば向いているのであろうか。それは次回に譲りたい。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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