発達障害のある方の仕事の選び方(3)~専門性の高め方~
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
「発達障害のある方の仕事の選び方(1)~不向きな仕事の特徴とは~」
「発達障害のある方の仕事の選び方(2)~向いている仕事の特徴とは~」
の続きになる。
(2)で発達障害のある方にとって向いている仕事の特徴に、「専門性の高い仕事」と書いた。専門性の高い仕事ができれば、発達障害特性によるできないことも大目に見られることが多く、働きやすくなるのだ。
ただ、専門性の高い仕事をするには、当然ながら専門性を高めていかないといけない。それをどうすればいいのだろうか。
専門性の高い仕事をする⇒専門性を高めるには
まずは、自分が高める専門性を選択することが求められる。専門性を築くには時間がかかるので、どの専門性に時間を投下するかは重要な判断になる。では、どのような判断基準で見たらいいのだろうか。
それは、以下の3つの判断基準だ。
判断基準(1):得意
自分が得意なことは専門としやすい。自分が得意なことは、比較的楽に専門とすることができるからだ。
では、その得意なことはどうやって見つけていけばいいのか。働いている時であれば、他の人から何度も頼まれることは得意である可能性が高い。わざわざ頼まれると言うことは、それだけ得意と認識されているのだ。その得意なことを自覚し、活用していくことで専門性の向上につなげることができる。
たとえば、私は資料作成が得意だ。私にとって、資料作成は大きなエネルギーを使うので、好きな業務ではない。しかし、私の作った資料を評価されることが多く、仕事の依頼が頻繁に来る。また、何かチームで物事を進めるときに、資料作成の担当になることが多い。大変な手間がかかる面もあるが、資料作成が得意であることで、業界の大先輩と一緒に仕事をさせていただくなど、メリットも少なくない。
このように自分の中で得意なことを見つけ、磨いていくことで専門性を高めることができる。
判断基準(2):好き
私は大学生向けのキャリアデザインの講義では、「好き」を仕事選びの基準とは「しない」ことをおすすめしている。なぜなら、好きを仕事にしても面倒なことが必ず発生し、「本当はこの仕事は好きではないのかも…」と言う疑念が出てくるからだ。実際、「自分はこの仕事が大好きだ」と思う人より、「仕事は仕事」と割り切って日々の仕事に取り組んだ人の方がよりスキルが高くなるという研究もある。
ただ、発達障害のある人は例外だと思う。発達障害のある人は「好き」なものに対するこだわりが強いケースが多いからだ。発達障害のある方の場合、自分がどうしても「好き」なことがあれば、面倒なことを乗り越えてでも、その仕事に取り組む程のこだわりを持っていることが少なくない。
一方、その好きなことを実際に仕事に、そしてお金にできるかはまた別問題だ。また、先ほども書いたが「好き」を仕事にすると、うまくいかない現実があると、心が折れやすくなる。私も講師と言う仕事が好きだが、だからこそうまくいかない時の落ち込み方は非常に大きい。好きを仕事にするなら、現実と戦い続ける覚悟が必要だ。
判断基準(3):意義(志)
自分が「これを社会で達成したい」という意義を持って活動すると、取り組んでいる内容が自然と専門となるケースは少なくない。会社の中でも、「この仕事でみんなの役に立ちたい」「この商品でお客様や社会の役に立ちたい」という思いを持って取り組むと、自然と業務にこだわりが生まれ、時間が経つことで専門となっている場合も多い。
自分がどんなことをしても社会で達成したいと思ことを見つけることができれば、それは幸福だと思う。
このように、得意・好き・意義から自分が取り組むべき専門性を見つけることができたら、次は何をすればいいのか。
専門性を高めたい分野に時間を多く使う
専門性は使った時間に比例する。時間をかければかけるほど成長していくのだ。しばらく時間を使っているうちに、その分野で多くの人から頼られるようになるだろう。そして、他の人には見えていない、自分だけの視点を手に入れることができる。私は講師としてある分野で専門性を獲得したが、その分野については、他の人が見えていないことが多く見えている。そのおかげで成果を出すことができ、仕事の依頼が増加した。
もし、自分が専門性を高めたい分野を仕事にできているならラッキーだ。その分野をとにかく頑張ろう。
では、専門性を高めたい分野を仕事にできていない場合はどうするのか。専門性を高めたい分野に使う時間をなんとしてでも確保することが重要だ。時間を確保して成長し、ある程度のレベルまで来ると、実践を行うことが必要になってくる。その実践を繰り返し、ようやく収入になってくるのだ。
特に重要なのが時間の確保だ。日々忙しい中で、やらない言い訳はいくらでもできる。でも、その時間を確保しなければ、成長はないし、自分の専門性で食べていくことができない。
私は今、自分が培ってきた専門性のある分野を手放し、新たな専門性を身につけようと模索している。自分が身につけたい専門性は明確になってきたのであるが、とにかく時間が足りず、成長のための時間をなかなか作れていないのが現状だ。でも時間を使わないと、いつまでたっても成長できないので、なんとか時間を作るようにしている。
自分の専門性を見つけ、高め、収益化していくのは楽ではない。でも、それができたとき、心から仕事が楽しいと思え、充足した人生に近づけるだろう。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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